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アングル:「中国のエルサレム」で統制と闘うキリスト教徒

Christian Shepherd and Stella Qiu

[温州(中国) 24日 ロイター] - キリスト教徒コミュニティーを多く抱え「中国のエルサレム」とも呼ばれる中国南東部浙江省の都市・温州は、子ども向けの宗教教育を巡る中国指導部と敬虔(けいけん)な信者たちの対立激化の最前線となっている。

公式には無神論の立場をとる中国共産党は、キリスト教の影響力を抑制するための取り組みを強めており、信仰教育に対する制限を強化し、キリスト教の「欧米風」な思想に警告を発している。

とはいえ、温州のキリスト教社会の決意の固さから見て、国内6000万人に上る信者の子どもたちに対して共産党が統制を及ぼそうとしても苦労するだろう、と同教徒らは語る。

温州では、今年に入って、キリスト教会の日曜学校が当局により禁止された。だが、子どもたちにイエス・キリストや聖書について学ばせようという親たちの決意は固い。

温州の各教会は、個人宅やその他の場所を使って子どもたちを教育するようになった。現地の信者らがロイターに語ったところでは、日曜学校は教育ではなく託児サービスと称するところもあれば、毎週土曜日に変更したところもあるという。

微妙な問題ゆえ、Chenとだけ名乗る信者の親は、彼女の家では「大切なのは信仰で、成績は二の次」だと言う。

クリーム色の毛皮コートをまとった小奇麗ないでたちで、大きなターコイズの指輪をはめたChenさんは、温州に多い、富裕な信者の1人だ。国家による教育は、十分な道徳的・精神的指導に欠けているため、子どもたちは聖書の授業に出席しなければならない、と彼女は語る。

「今日の若者のあいだでは麻薬、ポルノ、賭博、暴力が深刻な問題となっており、ビデオゲームの誘惑も非常に強い」と彼女はロイターに語った。「いつも子どもの傍らにいるわけにもいかない。(どういう行動が正しいのか)子どもに理解させるには、信仰に頼るしかない」

状況を直接知る情報提供者3人によれば、温州の一部地区では、8月以来、公式の命令により日曜学校が禁止されているという。

キリスト教系のニュースサイト「ワールド・ウオッチ・モニター」が9月報じたところでは、浙江・福建・江蘇・河南の各省、そして内蒙古自治区では、子どもたちがサマーキャンプなどの信仰活動に参加することが禁止されているという。

こうした政策が地方政府主導なのか、中央政府の指令によるものかも定かではない、とロイターの取材に応じた情報提供者は話す。また中国国内で他の宗教についても同様の禁止措置があるかどうかも分からないという。

9月には、宗教教育に対する国家の監督を全国規模に拡大する新たな規則が発表された。当局者によれば、党に忠実な新世代の宗教指導者を生み出す試みだという。

中国の国家宗教事務局と温州市政府広報部に対してコメントを求めるファクスを送ったが、回答は得られなかった。

<信仰の爆発的拡大>

過去40年に及ぶ経済的繁栄のなかで、中国のキリスト教徒は急速に増加した。公式データによれば信者数は現在約3000万人だが、外部の試算では約6000万人とされており、その大半がプロテスタントである。

温州では、19世紀の宣教師らが創設した小規模な信者コミュニティーが、今や100万人を超える規模に開花している。住民によれば、近年までは地元当局との関係は比較的穏やかだったという。

その後2014年になって、「違法」な教会を取り壊し、そこに飾られていた十字架を引きはがす政府キャンペーンが行われ、信者コミュニティーからの激しい抗議を引き起こし、彼らのあいだに当局への不信感の種がまかれた。

このキャンペーンは、かつて2002─2007年に浙江省の共産党トップだった習近平氏が党総書記に任命された直後に行われた。

だが、信者の急速な増加を抑えようという試みは、温州では難航している。多くは敬虔な地元企業のオーナーからの寄付で支えられている教会が至るところに存在するからだ。

温州にある教会の牧師は、「温州市政府は、数があまりにも多すぎることを理由に、教会を登録制にしていない。だから家庭教会も多く、政府がこれらを管理することは困難だ」と語る。

温州での取り締まりで特に問題になっているのが、日曜学校で用いられる教科書だと教師たちは言う。政府は宗教関係の出版物を制限しており、教会では海外の教科書を翻訳して用いることが多い。

ある教師は、未認可教科書の使用をやめ、「日曜学校」という名称を避けたところ、授業が再開されたと明かした。

<信教の自由>

中国の法律は、公式には子どもを含めたすべての人に信教の自由を認めている。だが同時に、教育と年少者の保護に関する規則では、国家による教育を妨害するため、あるいは子どもたちに信仰を「強要」するために宗教が用いられてはならないとされている。

最西端にある新疆地域など中国国内でも不安定な地域の地方政府は、子どもが宗教行事に参列することを禁じている。だがそれ以外の地域のキリスト教徒コミュニティーが全面的な制約に直面することはめったにない。

共産党は2017年、大学の学生、国有企業の従業員、そしてお膝元の政府当局者がクリスマスを祝うことに対し、国営メディアの報道によれば「西側の宗教文化による腐敗に抵抗する」といった文言を用いた、尋常ならざる厳しい警告を発した。

温州の親たちは子どもたちの教育を自身の手で管理したいと考えているが、政府は、党に忠実な新世代の宗教指導者を生み出そうとしている。

中国の国家宗教事務局を率いる王作安局長は10月にロイターに対して文書でコメントを寄せ、愛国的な宗教指導者を求める中国の「切迫したニーズ」に応えるためには、今回政府が公布し、2月に施行される予定の宗教学校に関する新たな規則が必要だと述べている。

「宗教学校を卒業した人材が、政治的・宗教的性格の双方において水準を満たしており、国に対する愛と宗教に対する愛をうまく結合させていくことをわれわれは願っている」と王氏は言う。

だが、国際人権NGOフリーダム・ハウスでアナリストを務めるニューヨークのサラ・クック氏によれば、多くのキリスト教徒にとって、党が宗教教育を統制することを容認すれば、神よりも党を優先せざるを得なくなり、受け入れがたいと語る。

したがって、党としても信仰教育を統制することしかできていない。

「寝るときに、聖書由来の物語の読み聞かせを受ける子どもは、今後も必ずいるだろう」とクック氏は言う。

温州のChenさんは、中国の若者たちのあいだで無神論者よりも信者の方が多数になるまでは、教育で正面から信仰を扱うべきと考えている。

「次の世代では、キリスト教の信者がもっと増えるのは確実だろう」と彼女は言う。「キリスト教の信仰が伝承され、受け継がれていく力は、ますます大きくなっている」

(翻訳:エァクレーレン)

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