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マイナンバーには反対するのに、SNSには個人情報を垂れ流し続ける。つくづく日本は変な国だなあ、と - 「賢人論。」第49回岸博幸氏(前編)

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今回の「賢人論。」ゲストは岸博幸氏。テレビ朝日『ビートたけしのTVタックル』や朝の情報番組『グッド!モーニング』、バラエティー番組では日本テレビ『有吉反省会』など数多くのテレビ番組でコメンテーターとして活躍、その親しみやすい人柄も含め人気を博している。元経産省官僚の知見と、鋭い分析眼が冴え渡る前編。現行の年金制度が抱えるリスクと、マイナンバー制度を語る。

取材・文/佐藤 舜(編集部) 撮影/公家勇人

“人口減少”より“高齢化”の方が問題は大きい

みんなの介護 岸さんは現在、慶応大学大学院メディア研究科の教授を務められているそうですが。

 名前からして「メディアの研究?」と思われそうですが、実はあまり関係なくて。みんな自由にいろんなことをやっています。私に関して言えば、安倍政権に関わる延長で、地方創生のもっとより良いありかたを模索したり。例えば今は、産学連携に関わるプロジェクトをつくって成果を出す、ということに取り組んでいます。

「研究」と言うと机の上の勉強をイメージしてしまいますけれども、大学はもっといろんなことを自由にやれる場です。“大学=研究”というのはもはやステレオタイプな考え方なのかもしれません。スタンフォードやMITなどもそうなんですが、研究するだけではなくて、具体的に社会を変革する取り組みをしている大学は多いです。

みんなの介護 幅広い舞台活躍されている岸さんですが、現在の高齢化問題についてはどう見ていますか?

 高齢化問題には、“高齢化”と“人口減少”という2つの側面があります。“高齢化”というのは人口の構成比や平均年齢が変わること、“人口減少”というのは、人口の絶対数が変わることですから、これらは別々の問題として考えるべきだと思います。

そして私は、“人口減少”よりも、“高齢化”によって人口の構成比に変化が起こってしまうことの方が、より大変な事態じゃないだろうか、と考えています。

みんなの介護 と言うと?

 私は、たとえ人口減少がどんどん進んでいってもさほど問題ではないと思っています。「人口1億人を切ったら大変だ」というような論評は多いですが、なぜその「1億人」を基準とするのか、よくわからなくて。だって、たった150年ほど前、明治維新の頃には、日本の人口は3000万人ほどだったんですよ。人口が何人だろうがGDPさえちゃんと伸びていれば社会は維持できるし、これから人口が減っていったとしても調整はわりとしやすいんです。

みんなの介護 一方で、高齢化によって人口の構成比が変わることが問題である、というのはなぜなのでしょうか?

 高齢者が増えることで起きる問題は多々あります。ひとつには当然、介護。ご存知の通り、介護にかかるコストは年々増大しています。単に政府の支出が増える、という意味だけではありません。

在宅介護をする人が増えるということは、その分、その人たちが働きに出る時間が減るということ。つまり、介護に対して労働コストがかかっているんです。高齢化が進むということは、色んな意味で社会に負荷がかかるということなんですよ。


社会保障の自己負担増は避けられない

 今後は、生産年齢人口の割合が減るのを補うため、高齢者が働き始めるようになるでしょうね。その際、高齢者はフルタイムで働くわけではなくて、パートタイムになるわけですが「高齢者の労働参加はこれで十分か?」という議論は当然生まれていくものとみられます。

そもそも現在「生産年齢人口は15歳~64歳」とされていること自体がおかしいと思います。現在は平均的な健康年齢が75歳と言われていますから、その歳までは当たり前に働き続ける社会になっていくべきだと思うんです。働けるのは「64歳まで」とし、それを社会の生産性の尺度にするのは現状と合っていません。

みんなの介護 厚労省発表のデータでは、このまま高齢化が進むと2025年には介護費は現在の2.34倍、医療費は1.54倍にまで膨れ上がるそうです。

 少し残酷かもしれませんけれども、今の社会保障制度ははっきり言って持続不可能だと思います。なぜなら、税金をたくさん投入しないと成り立たない仕組みになってしまっているから。

もっともわかりやすい例は、年金制度です。ざっくりいうと、今の年金制度は「40年間年金を支払うと、65歳から受給できる」という仕組みですよね。では、40年間支払った年金の元を取れるのは何歳だと思いますか?ざっと計算すると、もらい始めてから10年、つまり75歳なんです。

男性の平均寿命は81歳、女性は87歳ですから、大半の高齢者が得をする仕組みになっている。もしそんな保険制度を民間の企業が売り出していたとしたら…即、破綻してしまいますよね。

みんなの介護 平均寿命が伸びているのに、まだ制度に“テコ入れ”がされていません。

 そんな仕組みが現に維持されているのはなぜか?簡単な話で、財政の側からたくさんお金を投入して埋め合わせをしているからです。しかも年金に限らず、他の社会保障制度も同じような仕組みになっている。

保育も同じですよね。0歳児の幼児にかかる保育のコストは、月40~50万円。でも、利用者は、自治体によって違いますが、だいたい月4~5万円で保育園に預けることができます。その差額は当然、財政で補っているわけです。国の財政による補填を前提に利用者のコストを安くする。そんな仕組みを社会保障全体で続けるというのは、借金1000兆円を超えている我が国ではもう無理だよな、と。

みんなの介護 高齢化に伴う利用者の負担増は避けられない、とお考えですか?

 厳しいようですが、社会保障を持続可能にするためには、自己負担を増やすか、社会保険料を高くすることで、財政資金の投入をできるだけ少なくする。それ以外の手はないかな、と私は思っています。

だからと言って「じゃあ貧乏人は社会保障を受ける権利がないのか」というと、決してそんなつもりはなくて。現行の社会保障制度のもうひとつおかしいところは、高齢者のうち収入がある人・資産がある人が、すごく貧しくて困っている人と同じ給付を受けられるということ。

ある程度の収入・資産がある裕福な高齢者に関しては、年金・医療・介護の優遇措置をバッサリ切って、その分を、収入・資産のまったくない貧しい高齢者の方への支援に回すべきだと思うんです。

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