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今一度、リニア建設の妥当性について考えるべき

リニア中央新幹線の建設工事に関する談合疑惑について、独占禁止法違反容疑で大手ゼネコン4社に家宅捜査が入ってから一週間以上が経過した。こうした巨大プロジェクトに談合はつきものと言ってしまえば身も蓋もないが、相変わらず建設業界の体質が変わっていない現状を見ると情けなくなるばかりである。徹底的な真相解明を求めるのは言うまでもない。

さて、それはそれとして、筆者は以前からリニアモーターカーの採算性・将来性に強く疑問を感じてきた。個人的には、建設がそれほど進んでいない今ならば、既存の新幹線方式への変更とルートの変更(決定された南アルプスルート以外のものに変更)を行うべきだと考える。具体的には、かつて大前研一氏が主張したように、既存の新幹線方式を採り中央本線と同じルートで建設するのが妥当だと思う。

原発とセットでパッケージ型インフラ輸出という安易な発想

リニアモーターカーの長所は速度が速いことだが、欠点としては1.既存の鉄道と乗り入れができない、2.建設費用が既存の新幹線と比べて割高になる、3.莫大な電力を消費することが挙げられる。1に関しては、フランスのTGVやドイツのICEが優れており、高速鉄道技術の輸出競争においてメリットとなっている。2に関しては、JR東海は超電導リニア方式だと新幹線方式の1.3倍程度の費用になるとしているが、これは相当甘い試算だろう。

さらにそれについては、建設に困難が予想される南アルプストンネルを経由する南アルプスルートを採用した場合に、もっとも建設費用が安くされていることにも疑念を抱かざるを得ない。建設から開業後50年間の総費用を考えた場合、最低でもリニアの方が新幹線の倍はかかると覚悟する方が現実的だろう。3に関しては未確定部分が多いが、JR東海が採用する超電導リニアでは電力消費量が既存の新幹線と比べて3倍程度に膨れ上がるとの予想もある

すでに東京-大阪間では新幹線と飛行機の利用比率は85:15であり前者が後者を圧倒している。それゆえに、リニアモーターカーを東京-大阪間で開業させたところで、JR東海の業績が劇的に向上するとは思われない。JR東海、そして政府が(超電導)リニア建設を急ぐ本心はリニアをパッケージ型インフラ輸出の目玉商品の一つにしたいということなのであろう。

すなわち、既存の新幹線がフランス・ドイツ・中国などとの熾烈な受注競争を勝ち抜かなければいけないので、次世代の技術を提供することによって優位性を確保したいという意図が見え隠れするのである。さらに、リニアが莫大な電力を必要とするならば、リニアと原発をセットにして輸出するということも考えているのであろう。

建設費用が高い上に融通が利かないリニアは、買い手にとって魅力がない商品

しかしながら、買う側からすればリニアは使い勝手が良い商品だとは思えない。まず日本のリニア中央新幹線が成功した実例を踏まなければ、建設費用・維持費用も十分に予想できないであろうから、リニアが少なくとも名古屋まで開業して十分な実績を積んでからではないと導入の決断はできないであろう。現時点で超電導リニアの輸出先として具体名が挙げられるのはアメリカぐらいであるが、仮に予定通り2027年に名古屋まで開業したとしても、5年くらいの経過を見てから導入の是非を決定するとすれば、それは2032年以後になる。それは今から15年以上先の話であるが、その間に鉄輪式の高速鉄道も現行の平均時速280kmから最低でも300kmにはアップしていることが予想される

ここでリニアと鉄輪式の高速鉄道の比較となるのだが、リニア導入を計画している国において、在来線のレールの幅が各国の在来線および高速鉄道で最も多く採用されている標準軌(1435mm)だとしよう。在来線と同じ車幅のフランスのTGVやドイツのICEならば大都市の中心部に高速鉄道専用線を建設せずにすみ、さらに当該大都市に複数のターミナル駅が存在する場合でも、高速鉄道に乗りながら在来線を使ってそれらの駅に乗り入れることができる。距離が500kmある都市間を平均時速400kmのリニアモーターカーで結べば1時間15分程度、平均時速300kmの高速鉄道で結んだ場合には1時間40分程度かかる。

それに対して、飛行機を使った場合、大都市中心部から空港までの移動時間や空港での搭乗手続きなどを含めて2時間以上かかるとすれば、この時点で飛行機より鉄道に優位性が生じる。25分の差のために大都市中心部に多額の建設費用をかけてリニア専用線を建設するよりは、安価かつ在来線を使って郊外や空港などにも乗り入れることができる鉄輪式の高速鉄道を選ぶというのが合理的な選択ではなかろうか。

「官民共同でパッケージ輸出」というコンセプトの問題点

「官民共同でパッケージ輸出」というのは聞こえは良いが、リニアや原発のような巨大プロジェクトになると、失敗した場合、機会費用も考えれば経済的損失は莫大になる。そもそも巨額の建設コストがかかるので、参入障壁が高く市場メカニズムが有効に機能しにくい分野である。また、一度決めた以上は失敗しそうであっても後戻りしにくい性質のゆえ、Too big to fail問題の典型例になる可能性がある。巨大な無駄遣いを産まないように我々国民は今一度、リニア建設の妥当性について考えるべきである。

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