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トランプ“暴走”で存在感高まる「良識派」プーチン 2018年国際政治展望

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 2017年は米国トランプ大統領の内政・外交が世界に大きな衝撃を相次いで与えました。そのなかでロシアのプーチン大統領が存在感を高めており、一方的な振る舞いの目立つトランプ政権への対抗軸として、いわば「良識派」の風格さえ漂わせ始めています。果たして2018年は「プーチンの年」になるのでしょうか。(国際政治学者・六辻彰二)

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欧米諸国と対峙も辞さない「強面」

2017年11月、ベトナムでのAPEC首脳会議に出席したプーチン大統領(左)とトランプ大統領(ロイター/アフロ)

 もともとプーチン大統領には「強面」のイメージが強くもたれていました。その一つの典型例は、シリア内戦への介入です。

 2011年に始まったシリア内戦では、アサド政権と反体制派の衝突が激化するにつれ、イスラム過激派「イスラム国」(IS)が台頭したほか、400万人以上の難民が避難。混乱が広がるなか、欧米諸国はシリア国内のクルド人などの反体制派を支援して、内戦以前から対立してきたアサド政権への包囲を強めました。

 これに対して、2015年9月にロシア軍は冷戦期から同盟関係にあるアサド政権を支援する形でシリア内戦に介入。2016年6月にはISの指導者バグダディ容疑者を空爆で殺害したと発表しました。しかし、「IS掃討」を強調しながらも、その攻撃はIS以外の反体制派にも向かい、欧米諸国から批判を招きました。

 それでも、2017年10月にはISが「首都」と位置づけていたラッカをロシア軍が支援するシリア軍が制圧。これによってロシアはシリアにおけるIS掃討の「功績」の多くを得ただけでなく、内戦終結後のシリアの国家再建の主導権を欧米諸国に渡さずに済んだといえます。

 これと並行して、2016年12月にロシアは伝統的な友好国であるイランだけでなく、北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるトルコを含めた三か国で、シリア内戦の終結に向けた国際的な協議を主導することを発表。トルコは自国内でも独立運動を展開しているクルド人をシリアで支援する欧米諸国に不信感を募らせており、この状況下でロシアは西側の亀裂を深めさせたといえます。

 西側の伝統的な友好国でありながら、欧米諸国に不信感を持つ国に対するロシアのアプローチは、サウジアラビア、イスラエル、フィリピンなどでもみられます。

 いざとなると軍事力をもってでも欧米諸国と対峙することを辞さないロシアに対して、米国における警戒感は強く、米国のシンクタンク、ピュー・リサーチ・センターの調査によると、2017年段階で「ロシアの力と影響力は我が国にとっての主たる脅威」と回答した米国人は回答者の47パーセントに上っています。

トランプを押しとどめる影響力

 その一方で、同じ質問に対する世界37か国の回答の平均値は31パーセントにとどまり、「ロシアの脅威」に対する認識には各国間で温度差があるといえます。

 むしろ、2017年にトランプ大統領の一方的な外交が注目されるにつれ、プーチン大統領の「強面」ぶりは目立たなくなりました。そればかりか、トランプ外交が過激であればあるほど、プーチン大統領はそれを相殺する影響力をもつ者として存在感を高めたといえます。

 例えば北朝鮮問題の場合、2017年4月にトランプ大統領は「化学兵器を用いた」という理由でシリアの軍事施設をいきなりミサイルで攻撃。その翌日には空母カール・ビンソンを朝鮮半島近海に派遣して、北朝鮮の核武装を認めないと強調しました。これに対して、北朝鮮は7月にICBM発射実験を実施。それ以来、ICBM発射や水爆実験を強行して抵抗の意思を示してきました。

 核不拡散条約に違反して大量破壊兵器の開発を進めてきた北朝鮮側に根本的な問題があるにせよ、トランプ大統領の突然の行動が北朝鮮と米国の間のその後の緊張のエスカレーションの引き金となったことは確かです。

 状況が膠着するなか、ロシアは米国と一線を画してきました。米国の提案に基づき、石油精製品の年間輸入に上限を設けるなど、それまでにない厳しい措置を認める決議が9月に国連安保理で採択された際、ロシアはこれに反対しませんでした。しかし、その一方で、米国からの要求に沿って中国が北朝鮮制裁を強化したのと対照的に、ロシアは北朝鮮向けの石油輸出を増加することで、。パイプを強化しています。

 さらに、その一方で、プーチン大統領は「北朝鮮は草を食べてでも核兵器を手放さない」と指摘し、米朝の直接協議を提案してきました。 そこで念頭に置かれているのは、やはり欧米諸国と敵対していたリビアのカダフィ体制が、2000年代にこれと和解する過程で大量破壊兵器を廃棄した後、2011年の「アラブの春」の混乱のなかでNATOの支援を受けた反体制派に打倒されたことです。つまり、「米国の口車に乗ることはない」という北朝鮮の不信感を代弁することで、ロシアは危機の解決に向けた主導権を握ろうとしているだけでなく、暗に西側の「不誠実さ」を世界に発信しているといえます。

 12月に発生した「エルサレム首都認定問題」でもほぼ同じで、ロシア政府はイスラエル、パレスチナ双方と関係を維持する一方、トランプ政権による決定を「一方的」と非難しています。

 この背景のもと、やはり世界36か国におけるピュー・リサーチ・センターの調査によると、「プーチン大統領は世界全体にとって正しいことをしている」という回答は回答者の約28パーセントで、トランプ大統領に関する同様の質問の回答約26パーセントとほとんど変わりませんでした。この調査報告は2017年8月に発表されたもので、今後トランプ外交の過激さが増せば増すほど、このギャップはむしろ大きくなり得るとみられます。

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