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ハラスメントへの怒りはハラスメントをした者に返せ

セクハラなどを受けた被害を積極的に訴える「#MeToo」が世界的な潮流となっている。

ディズニー映画を手がけることでも知られるピクサーの重役や、ハリウッドの大物プロデューサーなど、多くの人が告発されている。

そのなかで先日、日本の作家・ブロガーである、はあちゅう氏が、電通時代の上司である岸勇希氏によるセクハラ被害を告白した。(*1)

岸氏はこれに対して真夜中に呼び出したことなど一部については認めたものの、性的な関係を要求したことについては否定をしている。(*2)

また岸氏は広告会社「刻キタル」の代表取締役を「自分の個人的な問題から、社会を大きくお騒がせしたこと」などの理由で辞任したことを発表している。(*3)

はあちゅう氏の告白が事実だとすれば、とても酷いセクハラであるといえる。ついでに言えば、岸氏の反論が事実で、真夜中に呼び出したりしただけだということにしても、それでも十分なパワハラである。

こうしたことを「企業文化」の一言で片付ける人もいるが、こうした私的領域にまでみだりに踏み込む企業文化は否定されるべき文化である。中高生の人間関係ではないのだから、大人であれば仕事とプライベートはハッキリと区別するべきである。

さて、これだけなら#MeTooの流れが日本にも来たかという話に過ぎなかったのだが、ネットでの受け止め方は単純にそうではなかった。逆にはあちゅう氏に対して「はあちゅうこそ、非モテや童貞に対するハラスメントをしまくっているではないか」という批判の声が挙がったのである。他人事のように言うのも不公平なので、自分もそうした批判をした中の1人であることを表明しておく。

ネットでの批判に対して最初は「本人が堂々と公言している童貞、ヤリマンをコミュニケーションネタとしていじることや下ネタとセクハラは違うと思うんですけどねー。明るく楽しく笑えるものが自粛になるのは嫌だなー...。」(*4)などとツイートしていたが、その後に「過去の「童貞」に関する発言についてのお詫び」という文書をアップしたが、後にこれを削除している。

口さがない人たちの中には「はあちゅうは、セクハラ被害をセルフブランディングに利用したのではないか」と批判する者もいるが、それでも彼女がセクハラ被害を受けたという問題が軽くなるわけでもないのだから、ブランディング自体は批判する理由には当たらない。

しかしながら、今回、僕が気にせざるを得なかったのは、彼女が他ならぬ、こうしたセクハラやパワハラの類を仕事にしていたことである。

彼女の非モテや童貞に対するコラムは常に上から目線で高圧的なものであり、女性である自分のジャッジメントが必ず正しいものであるという前提のもとに書かれていた。いわば勝ち組女性としての自身を誇り、いかに非モテや童貞がダメな男であるか、それを教えてあげるのだという、膨れ上がった自尊心のオーラを隠そうともせずに身にまとった女性だという印象がある。

逆に言えばそうした強いオーラに惹きつけられる女性や、またそうした強い女性を好ましいと思う男性も多く、作家としては人気があった。

もし彼女が無名の女性で、単に彼女と仲間内で非モテや童貞をジャッジするだけなら自由にしてくれて構わない。しかし彼女の仕事は雑誌やWebに掲載される。そしてそれを見た人たちが非モテや童貞を笑っていいものとして扱う。こうしてより非モテや童貞はバカにされるようになる。

彼女の論旨をみると、いわば彼女が嫌うような人物を全て非モテや童貞とレッテルを貼り、その上で上から目線で批評をしているような物が多い。今回の件について、はあちゅうを擁護していた人が「岸氏は電通に入らなければ非モテだったに違いない」と、電通マンでトップクリエイターの一人というモテ属性しかない、明らかに強い立場の岸氏を非モテに結びつけていた。セクハラのような権力問題すら、こうして全く関係のない「非モテのせい」であるかのように言えてしまう感覚が、彼女やそのファンの間には存在するのである。

もちろん、モテない人を笑うというのは、彼女が生み出したことではない。恋愛結婚が多くなってから、ずっと言われていたことだ。しかしそれを表立って主張し、それを仕事として収入を得るということは、単なる嘲笑以上の意味を持つ。

今回、セクハラの告白に対して「でもお前だってハラスメントしてんじゃん」という批判が巻き起こったことは、そうした仕事による成果物に対する責任を十分に自覚してこなかった彼女の落ち度に他ならないだろう。

