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現代女性の生きづらさについて考えるフォーラム、2時間の徹底討論をレポート~

「女性活躍」の裏に隠れているもの

メディア上で「女性活躍」のプロパガンダのように盛んに叫ばれるようになって、5年はたつだろうか。昨年4月には「女性活躍推進法」が施行され、女性が働きやすい社会を目指す動きは、徐々に高まっているようだ。

一方、今年はNHKの番組で「貧困」と報道された女子高生が、「実際は貧しくないじゃないか」と炎上し、アダルト業界ではAV女優の出演強要問題が議論を呼ぶなど、女性の生き方については良くも悪くも「燃えやすい」感がある。11月に公表された、男女の格差を示す「ジェンダーギャップ指数」は、日本が114位と過去最低を更新した。表舞台でキラキラする女性が目立つ一方、「女」や「男」の抱える生きづらさは、底なし沼のような暗さを帯びている。

そんな状況について議論しようと、11月19日、日本財団ソーシャルイノベーションフォーラムでは「女性活躍の裏に隠れているもの」と題した分科会が開かれた。ノンフィクションライターの中村淳彦氏、生きづらさを抱える10~20代の女の子を支援するNPO法人「BONDプロジェクト」代表の橘ジュン氏、評論家の勝部元気氏、そして著述家の北条かやが、2時間にわたって激論。「女性の生きづらさ」について語り合った。

提供:日本財団

女性の生きづらさを語るのに、なぜ「男性の自尊心」に配慮しなければならないのか

参加するにあたって、ひとつ気になるところがあった。「女性活躍の裏に隠れているもの」と題したフォーラムなのに、説明文に「女性の生きづらさの裏にある、男性の生きづらさとは」なる文言があったのだ。女性の生きづらさを語るのに、なぜ「男性の自尊心」に配慮しなければならないのか。女性のことだけを話していてはダメなのか。

評論家の勝部元気氏は指摘する。

「男女の格差を示す『ジェンダーギャップ指数』が114位っていうのは、日本人男性の自尊心の低さランキングでもあると思うんです」(勝部元気氏)

日本では2000年以降、バックラッシュ(男女平等への反対運動、揺り戻し)が起きている。バックラッシュ的な言動はもはや定着しているし、メディアで見る「女性活躍」とは裏腹に、女性が目立つと叩かれる風潮はなくならない。勝部氏の発言を援用するならば、日本人男性の自尊心は、その一部が女性を傷つけられずにはいられないほど「低い」のかもしれない。

男性の女性に対する「期待値」が高すぎる?

勝部元気氏は続けて、「男性の、女性に対する期待値の高さにはものすごいものがある」と発言。なるほど、だから一部の男性がある女性に失望した際、バッシングが予想以上に大きくなるのか。

これにはノンフィクションライターの中村淳彦氏も同調し、

「男性は女性にものすごく期待して幻想を抱くところがある」「(自ら介護事業を営んだ経験から)介護現場に参入してくる、モテなかった中年童貞の悲惨さを目の当たりにした。現代は女性の生きづらさもあるが、女性は最終的に体を売るという選択肢がある。それすらない男性はさらにどうしようもない」と述べた。

一方、生きづらさを抱える10~20代の女の子たちを支援しているNPO法人の橘ジュン氏は、「若い女性ならではの生きづらさ」が存在することを報告した。

東京の繁華街に出てきて、「寝る場所がない」とフラフラしているところを男性に囲まれ、危険な目に遇うかもしれなかった高校生の女の子たち。居場所がない寂しさを埋め合わせるように、JKビジネスの店で働き、「やめたいのにやめられない」と言う少女。彼女たちをオフィスに一時保護し、ときに優しく、ときに厳しく接する橘氏は、「貧困のあり方に、『こうでなきゃ』というのが強すぎると思う」と主張した。

女性への「期待値」の高さと、貧困女性に対するステレオタイプな物の見方。彼女たちに「生きづらさ」なんてないだろうという決めつけ。

「うちのオフィスから、勝手に共用の下着を持ち出して5000円とかで売っちゃう女の子もいるんです」(橘ジュン氏)

