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【読書感想】外道クライマー

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外道クライマー 外道クライマー

kindle版もあります。

外道クライマー(集英社インターナショナル) 外道クライマー(集英社インターナショナル)

内容紹介
従来の冒険ノンフィクションと一線を画した「冒険界のポスト・モダン」。その書き手が宮城公博だ。アルパインクライミングの世界では、日本で十指に入るという実力者であり、数ある登山ジャンルの中で「最も野蛮で原始的な登山」と呼ばれる沢登りにこだわる「外道」クライマー。「人類初」の場所を求めて生死ぎりぎりの境界に身を置きながら、その筆致は時にユーモラスで読者を惹きつけて止まない。

世界遺産・那智の滝を登攀しようとして逮捕されたのをきっかけに、日本や台湾、タイの前人未踏の渓谷に挑んでいく。地理上の空白地帯だった称名廊下、日本を代表するアルパインクライマー佐藤裕介と共に冬期初登攀を成し遂げた落差日本一の称名の滝、怪物のような渓谷に挑んだ台湾のチャーカンシー……。そして「誰もやったことのない登山」をめざして行った46日間のタイのジャングル行は、道に迷い、激流に溺れかけ、飢えに耐え、大蛇と格闘する凄まじい旅だった。

 著者は、世界遺産の和歌山県の那智の滝を登ろうとして捕まった人だったのか……
 2012年7月に起こったこの事件、僕もネットで知って、「バカなことをする人たちがいるものだ」と思った記憶があります。僕も一度だけ行ったことがあるのですが、ものすごく神々しさを感じる滝なんですよね。
 何も「ご神体」にわざわざ登らなくても……
 目立ちたいだけの愉快犯なんだろうな、きっと。

 ただ、そんな僕も、1974年にワールド・トレード・センターのツインタワーの間を綱渡りしたフィリップ・プティの行為には、ロマン、みたいなものを感じてもいるのです。
 なんでなのかなあ、ワールド・トレード・センターは「ご神体」ではないから、なのか、あまりにも危険すぎて、圧倒されてしまうのか、それとも、当時のニューヨークでは、やはり「迷惑行為」として糾弾されていたのか。

 なぜ私たちが、あきらかに登ることが許されないであろう御神体・那智の滝を登ろうと思ったのか、答えはシンプルだ。別に目立ってやろうとか、名を売ってやろうなんて考えは毛頭ない。国内の岩壁や大滝が登り尽くされたこの現代に、未だ日本一の滝が未登のまま残っている。しかも滝の形状は国内の滝では他に類を見ないほど見事に整った一枚岩。そんなものがある以上、沢ヤなら登りたいと思わないほうがおかしいのだ。沢登りを始め、那智の滝の存在を知って以降、私は何年もこの課題のことを考え続けた。

 しかし、滝は御神体であり、自然崇拝の対象としては日本有数の参拝客を集めている那智の滝だ。幾人かに登攀の計画を話したが、一緒に登ってくれる山仲間など誰もいなかった。だが、それに二人だけ賛同する男がいた。それが佐藤と大西だ。聞けば、私から那智の滝計画を知らされる以前から、二人ともこの滝を登攀の対象として考えていたのだ。それから滝の登攀を実行するまでに時間はかからなかった。

 こんなのは言い訳で、売名行為だろう!と決めつけるのは簡単なのですが、この本を読んでいると、宮城さんの「狂気」みたいなものを感じずにはいられないんですよ。あるいは「冒険に対する純粋さ」というべきか。生粋の山男というか、「野人」というか。

 自分の欲望に忠実に生きる人であり、大自然のなかで、自分の命を危険にさらすことに生の充実を感じる人。結局、僕のモノサシで測ることなんて、できない人なのだろうな。

 ちなみに、那智の滝を登ろうとした3人は、世間からの大バッシングにさらされ、仕事やスポンサーを失うなどの「社会的制裁」を受けたそうです。そりゃそうなるだろう、とは思うけれど、「じゃあ、そんなにお前らは『那智の滝』を真剣に信仰しているのか?」と言われると、ちょっと考えてしまうところもあります。アボリジニの聖地である『ウルル(エアーズロック)』に大勢の観光客が登っているのも事実ですし(2019年10月29日から、登れなくなるそうです)。

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