また、気になったのは、はあちゅう氏の普段の仕事ぶり、すなわち非モテや童貞に対するハラスメントを批判をする人たちに対して「問題を切り分けろ」という批判が飛んだことだ。彼ら曰く「はあちゅうが憎いのは分かるが、はあちゅう氏の受けたセクハラの問題は大きい。電通という大きな相手を向こうに回しているのだ。この時点で彼女を批判するべきではない」というのだ。

しかしこれはとんでもない暴論であると僕は考える。今回岸氏は、はあちゅう氏の告白に対して対立することなく、釈明だけを残して去ったが、もし岸氏が「私も電通時代に自分もパワハラを受けていた」と告白したらどうなるだろうか。新入社員の自殺事件を引き起こした電通で仕事をしている以上、岸氏がまだ若手の頃にパワハラを受けていたと考えることは、決して突飛な発想ではないだろう。

このときに、今回「問題を切り分けろ」と言っている人は、はあちゅう氏に対して「岸が憎いのは分かるが、電通という大きな相手を向こうに回しているのだ。この時点で彼を批判するべきではない」と釘を差すのだろうか? それは告白の封殺に他ならないではないか。

ある関係性ではハラスメントを受けた側が、ある関係性ではハラスメントをしている側に立つ。それはまったくおかしなことではないし、かつ決してお互いに相殺される関係ではない。ハラスメントを受けたことを告白したとしても、決してその告白者が他者に対して行ったハラスメントが無かったことになるはずもないし、無かったことにしてはならないのである。

はあちゅう氏が岸氏に対して「#MeToo」を提示したのであっても、それと同時にはあちゅう氏に対して、少なくない人が「#MeToo」を示したということが、悪いことなどということはありえない。

「問題を切り分けろ」という言葉で誰かの「#MeToo」を否定すことは、勇気ある告白を無効にしようとするバッシングに他ならない。

今回の構図をみるに、岸氏がはあちゅう氏にパワハラを行い、はあちゅう氏は非モテや童貞にハラスメントを行っていた。はあちゅう氏の非モテや童貞への強いマウンティングは、もしかしたら岸氏にハラスメントを受けていた経験から醸成された自意識なのかもしれない。

しかしながら、そのことは他者へのハラスメントの理由にはならない。そうではなく、ハラスメントを受けたら、受けた人がそれをちゃんと、ハラスメントを行った人に真っ当に対抗できる社会でありたい。本来「#MeToo」の運動が目指すものはそこではないかと、僕は思う。

最後に完全に余談となるが、触れておかなければならないのは、はあちゅう氏による、私に対する事実を誤認したツイートの存在である。

私が今回のセクハラ問題について、ある程度はあちゅう氏に批判的な立場で論じていた所、彼女は自らの雑談用アカウントに以下のようなツイートを投稿した。

「この赤木というおじさん、昔から私にも散々粘着して、攻撃的な言葉まき散らしてるけど、誰かに何かをちょっと言い返されたら「心身に変調をきたした」とか…。ほんとクズだな…。クズにクズっていってもしょうがないけど、最低人間の見本。」
https://twitter.com/bot_hachu/status/942895299990667264

まぁおじさんなのは本当だし、クズや最低人間という評価についても「個人の感想です」でしかないのでいいとしよう。

しかし「昔から私にも散々粘着して」というのは明らかに嘘である。はあちゅう氏の言動をある程度集中的に論じたのは今回のセクハラの件が初めてであり、粘着と言われるような覚えは一切ない。

私はレスポンスの形で、謝罪(ツイートを消すだけでも謝罪とみなす)をするか、粘着の根拠を提示するかのどちらかを求めたが、返答無きままブロックされ、ツイートもこれを書いている時点でそのままになっている。

このことをどう取るかは皆さんにおまかせするが、私はあちゅう氏に対して「嫌いな他者を貶めるためであれば、嘘もつくような信用できない人間」と評価せざるを得ないことを最後に記しておく。

ハラスメントを受けたら、それを行った人に返すのだ。#MeToo!

*1:はあちゅうが著名クリエイターのセクハラとパワハラを証言 岸氏「謝罪します」(BuzzFeed)
*2:Buzz Feed様からの取材について(note 岸 勇希)
*3:代表取締役の異動(辞任)に関するお知らせ(刻キタル)
*4:本人が堂々と公言している童貞、ヤリマンをコミュニケーションネタとしていじることや下ネタとセクハラは違うと思うんですけどねー。明るく楽しく笑えるものが自粛になるのは嫌だなー...。(Twitter はあちゅう)

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