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"社員のファッションが微妙"は大きな損害

企業サイトを洗練させると、学生の企業訪問が増える。ただ、社長や社員の服装がビミョウだったり、オフィスが古臭かったりすると、学生のテンションは一気に下がってしまうという。今や、「就業中はスーツ着用が義務」の会社も敬遠されがち。学生は、服装やインテリアから何を感じ取るのか。


■なぜ、スペシャリティカーは客を絞って売るのか

本題に入る前に、ブランドイメージについて、カンタンに整理しておきたい。

企業や商品・サービスには、特有のブランドイメージがあるが、イメージが形成される要素の一つに、ユーザー(使い手)の存在がある。

都心をフェラーリやランボルギーニに乗り、大音量のエキゾーストノートで走るドライバーがいる。どんな仕事に就いているのかうかがいしれない「いでたちやマナー」を誇示するタイプも散見する。ベンチャービジネスで成功した若者が、こうしたクルマを選んで乗ることもある。

高速道路を走っていると、法定速度をはるかに越えたスピードで追い越し車線を駆け抜けていくクルマがある。ドライブレコーダーが普及した近年は、そうした動画がいくつもYouTubeにアップされているが、輸入車に限らず、スピードを売り物にした国産の高性能車で危険な運転をするドライバーもいる。

スペシャリティカーには強いブランド力が存在するが、公道や高速道路を走るドライバーが醸し出す雰囲気によって、それを見た人のブランドイメージが偏向してしまうことがある。そのため、自社のブランドイメージを維持するために、可能な限り顧客を絞り込んで販売する企業が存在する。

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■アカデミー女優のドレスやダイヤモンド

映画の祭典として知られるアカデミー賞は、どの作品にオスカーが贈られるかに加え、ノミネートされた女優たちが高額なダイヤモンドをちりばめた宝飾品をドレスとともに身にまとい、レッドカーペットを歩く姿が必ず報道される。女優たちを彩る宝飾品にも、実は周到なブランドイメージづくりが行われている。

1944年にジェニファー・ジョーンズがアカデミー賞主演女優賞を獲得したとき、授賞式で身につけていたダイヤモンドは、ハリー・ウィンストン(著名なアメリカの宝飾品店)が貸し出したものだった。以来アカデミー賞の受賞式に列席する女優たちは、ハリー・ウィンストンのジュエリーを身に着けてレッドカーペッドを歩くという伝統が生まれ、それは今日まで続いている。美しい女優たちがジュエリーを身に着けることで、ハリー・ウィンストンのブランドイメージが飛躍的に向上した事例だ。

■その手法は「プロダクト・プレイスメント」

映画の主人公が商品を使うことでブランドイメージを高める手法は「プロダクト・プレイスメント」と呼ばれ、古くから用いられてきた。この手法の先がけは、実は日本だ。1718年(享保3年)に江戸で活躍した二代目市川団十郎が外郎(ういろう)売りに扮し、小田原にある薬屋の家伝薬「透頂香(とうちんこう)」の宣伝口上を述べたのが世界初だといわれている。

これに遅れて1956年、アメリカ映画「理由なき反抗」でジェームス・ディーンが劇中で頻繁に整髪する場面に使われたくし(ニューウェル・ラバーメイド社製のエース・コーム)の入手先を知りたいという問い合わせがワーナー・ブラザーズに殺到した。これにヒントを得て、映画会社は劇中に企業とタイアップして商品を紹介する仕組みを考え出した。

日本人に馴染みがあるのは、映画『007』シリーズだろう。ジェームス・ボンドが愛用するクルマ「アストンマーチンDB5と、DBS(第21作カジノ・ロワイヤルと第22作慰めの報酬にダニエル・クレイグと共に登場)」、タキシードの「ブリオーニ」、シャンパンの「ボランジェ」などがプロダクト・プレイスメントとして登場し、ジェームス・ボンドがブランドイメージづくりに貢献している。

■ホテルの玄関に高級車が停めてある理由

格式のあるシティホテルやリゾートホテルを訪れると、玄関には必ずといっていいほど高級車が何台も停まっている。普段こうした場所を利用しない人なら、「やはり高級ホテルは停まっているクルマまで違う」と感じることもあるだろう。

