年金や生活保護といった社会保障システムを廃止して、所得税を一定率でフラット化する。
50年近く前にフリードマンが提案した「負の所得税」が実現すれば、複雑な税制は劇的に簡素化され福祉システムも極めて効率的になる....と言われることがあります(理屈の上では)。
負の所得税と似た概念に「ベーシック・インカム」があるので、この二つの制度の違いについて考えてみます。
(この記事は昔書いたものを加筆したものです)
【負の所得税】
正・負の所得税分岐点を200万円、税率40%とします。
稼得収入(勤労収入)がゼロの人であれば(200-0)×40%の80万円が
負の所得税として支給されることになります。
稼得収入が200万円の人の所得税はちょうどゼロとなり、これを超えると正の所得税が課されることになります。
負の所得税モデルでは、稼得所得をX、最終所得をYとした場合の関数は以下のようになります。
負の所得税は図の赤で囲った部分で示したように、稼得所得が増えれば支給される負の所得税額が減っていきます。このため、低所得層においては以下で述べるベーシック・インカムよりも勤労意欲を減退させやすいといわれてるようです。
【ベーシック・インカム】
国民であれば無条件で一定額を支給させようとするのがベーシック・インカムといいます。ここでは国民全員に80万円が支給されたとして、稼得所得に対する税率は先と同じく40%とします。
稼得所得がゼロであれば最終所得はベーシック・インカムによる80万円となります。
稼得収入が200万円の場合は200×40%の80万円の所得税がかかりますが、ベーシック・インカムによって80万円の収入があるので、最終所得は200万円となります。
ベーシック・インカムモデルにおいて、稼得所得をX、最終所得をYとした場合の関数は以下のように表すことができます。
実は負の所得税もベーシック・インカムは同じ計算式なんですね。負の所得税とは違いベーシック・インカムでは所得に係わらず一定の所得税が徴収されるものの、稼得所得が増えればそれに応じて最終所得も増加します。
とはいえ、関数が同一であることから自明ですが、負の所得税とベーシック・インカムは前提が同一であれば最終所得も同じになります。
では、何が違うのか。決定的に異なる部分をまとめると下表のようになります。
| - | 負の所得税 | ベーシック・インカム |
| 資力調査 | あり | なし |
| 他の所得の有無 | 問われる | 問わない |
| 支給時期 | 事後 | 事前 |
最も大きな相違点は、資力調査(各人別の正確な所得の把握)の有無と支給対象です。まず資力調査ですが、負の所得税は計算の前提となる正確な稼得所得の把握が絶対的に必要となり、そのため支給時期は事後になります。一方ベーシック・インカムにおいては無条件支給なのでこうした調査は不要で、支給時期は事前でも可能です。
負の所得税は経済学の巨魁ミルトン・フリードマンが強く推奨した政策として有名です。自由主義経済学者が負の所得税を推すのは意外に思うかもしれませんが、この政策は企業に課される最低賃金制度を廃すことで労働需給を市場均衡点にまで下げられることと、負の所得税という最低給付金を低所得者に保証することによって人々が望む方法で自由に生きることを可能にするというメリットがあります。自由主義経済学者が共感を覚えても不思議ではありません。
これらの特徴はベーシック・インカムにも当てはまることですが、ベーシック・インカムは費用がかかりすぎるという問題や伝統的な家族モデルが崩壊するのではないかという懸念(支給対象が個人単位なので)をフリードマンは抱いていたようです。なお、フリードマンは負の所得税の課税(支給)単位として家族・世帯を前提としていたようですが、現行の日本の税制のように個人単位で導入したとしたら、彼が懸念する「伝統的な家族モデルの崩壊」は避けられないような気がします。それが悪いことなのかどうかはよくわかりませんが。
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投資を中心に、ビジネス・ライフハックにも言及する。