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リニア工事不正受注事件の摘発は日本版司法取引の試金石となるか?

19日のNHKニュースによりますと、リニア中央新幹線の建設工事をめぐる談合事件で、大林組さんが大手ゼネコン4社による不正な受注調整を認めたそうです。そして同社は、談合などの違反行為を自主申告すれば課徴金が減免される制度(リニエンシー制度)に基づいて、公正取引委員会に違反を申し出ていたことが関係者への取材で判明した、とのこと。

本事件は大林組さんへの偽計業務妨害容疑での捜査を端緒として、タテに伸びるのか(不正競争防止法違反容疑)、ヨコに伸びるのか(独禁法違反容疑)とても関心を持っておりました。私は(JR東海担当者が情報を漏らした、との報道から)タテに伸びるものと思っておりましたが、どうもヨコに伸びていくような展開になりましたね(となりますと、たいへん大きな不祥事事件に発展する可能性が高いです)。大手ゼネコン4社の役員の皆様方にとってはかなり厳しい状況になってきたようです。

役員の民事責任との関係でいえば、もし独禁法違反の事実が公取委で認められた場合、課徴金は数十億円に上るとみられていますが、リニエンシーによって課徴金が減免されます(ただし減免の対象は「事業者」です)。これはゼネコン各社の役員の株主代表訴訟リスクと大きく関係します(住友電工株主代表訴訟参照)。役員の方々のところへ、談合に関する自社の関与情報が届くのが遅くなり、タッチの差で課徴金減免を得られなかったとなりますと、「内部統制システムの構築義務違反」(どちらかといえば、整備よりも運用に関する任務懈怠でしょうか)に問われる可能性が出てきます。

また、役員の刑事責任との関係でいえば、談合に参加した社員の供述によって経営トップの関与がどれだけ立証できるか、という点が注目されます。すでに大林組さんの場合には副社長クラスの方の供述がとられているようですが、他社さんではどうなのでしょうか。

マスコミではリニエンシー制度の適用についての報道が目立ちますが、私は来年6月3日までに施行される改正刑事訴訟法上の「協議・合意制度」(日本版司法取引)の試金石になりそうな事案だと考えています。これまでも事実上の司法取引は行われていましたが、同制度が施行されますと部下である実行者を起訴しないことを条件に、上司(経営幹部)の関与について(部下に)真実を証言させるということが法的に認められることになります。たとえば司法当局がカルテル摘発に動いたにもかかわらず全容解明が進まない場合に、この協議・合意制度によって役職員の積極的な証言が得られれば一気に全容解明が進むことが考えられます。

もし、今回の事例が大規模なカルテル摘発を目的とするものであるならば、来年6月までに施行される改正刑事訴訟法の適用をにらんだものではないでしょうか。ちなみに2015年12月3日の最高裁判決(被告人・被疑者に不利益な刑事訴訟法の改正条文に関する遡及適用は、憲法39条が禁止する遡及処罰に該当しない)からすれば、このたびのリニア不正受注事件の捜査にも日本版司法取引の適用はありうると思われます。

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