だがこうした光景は偶然でなく、ホテル側が訪れた顧客のクルマの中から、高額なクルマをあえて正面玄関に停めさせることがある。自社のイメージを「高級」に演出するために意図的に行っている行為だ。利用者は多様なクルマでホテルに訪れるが、軽自動車や大衆車が玄関に駐車していることはまずない。大部分のクルマはホテルの駐車場に案内され、玄関前に駐車できるのは限られた条件を満たす顧客だけだ。これも5ツ星ホテルがブランドイメージを維持し、高めるための施策だ。

■働く社員によって、企業イメージがつくられる

企業で働く社員によって企業のイメージがつくられる例は、サービス産業に多い。

航空会社のキャビン・アテンダント(CA)はその好例だ。デザイン化された制服に身を包み、身長(※)は日系航空会社ならおよそ158センチ以上、外資系航空会社なら160センチ以上で、平均的体重のスタッフが勤務する。英語など外国語の素養も要求され、りりしく働く女性の姿が航空会社のイメージ形成に大きく貢献している。

別の意味合いで、女性スタッフを売り物にしている企業がフーターズだ。1983年10月にアメリカのフロリダ西海岸にあるクリアウォーターで、レストランの経営経験がない6人のビジネスマンが居心地の良い店ができないかと考えてつくったのが、カジュアルなアメリカンダイニング&スポーツバーのフーターズだ。

チアリーダーをイメージした女性スタッフ「フーターズ・ガール」が人気を呼び、フーターズはアメリカを中心に、28カ国で430店舗以上を展開している。アメリカンフットボールはアメリカ国内で絶大な人気を誇り、多くのファンがいる。ゲームの合間に登場するチアリーダーも注目の的だ。そのチアリーダーにヒントを得て生まれたフーターズ・ガールのユニフォームは、オレンジ色のショートパンツに、“胸の谷間”を強調したTシャツ姿が売り物だ。

そのためフーターズは、別名ブレストラン(胸を意味するBreastとレストランのRestaurantを掛け合わせた造語)とも呼ばれ、女性からはひんしゅくを買うこともある。だがフーターズ・ガールのイメージを替えた人材もいる。シナボンなどを傘下に持つフォーカス・ブランズ(Focus Brands)社のトップを務めるのはカトリナ・“キャット”・コールさんは元フーターズ・ガールだ。彼女はフロリダ州で高校生だった16歳のときからフーターズ・ガールとして働き、その力量を買われてフーターズの世界市場の拡大に貢献。その後シナモンロールを販売するシナボンのCOO(最高執行責任者)に抜擢された後に、現在の地位を得たという経歴を持つ。こうした逸材が登場すると、“胸の谷間”を売り物にした女性だけが働いているわけではないようにも思える。

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■企業イメージで、人材獲得力が決まる

日本の中堅・中小企業では、現在深刻な人手不足に直面しているが、人が集まらない理由に、経営者が気づいていない企業のブランドイメージを低下させる負の因子がある。

人が集まらない企業の典型例としては、

・就業中はビジネススーツの着用が義務付けられている
・幹部から社員までファッションセンスに乏しい
・オフィスは旧来型の事務机を使い、インテリアへの配慮がない
・上司に背中を見せて働くデスクの配置になっている
・社用封筒・レターへッド・名刺など社用ツールがデザイン化されていない
・トイレのしつらえが古く快適でない。男女別に分かれていない

といった特長がある。

こうした旧態依然としたオフィス環境から、その会社が硬直化し、変化対応力に欠ける企業文化を持つことを敏感に感じ取り、入社するのをためらう人材が増えている。この傾向は大企業でも同様だ。

一方、企業規模が小さく、社歴が浅くても、人材が集まる会社がある。その特長は、

・社員がカジュアルウエアで働いている
・オフィスは知的労働生産性を高めるように配慮され、快適なインテリアになっている
・自由な社風であることがオフィス空間から伝わってくる
・制服のある企業では、デザイン化され独自のユニフォームを採用している
・トイレや社員食堂が快適で、独自の工夫がある

といった点だ。

負の因子を持つ企業が、いかにホームページをデザイン化し、魅力のある企業に見せようとしても、会社訪問した段階で若者たちは柔軟性に欠ける企業であることを読み取ってしまう。企業のブランドイメージは顧客に対してはもちろん、人材を集める上でも欠かせない要素になっている。

※日系航空会社は表向きには身長制限を設けていないが、外資系航空会社では実際に『160センチ以上』や『208センチに手が届く』と、募集要項に明記されている場合がある。これはオーバーヘッドコンパートメント(客室内の頭上にある荷物入れ)に手が届く必要があるためだ。

(マーケティングコンサルタント 酒井 光雄)

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