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ウーマン・村本大輔、「声なき声」の拡声器へ

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「ぼくがあの漫才をしたのは、ストレス発散。後付けとして理由はいくらでも語れますが、正しいことが伝わらないモヤモヤした思いを発散したかっただけかもしれない」――ウーマンラッシュアワーの村本大輔さん(37)は昨年末に披露した時事ネタ漫才についてそう振り返る。村本さんは大飯発電所がある福井県おおい町生まれ。弟は自衛隊員。熊本の被災地や沖縄にも足を運び、「好きな人が困っていることを知ってしまったから動いた。声なき声の拡声器になりたい」と話す。SNSで話題になったあの漫才はどのようにして生まれたのか。村本さんにとって漫才とは何か。(聞き手・オルタナS編集長=池田 真隆)


大宮での公演の合間にインタビューに応じた村本さん=2017年12月29日

――昨今、マイノリティーを中傷するバラエティ番組が批判を浴びるなか、社会問題とお笑いの関係についてどうお考えでしょうか。

まず、お笑いには抑圧されたものを解放する力があると思っています。例えば、障がい者やLGBTなどは、「いじってはいけない」とされていますが、ぼくはいじります。それは、髪の毛の薄い人に「ハゲ」と言ったり、太っている人に「デブ」と言ったりするのと同じ感覚です。

ぼくたちのライブに来てくれたお客さんに車イスに乗っている人がいたときに「車イスに乗っていて何か言われることはある?」などと質問します。公演後には、「触れてくれてありがとう」とコメントをもらいます。実は、「腫物」として触れないことが、本人にとって一番寂しいことではないでしょうか。

ぼくは「声にならない声」の拡声器になりたい。そうして漫才を通して彼/彼女らに触れていきたいと考えています。

――「声にならない声」とはどのような人の声でしょうか。

例えば、基地移設問題で揺れている沖縄では、賛成派と反対派がいますが、地元に住んでいるからこそ、近所付き合いを気にしてしまい声を出せない人たちがいます。外へ出て声をあげている人ばかりではないのです。

報道では、座り込みするおじいさん・おばあさんが無理やり若い機動隊に連れていかれる過激な映像が主に流れます。そんな悲惨な映像を見ると、誰でも怖くて声を出すことをためらってしまうでしょう。「声にならない声」は、テレビでは流されず、ほったらかしにされています。

だから、笑いにしてほしいと思っている人に手を差し伸べたい。「声にならない声」の拡声器として触れていきたい。THE MANZAI2017で披露した漫才もこうした思いから生まれました。


ジャーナリズムとエンターテイメントは相まみれないとし、「友人のために」漫才をしたと強調

――あの漫才は熊本・益城町の仮設住宅や沖縄で披露して、泣いて喜ばれたこともあるそうですね。

実は一番、あの漫才で泣いたのは、熊本でも沖縄でもなく、ぼくの友人です。東京・恵比寿にあるカフェで閉店後、ジャーナリストの堀潤さんや周辺のお店の店長らを呼んで夜な夜な語り合っています。

堀さんからは、よく熊本や沖縄に行ってきた話を聞くのですが、「なんで沖縄や熊本にそんなに行くの?」と聞いたら、「友達ができたから」と答えました。

すでに震災から一定の時間が経ち、ニュース番組で取り扱わなくなり、世間の関心も薄れているのに、友達にまた会いたいと思って行くわけです。

それを聞いて、この人優しいなと思いました。これをきっかけに、被災地や沖縄に関心を持ち始めてニュースを見るようになったのですが、単純に、「末っ子が悲鳴をあげて泣いている」ように見えました。

例えば、アメリカが日本の上司だとして、部下の家族が47人いて、父親から一番末っ子の耳に、無理やりピアスの穴を空けさせられているように見えたのです。ほかの46人の兄弟が、「かわいそうだ。やめろ」と言えない状態で。

それに基地移設に反対する人たちには、「プロ市民」や「金で雇われている」などいろいろ言われていますが、現地に行ったときに、ちゃんと地元の人もいた。全員がプロ市民だと決めつけられているのがかわいそうだと思いました。

堀さんはこの状況をSNSで投稿していますが、残念ながら正しいことを書いても一定の層にしか広がりません。そこで、堀さんを喜ばせたくて漫才でこの状況を伝えようと思いました。

沖縄で漫才を披露した後に、「実は沖縄でこんな漫才をしてみたんですよ!そしたら、沖縄の人たちが泣いて喜んでくれたんです」と伝えたら、横にいた堀さんや友人たちがボロボロと涙を流しながら話を聞いてくれました。そのときに、絶対地上波でもやろうと決めました。THE MANAZAIで披露したときも、テレビの向こうにいるぼくの友人に向けてやった感覚です。

――ごく少数の人向けに披露しましたが、結果として多くの人にも届きました。放送後、ツイッターのフォロワーが4万人も増えるなど大きな反響がありました。

あの漫才をしたことで、ぼくのことを「意識が高い芸人」という人が出てきましたが、たまたま堀さんと知り合って友達になり、沖縄や熊本のことを知っただけです。堀さんも同じで、そこで友達ができて、その人を喜ばそうと思って通っています。

「被災地復興のため」などと大きな正義感を掲げていても、マトリョーシカと同じで、1枚ずつはがしていくと、「自分の好きな人が困っていることを知ってしまったから応援した」というような小さな意志にたどり着く。

テレビに出演している専門家も含めて、愛国心から社会問題を勉強している人なんていないはず。「あの子にモテたいから」「その人と友達になったから」などという身近な理由から、社会問題を語ってもいいと思います。

「(社会問題への国民の)意識が低い」という言い方もよくないと思います。「関心を持たないからダメ」としても、人は関心を持たないまま。ぼくの漫才を、啓発とか啓蒙と見られることに違和感を覚えます。ただ、自分がやりたいことをしているだけなんです。

あの漫才を考えた理由は、後付けならいくらでも話せるのですが、たぶん、一番の理由は、ストレスを発散したかったからだと思います。モヤモヤを解消できた上に、誰かのためになったのなら、ラッキーだと思っています。

始めのうちは、ニュース番組のコメンテーターとしてこの問題について言及し、SNSでも投稿していました。でも、いくら発信しても聞いてもらえない。そのモヤモヤを抱えていたときに、漫才なら無理やり多くの人に見せることができるはずと考え、あの場でストレスを発散するように思い切って披露しました。

多くの人からコメントをもらいましたが、ぼくが今回見えた視野の中では偏った考えを持つ人が多いと思いました。

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