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ドライブインから「日本の戦後」が見えてくる?『月刊ドライブイン』が伝える 街道沿いの物語

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地方の大型道路を車で走ると目にすることができる、広大な駐車場を備えたレトロな飲食店。

「ドライブイン」と呼ばれるその店は、戦後日本の高度経済成長とともに姿を現し、観光客や大型トラックの運転手たちの空腹を満たしてきた。ところが、近年になりその需要は大型のチェーン店やコンビニに取って代わられ、急速に姿を消し始めているという。

そんなドライブインを巡ることで、これまで語られることのなかった「日本の戦後史」を発見しようとしている人物がいる。ライターの橋本倫史さんは、あるきっかけからドライブインに惹かれるようになり、様々なドライブインを取材、2017年から『月刊ドライブイン』という小冊子でその内容を発表するようになった。

『月刊ドライブイン』は現在、Vol.8まで発行されている

橋本さんは、『月刊ドライブイン』創刊にあたり、こんな一文を書いている。

戦後という時間も70年以上が経ち、それをひとくくりに語るだけのリアリティを僕は持っていない。でも、街道沿いに残るドライブイン一軒一軒の物語を拾い集めることで浮かび上がってくる風景があるのではないかと思ったのだ
——『月刊ドライブイン Vol.1 編集後記』より

はたして、ドライブインから見えてくる「日本の戦後」とはどのようなものなのか——


きっかけは国道10号線沿いで見た「異様な」ドライブイン


——ドライブインだけを取り上げた冊子というだけでもずいぶん珍しいですが、そこから「日本の戦後史」を発見しようというのは新しい試みかと思います。きっかけはなんだったのでしょうか

橋本倫史(以下、橋本):実は、昔からドライブイン興味があったというわけではないんです。ドライブインに興味を持ったのは2008年頃、好きだったバンドのライブツアーを原付で追いかけていたときのことでした。

その道すがら、鹿児島から宮崎へ向かう国道10号線沿いにある異様な外見をしたお店が目に飛び込んできて。そこが「ドライブイン」だった。そのドライブインを経営している方は、レトロな建物に関心のある人たちのあいだでは有名なお店を経営されている方でもあるんですが、ここについても、いずれ書こうと思っています。

——東京から鹿児島まで原付で行ったんですか。それはまたずいぶんハードな…

橋本:今だとちょっとできないですが(笑)、当時は日本中追いかけていました。思えば東京から鹿児島へ向かう際にもたくさんのドライブインを見かけていたはずなんですが、その時は全然目に入っていなかったんです。

でも東京への帰り道、注意して走ってみると、通り沿いにはものすごい数のドライブインがあった。それでふと思ったんです。ドライブインって飲食店ですよね。なのに「食堂」でも「レストラン」でもなく、「ドライブイン」と名乗るのはなんでなんだろうと。

『月刊ドライブイン』発行人の橋本倫史さん

——そこから、ドライブインに興味を持ち始めたんですね

橋本:はい。すぐにドライブインを取材し始めたわけではないんですが、2011年頃に知人から借りた軽自動車でドライブインめぐりの旅をしました。といっても目的地を決めて行くのではなく、ただ全国をぐるっと走って、ドライブインを見つけたら立ち寄るというものです。

そこで食事がてら店主の方と世間話をしていくなかで、ドライブインにはいくつかの傾向があることがわかったんです。その頃から、「ドライブインについて書くことで日本の戦後史が見えるかもしれない」と思うようになりました。

その後なんだかんだ5年近く経ち、2011年当時に行ったいくつかのドライブインをネットで検索してみるとすでに閉店してしまっていた。慌てて調べてみると、それ以外にも結構な数のドライブインが閉店していたんです。

それで、なくなってしまう前にドライブインの店主の方の言葉を記録しておかないと思って。そこからは急ぎました。今年の3月に取材を始めて、4月から『月刊ドライブイン』を発行し始めました。

モータリゼーションと共にある ドライブインの歴史


——ドライブインを通して見ることのできる「日本の戦後史」とはどういうものでしょうか

橋本:ドライブインが増えた背景には時代ごとの理由があります。ドライブインがある場所にはいくつか傾向があるんですけど、まず観光地のそばにはドライブインが多いんです。

日本にドライブインが増え始めるのは1950年代からなんですが、戦後、少しずつ生活が落ち着いてきた時代に団体バスで観光する人が増えていった。その観光バスのお客さんを取り込もうと、観光地のそばにドライブインが増え始めました。

