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相撲報道が象徴するメディアの熱病

よく、メディアの偏向報道に不満を持つ人がいらっしゃいますが、どのようなポジションをとるかが自由でなければ多様性に対応できず、民主主義は衰退します。むしろ、それ以上に深く冒されているメディアの病が今年は吹き荒れた一年だったのではないでしょうか。モリカケ問題、政治家や芸能人の不倫、そしてそれらを仕上げるように相撲を執拗に報道し続けました。休みに入り、テレビをつけると、まだ懲りずにやっていました。

羽鳥さんのモーニングショーはまるでブラックジョークそのものでした。延々と貴乃花親方の処分問題をやったあとで、「そもそも総研」で、ウーマンラッシュアワーの村本大輔さんが、沖縄の基地問題や、熊本の被災地の現状などの大切な問題よりも、ゴシップばかりを報道していることを批判する漫才で一石を投じていることを紹介していました。その通りです。

相撲は土俵の上でやればいいし、相撲協会内部のガバナンスや人事などの問題の社会的意味も小さいはずです。しかし、スポーツ紙、テレビ、さらに週刊誌が参戦して憶測に憶測を重ね、終わった感のある昔の記者まで総動員して、あげくは代理戦争のようにメディアが場外乱闘するのが連日続いています。力士も、相撲ファンも置き去りで、メディアは湧いているのですが、初場所は大丈夫でしょうか。

こういった現象は、衰退に向うメディアならではの病のように見えます。メディアという装置、それを動かすプロ集団が暴走していくメカニズムです。

週刊誌がスクープとして話題に火をツケ、さらにスポーツ紙が油を注ぎ、テレビがとことん社会問題化していく構図を辿る病です。

週刊誌もスポーツ紙も発行部数の減少に歯止めがかかりません。週刊誌で話題作りの先頭を走っている週刊文春もそうです。伸びているのは「レタスクラブ」や「初めての玉子くらぶ」など、ターゲットと内容をうまく絞り込んだ雑誌だけです。

紙面刷新で飛躍中の雑誌あり…諸種雑誌部数動向(2017年7-9月) - ガベージニュース :

日本の主要雑誌 – 発行部数の推移(2008年〜2016年) | Factbox :

テレビもフジテレビを除けば、キー局は売上をわずかであっても伸ばしてきています。しかし、実際にはテレビはすでに衰退に向かってきています。「営業努力」で売上をやっとキープしているものの、テレビを見ている家庭がどんどん減ってきているのです。若い世代ではほとんどテレビを見ない人も増えてきています。

主要テレビ局の複数年に渡る視聴率推移をグラフ化してみる(最新) - ガベージニュース : 

そして、発行部数の減少になんとか歯止めをかけよう、少しでも視聴率を高め、CMスポンサー離れを防ごうとしてでてきたのが、話題をつくりあげ、社会の関心を引き寄せ、さらに広げていく禁断の手法です。しかも、メディアとメディアが競い合い、互いを補完しながら、このメカニズムを広げていきます。

画像による印象操作、都合のよく編集したコメンテーターの言葉、あちらこちらの細部で心理操作をするなど、さすがにプロの手腕、いや手口だと感心させられます。

もうひとつ重要なことですが、プロだと感心するのは、何に社会が関心を持っているのかではなく、どのような話題であれば、社会の読者や視聴者の好奇心をそそり、関心を引き寄せるのかの鼻が利きくことです。そして火種を見つけると、競い合って油を注ぐ。

しかし、こういったメディアのあり方は健全ではなく、本来、社会が関心を向けるべき対象から目をそらす役割りを果たしてきていることになります。待機児童を抱え働けずに困っている家庭、仮設住宅でこの冬を過ごす人たち、真面目に働いて生計を立て、社会に貢献している人たち、イノベーションにチャレンジしつづけている人たち、沖縄で基地に反対する人たち、逆に賛成している人たち、そんな人たちの姿、そんな人たちの人生を報道することがはるかに重い価値があるはずですが、メディアは生活者を煽っても、生活者の立場から問題を立て、取材し、問題を提起する力は落ちてきています。

これは、生活者ひとりひとりが主役になってきているメディアの時代の流れに逆行しているのです。ウーマンワッシュアワーの村本さんが主張されている通りです。

そんなメディアももうすぐ、さらに厳しい時代がやってきます。印刷媒体はよほど独自のポジションを発見しない限りさらに衰退の道を辿り、テレビも、まだまだ有料動画配信サービスは普及しはじめたばかりですが、まわりで利用しはじめた人たちが異口同音に、テレビを見る時間がさらに減ったというのです。社会の関心をつくりあげるもっとも中心になっているテレビは確実にさらに見られなくなっていきます。

そうなればなるほど、メディアが騒動をつくり、広げていくことで目先を繕うメカニズムが働き、質が劣化し、それがスパイラルとなって、さらに凋落を早めることになっていくのでしょう。

2017年を総括すれば、メディアが自らの社会的使命を見失い、熱病に浮かされたように暴走した一年だったといえるのかもしれません。

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