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なぜ「内輪もめ」は長引くのか 相撲とヤクザとジャニーズと - urbansea

 フリーライター鈴木智彦によれば「暴力団抗争は内輪もめの際に限り、長期・激化する」(注1)という。なぜなら組織同士がもめると近隣組織が仲裁にはいるが、内部抗争の場合、よその組が口出しすると内政干渉になるため、仲裁もなく、いつまでも続いてしまう。そして内部抗争の主な理由は跡目争いである。

八角親方の妙技あっての人事抗争劇

 今週の文春トップ記事は「貴乃花が許せない相撲協会“三悪人”」。内部抗争真っ只中の大相撲界の特集である。当時の横綱・日馬富士による貴ノ岩への暴行事件をきっかけに、八角理事長を中心とする日本相撲協会と貴乃花親方の対立が激化。記事では貴乃花が許せないという「三悪人」、八角、尾車親方、白鵬との裏事情を明かす。

 ここでまとめられる、ここ数年の日本相撲協会内の人事抗争劇が面白い。


八角理事長 ©文藝春秋

「北の湖さんが描いていた協会の将来像は、『八角を次期理事長に、一期か二期務めた後、いずれは若い貴乃花に禅譲させる』というもの」。大横綱だった北の湖の理事長体制のもと、ナンバー2の事業部長に八角、ナンバー3の総合企画部長に貴乃花が就く。北の湖は現役時代のガチンコ相撲で貴乃花を評価し、将来の理事長にと帝王教育を施す。

 ところが2015年11月、北の湖は死去。八角が理事長代行となる。

 八角が北の湖から引き継いだ任期の残りは3ヶ月。ここで勝負に出たのか、すぐさま理事長に格上げか、理事長代行続行かの投票に持ち込む。どのみち程なく理事長選があるのだからと、貴乃花は「続行」を主張するが、結果、6-5の1票差で八角は理事長の座を得る。そしてナンバー2の職に「相撲界随一の知略家」尾車親方を指名するのであった。

 見事である。


貴乃花 ©文藝春秋

まるで山本広がやり損ねたことを、八角は一気にやったかのようだ

 よく似たケースに、山口組の跡目争いがある。大親分・田岡一雄の没後、組長代行に就いた山本広と若頭の竹中正久のあいだで跡目争いとなる。山本は多数決に持ち込めば勝てると踏んで組長を決める札入れを目論んだり、「山本広がワンポイントで組長に就いて数年後に、若い竹中に禅譲する」などの懐柔を模索したりするが、すべてハネつけられ、そうこうするうち、竹中の巻き返しにあい、跡目を逃す。


竹中正久 ©文藝春秋

 まるで山本広がやり損ねたことを、八角は一気にやったかのようだ。その後の理事長選では、ふたたび八角と貴乃花が争い、今度は6-2で八角が圧勝する。「代行」が付いたままでは、結果が違ったかもしれない。政治の才能と言える。

メリーvs.飯島の場合

 内部対立をあっさり片付けてしまったのがメリー喜多川だ。

 ジャニーズ事務所内には2015年当時、SMAPのマネージャー・飯島三智とメリー喜多川の娘・ジュリーの派閥があると業界で噂されていた。両者のあいだに確執と後継者争いがあった。それについて文春が質問状を送ったところ、メリー喜多川は取材に応じる(注2)。彼女のインタビューが雑誌に掲載されるのは、およそ30年ぶりのことであった。


メリー喜多川 ©文藝春秋

「私が失礼だと言っているのはね、(文春の)質問状のこと。『小誌の取材では次期社長候補である藤島ジュリー景子が……』って書いてあるけど、当たり前じゃない。(略)次期社長候補って失礼な。次期社長ですよ」と取材開始早々に記者を叱り、その勢いで後継者を明言する。

「もしジュリーと飯島が問題になっているなら、私はジュリーを残します。自分の子だから。飯島は辞めさせます。それしかない」。そして「対立するならSMAPを連れていっても今日から出ていってもらう」とまで言うのであった。

 かくして飯島は退社し、SMAPを犠牲にしつつも、内部対立は終結する。そして彼女のもとに元SMAPの三人が集まる。

 そのひとり、香取慎吾の番組「おじゃMAP!!」について、今週の「テレビ健康診断」で戸部田誠は書く。

《テレビの特性のひとつは、「長い年月を、多くの視聴者と共通体験として共有できること」だ》。そして、SMAPこそアイドル史上初めてその特性を最大限に活かすことが出来た、と。

 それはどういうことか。

 誰しもが事務所をやめれば干されてしまい、テレビから消えると思っていたろう。しかし「おじゃMAP!!」は継続し、香取は今もテレビに出ている。それは戸部田も書くように、香取への「思い入れ」を、多くの視聴者や番組に集まる同業者たちがもっているからだ。
 
 それを思えば、生殺与奪は協会・親方しだいの相撲界は、気の毒に思える。


八角理事長と貴乃花親方が対峙する相撲協会理事会 ©時事通信社

(注1)https://twitter.com/yonakiishi/status/438934472226918400

(注2)週刊文春2015年1月29日号掲載

(urbansea)

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