つぎに、1960年代のマイカーブーム時代にできたドライブイン。これはドライブに出かける家族やカップルを取り込もうと、洒落たデザインのものが結構多いんです。

その後70年代に入る頃には、物流の主役が大型トラックに移っていくこともあり、日本各地にどんどんバイパスができてきます。すると、トラックの運転手のお腹を満たすためにバイパス沿いにドライブインが建ったんですね。

国道4号線のそばにある、「二本松バイパスドライブイン」。トラック野郎に愛される店だという。写真提供:橋本倫史

そうしたドライブインの店主として30年、40年と働いている店主のお話を集めれば、日本のモータリゼーションと共に変わっていった、時代時代の生活を残せるのではないかと思っています。

——「ドライブイン」といっても、高速道路沿いのパーキングエリアや大型のチェーン店まで、その業態はさまざまかと思います。橋本さんが『月刊ドライブイン』で取り上げているのは個人経営の、それも地方のお店ばかりですね

橋本:1960年代から70年代に増えたドライブインには、個人のお店が多いんです。そこから営業を続けていくうちに店主の歴史がお店に重なってくるのが面白いところでもあると思っていて。

ドライブインには30年、40年前に、夫が「ドライブインやるぞ」といって、夫婦で慌ただしく始めたお店が多いんですが、そうしてお店を続けているうちに夫が先に亡くなってしまって、今は女性が一人で細々と続けているというのがよくあるケースなんです。

そうしたお店で話を聞いていくと、ある時期の日本の女性の姿みたいなものも見えてきますよね。

——これまで『月刊ドライブイン』は計8号出ていますが、なかでも印象的だったドライブインはありますか

橋本:もちろんどれも思い入れ深いのですが、今浮かんだのが5号で取り上げた能登の「ロードパーク女の浦」。ここは観光地の近くにあるタイプのドライブインで、観光バスによって栄えたお店です。

「ロードパーク女の浦」の店内。食堂にはずらりと椅子が並ぶ。観光バス全盛の頃は「バスがやってくるとワーッとお客さんがきて、バスが出発すると誰もおらんようになる(月刊ドライブイン Vol.5より)」という状況だったそうだ。写真提供:橋本倫史

店主の方は女性で、35年近くそこでずっとお店をやっている。まさに先ほど話したような経緯のお店ですね。

目の前に海があるので、毎日綺麗な海を眺めながら過ごせて幸せだろうなと思って、「お母さんにとって、この海はどういう場所ですか」と聞いてみたんです。すると、「本当に嫌なこともあるけど、海に向かって叫んでみると、また明日も働こうかなって気持ちになるのよね」と話してくれました。

それなりにお年も召していて、穏やかそうな方だったので、思わず驚いてしまって「叫びたくなるようなことなんてあるんですか?」と聞くと「ありますよそりゃ」と。そう言って、しばらくのあいだ海を見つめていた後ろ姿がすごく印象的でした。

もちろん、何十年の人生の中には叫びたくなるようなことだってあるのは当たり前なんですけど、海を眺める後ろ姿にこれまでの時間が詰まっているように見えて、しばらくお母さんの後ろ姿を眺めていました。

-—珍しいところでいうと、沖縄のドライブインも取材されていますね

橋本:ドライブインを取り上げる以上、どこかで発祥の地でもあるアメリカというものを書かなければいけないなと思っていたんです。

それで、アメリカの影響ということを考える上で、やっぱり沖縄のことを外せないだろうということで、『月刊ドライブイン Vol.4』では沖縄のドライブインを取りあげました。

沖縄には1963年に「A&W」というアメリカのファストフード店がドライブインとして輸入されて、当時はアメリカ人のお客さんがほとんどだったらしいんですね。その頃はハンバーガーを食べたことのある日本人は少なくて、「A&W」はあこがれの味だった。それが今や、沖縄県民に愛されるソウルフードになっているんです。

オレンジ色の看板が特徴の「A&W 牧港店」。現地の人も「沖縄の人にとって、『A&W』はあこがれだった」という。写真提供:橋本倫史

戦争ではアメリカに負けたけれど、戦後にやってきたアメリカの生活スタイルにはあこがれる。こうした複雑な思いというのは、沖縄に凝縮されてしまっているけれど、これは日本全土に共通のものなんじゃないか。沖縄のドライブインを取材することで、そう感じるようになりました。

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