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ハラスメントの告発者に「資格」を問うな

電通出身のはあちゅう氏が、在職中の上司だった著名クリエイターの岸氏から受けたセクハラ・パワハラを、実名で告発した。

はあちゅうが著名クリエイターのセクハラとパワハラを証言 岸氏「謝罪します」

はあちゅう氏はあまり好きではないが、実名でのセクハラ告発に対しては、尊敬と絶賛しかない。
私も過去に悪質なセクハラを受けているが、自分と相手の実名を出して告発する勇気など全くないからだ。

セクハラ告発者を叩きたい>セクハラへの義憤

セクハラの告発が難しい理由はいくつかある。

  • 仕事の利害関係がある場合、報復を受けて仕事を失う可能性がある
  • 被害者に落ち度があったように叩かれる
  • 加害者が男性で被害者が女性というだけで、被害者の女性を叩く層が一定数いる
  • 同じ女性からも、「セクハラ告発は、暗に容姿自慢をしている」と叩かれることがある
  • 同じセクハラ被害者からも、「私はもっとひどいセクハラを受けた。それくらいで告発するなんて」と叩かれることがある

つまり、

セクハラ告発者を叩きたい欲求>セクハラという行為への義憤

という構図があるように思える。

はあちゅう氏も、過去の炎上発言を蒸し返されて、ハラスメントを告発する「資格」がないと叩かれている。

ハラスメント告発者に「資格」を求めるのは、ハラスメントを生む構造に似ている

ハラスメント告発者に「告発者としての資格」を求めるのは、ハラスメントを行う人や容認する周囲の精神構造と似ている。

ハラスメントを容認する会社には、

ハラスメントを受ける人には、それ相応の理由がある

という考え方があるのだ。

過去に見たパワハラを例に挙げる。

「仕事ができない」と言われている新人がいた。
客観的に見れば、まだ一年目のため、業務に不慣れで少し時間がかかっただけで、勤怠に問題なく素直で真面目な人だった。

ある時、その新人に指導をしていた課長が、いきなり机を「バン!」と叩いた。
何事かと思って見たら、次の瞬間、課長は新人に殴りかかった。
二・三発殴られて、さすがに新人も我慢できなかったのか、殴り返して乱闘になった。

その場には部長もいたが、誰も止めなかった(呆気に取られたのかもしれない)。
制止が入ったのは、しばらくたってからだった。

驚いたのは、課長がおとがめなしだったことだ。
時は3月で、殴った時点で既に課長は異動が決まっており、今なら腹いせに新人を殴れると計算してのことだったのかもしれない。

その課長(既婚者)は、異動先で部下を愛人にしたと聞いた。
それだって、普通の不倫ではなく、セクハラの末にそうなったのかもしれない。

現行犯なのにおとがめなしだった理由は、課長の上司である部長が、日頃からハラスメントを容認していたからだ。
「俺が若い時にはもっと苛烈な指導を受けた」「潰れる奴は使い物にならない奴だ」とよく言っていた。

殴られた新人は、その後会社を辞めた。
面接で短期離職の理由を聞かれ、パワハラの事実を告げても、「それくらいで辞めるなんて、社会人失格だね」と言われたそうだ。
ちょうど就職氷河期で、会社で働けるのならどんな無理強いにも耐えねばならない時代だった。

さすがに殴り合いを見たのはこの時だけだが、仕事ができない後輩の椅子に画鋲を置いた先輩が、茶飲み話にしてキャッキャッと喜んでいる風景などはよく見た。

パワハラという言葉は、2001年にできた。
これは2003年頃の出来事で、パワハラの概念は知られつつあったが、私がいた出版社では容認されていた。
2017年末の今でも、表面上の対策はあるが、日常的にハラスメントがある電通のような会社は、特にクリエイティブ業界では多いように思われる。

ハラスメントがなくならないのは、された人を叩くのが楽しいから

ハラスメントが横行する会社には、

  • 上司は部下に何をやってもいい
  • 仕事ができない人には何をやってもいい
  • 仕事では、どんな理不尽にも耐えねばならない

という考え方が根底にある。

ハラスメントを受けても、「あなたにはそれだけの落ち度があったんじゃないの」と言われ、ハラスメントを受けないための「資格」を問われるのだ。

この場合の、仕事ができるできないという評価は、極めて主観的なものだ。
先ほどの殴られた新人は、転職してから出世した。
過去の痛い経験から、思いやりがあり部下を人間として尊重する上司となった。

先ほどの新人のように、転職先では出世したポテンシャルのある人材を流出させるなど、ハラスメントは非効率だ。
では、なぜなくならないのか。

それは、楽しいからだ。

ハラスメントをしたり、された人を叩いたりする楽しさ>ハラスメントをなくしたいと思う社会の総意

という構図があるからだ。

ハラスメントの告発者に「資格」を求めるのは、告発者に資格があるかを吟味したり叩いたりするのが楽しいからだ。

今こそ、ハラスメントの告発者に「告発者たる資格」を問わずに、ハラスメントの告発をしやすい風潮を作るために、「告発者を叩く楽しさ」を捨てるべきではないのか。

(しばらく毎日20時2分の予約投稿を、社会問題の記事が書けるまで行おうと思っていたのですが、今日この記事が書けたし、気づけば死のことばかり書いているので、ちょっと中断しますにゃ)

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