という橘ジュン氏に、中村淳彦氏は「女子高生が下着を売ってその場で儲かるのであれば、全然問題ない」と主張。あくまで「売るものすらない男性の方が悲惨」との立場だ。

「売る過程で、知らない男性と接するわけだから、危ない目に遭うこともある」と案じる橘氏に対し、中村氏は「あくまでその日の食い扶持が稼げるのであればいいのでは」と、議論がやや平行線になった。

なぜ、女性が若さを売りにしてはいけないのか。それが「危ない」とか「幸せにはなれない」とか、「生きづらさにつながる」と、直感されるのはどうしてだろう。

下着を売っても「自分の中身」を評価されるわけではない

自分自身の経験を踏まえると、女性が若さだけを売りにするのは、本当の意味での「労働」ではないのだと思う。理想的な「労働」とは、自己の内側から湧き出る能力やモチベーションをお金に変える営みのことだ。「自分自身の内面が評価されている」と実感できる営みこそ、理想だと私は思う。

女の子が下着を売って5000円稼ぐ労働は、その女の子自身が評価されているというよりは、「若い女性が売る下着」という「モノ」だけに価値が付随している。だから、売る主体は漠然とした不安にかられる可能性があるし、彼女たちを支援する橘ジュン氏が指摘するように、下着を売って多少のお金が手に入っても、女の子たちの「生きづらさ」は消えないのだろう。

中村氏の言うとおり、当面の資金確保のために、高校生が下着を売ることは「問題ではない」。が、それを繰り返しても「充実した労働実感」は得づらいのではないか、というのが私の意見だ。女の子たちは「5000円もらっても、働いた実感が得られない」という無力感を得てしまう、と思う。

「メガネキャラ」として認知されていた自分だからこそ思うこと

提供:日本財団

私も27歳のデビュー当時は、自分の容姿が過大に評価されているような気がしていた。書籍の帯には必ず私の顔写真が載ったし、テレビに出れば「メガネ女子」キャラとして認知されているような実感があった。それを褒められても、どこかで虚しい感じがあった。漠然とした生きづらさを抱えながら文章を書き、そして生きてきた。

今、若さを失いかけて思うのは、外見がいいですねと褒められるよりも、「あなたはこんな文章も書けるんだね」「今度はこんな文章を書いてほしい」など、自分の外見に触れず「文章」を評価してもらったときが、1番嬉しいということだ。若さを失ってようやっと、外見云々ではなく中身を見てもらえるようになった気さえしているくらいなのだ。

もちろん、中身を見てもらえるようになったなどと贅沢なことを言えるのは、私が「言葉」で発信できる側の人間だからであり、言葉を持てない人たちにとってはそんなこと、関係ないかもしれない。私の労働観はあくまで、私の主観でしかない。

しかし、勝部氏はそうした考え方を、「人を『属性』で見ずに『内面』を見る」という言葉で補強してくれた。

「私たちは、あの人はこういう属性だから――こういうタイプの女性だから、こういう男性だからなど――すなわち内面もこうなのだろうと想像してしまうが、実際はその人、個人に隠された内面を丹念に見ていくことの方が何倍も大切。そうしないと、一面的なものの見方しかできず、互いに非難し合うことになる」(勝部元気氏)

生きづらさを解放するキーワードは「労働」かもしれない

今、女性たちが生きづらさを抱えているとすれば、それは労働市場が何らかの形で歪んでいるからだ。女性の「若さ」や、「産む能力」などの属性を過大に評価するような市場が、私たちの生きづらさを生んでいるのだ。家事や育児を「女性のもの」として押し付ける態度も同様のゆがみである。

若さや外見などの属性だけではなく、働くことで、女性が少しでも「自分の中身を評価された」と信じられること。そうなることで、私たちは生きづらさから開放される。性別から解放されるのは困難であるし、ネット社会にあって「内面を見てくれ」とは難しいかもしれないが、それでも労働市場における女性の解放を目指す営みは無駄ではない。

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