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ますます「閉じこもる」インターネット社会 - 塚越健司(拓殖大学非常勤講師)

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 前回はロボットに法的権利を与えるかどうかについて、EUの議論等を参考に考察した(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/11272)。ロボットと淀みなく会話できるような技術の完成にはもう少し時間がかかるが、いずれにせよ現時点から議論する必要があるだろう。

 今回は年末ということもあり、2017年のインターネット社会について「閉じこもるインターネット」をキーワードに、技術と我々の関係について論じたい。

(iStock/Cineberg)

みたいものだけをみる「閉じこもるインターネット」

 「閉じこもるインターネット」というキーワードは、もともとアメリカのインターネット活動家であるイーライ・パリサーが2011年に出版した書籍の日本語版タイトルであり、2016年に原題『フィルターバブル』の名で文庫化されている。パリサーはそこで、グーグルが個人情報の分析によって検索結果を個人の趣向に反映させる「パーソナライズド検索」を導入したことで、ネットには「フィルター」が掛けられた社会になったと指摘する。

 実際、インターネットは原理上世界とつながることができるのに、我々のインターネット社会はますますフィルターが重層的にかけられ、気に入ったもの以外を目にする機会は減っている。グーグル検索はもちろんのこと、視聴履歴からユーザーの好みをおすすめするネットフリックス、おすすめの広告戦略に長けたインスタグラム等、フィルターバブルの例は枚挙に暇がない。要するに、みたいものだけみるインターネットは閉じこもっていく、という主張である。

 フィルターバブル化は数年来続いてきた現象だ。とはいえ2017年は、国家によるフィルター化が進んだ一年でもあった。アメリカを拠点に、毎年発表される「人権白書」で有名な国際NGOの「フリーダムハウス」は、最新レポートを発表している。それによれば、調査対象65ヵ国のうち、アメリカを含む少なくとも18ヵ国で2016年に世論操作がSNSなどで行われたという。これらは政府が雇った「意見形成者」により、主にSNSに意見を述べることで世論を誘導したという。さらに少なくとも9ヵ国では、政府や与党と結びついたハッカーがSNSやニュースサイトをジャックして嘘を流したという。またフリーダムハウスは、インターネット空間の自由が改善する国よりも、後退する国の方が多くなっているとも指摘している。

 日本では、オンラインで仕事のマッチングを行う「クラウドワークス」を利用し、「反日」や「嫌韓」といった内容の政治ブログの執筆者募集が行われた。すぐに問題となり規約違反として掲載中止となったが、日本でも世論誘導に近いことが行われていたことの現れである。こうした世論操作は、ネットという「つながり」の空間に政治的フィルターを貼り、社会を内にこもらせている。

言論統制技術を輸出したい中国

 中国の言論統制は有名だが、中国は言論統制技術の輸出も念頭にある。中国が主催する「世界インターネット大会」という国際会議は4回目を迎え、2017年は烏鎮(うちん)で行われた。欧米先進諸国からの参加者は少なく、それ故に日本の報道も多くなかったが、アップルのティム・クックCEOやグーグルのサンダー・ピチャイCEOが参加し、スピーチにおいて中国政府を批判しなかったことから、逆に欧米から批判されていることが話題となった

 ここで中国は、自国を中心とした経済圏を構築するための「一帯一路・デジタル経済国際協力イニシアティブ」と題した提言を発表した。それは中国、ラオス、サウジアラビア、セルビア、タイ、トルコ、アラブ首長国連邦が共同で、デジタル取引の促進といった経済政策と同時に、ネット空間の「秩序」を高める方策を採用するものだ。経済協力ではあるが、それは中国による経済支援の側面もあり、その見返りとして各国は中国を支援し、同時にネット上の言論統制などを正当化することになりかねない(欧米各国から言論統制を批判される中国が、インターネット主権を唱えている問題については、本連載でも扱った

 時に中国は2030年までにアメリカを抜いて人工知能技術で世界をリードするという目標を掲げ、すでに国内企業に積極的な投資を行っている。ここで注目されるのは顔認証を技術である。顔認証というとアップルのiPhoneⅩが有名だが、中国は現在、顔認証だけで決済を可能にするサービスを国内で実験している。ビジネスとして使われる一方、顔認証は監視カメラから個人を特定するためにも用いられ、この分野の技術を先の経済圏に積極的に輸出することが目的のひとつでもある。

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