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「日本に自主防衛させるとき」米識者に広がる再軍備支持 「北脅威の今こそ」


akiyoko / Shutterstock.com

 中国と北朝鮮の脅威が高まり、米トランプ大統領が「アメリカ・ファースト」を掲げる中、米識者の間で日本に自主防衛を求める声が高まっているようだ。ここに来て複数のメディアが、「日本に普通の防衛力を持たせるときが来た」(ナショナル・インタレスト誌)といった、日本の“再軍備”を支持する論調を掲載している。

◆自衛隊のままでは陸海空の連携が取れない

 トランプ大統領は先のアジア歴訪を前に、中国に対して、北朝鮮に核・ミサイル開発をやめさせるようもっと圧力をかけなければ、「武士の国」である日本との間に「大きな問題を直接抱えることになるだろう」と警告した。識者らはこれを、日本の再軍備(自衛隊の軍隊化)を認めることをほのめかした発言だと受け止めている。

 これに対し、ワシントン・ポスト紙(WP)元北京支局長のジョン・ポンフレ氏は、「日本人は元来の『武士』なのだろうか? 日出ずる国が再び軍国主義に染まろうとしているのだろうか? いずれの答えもノーだ」と、極端な変化が起きつつあるという見方を牽制する。同氏は、「日本の政治家が軍隊の再生を主張するたびに、軍国主義者、ファシスト、あるいは第二次大戦中の戦争犯罪の否定論者だと激しく批判されてきた」とも言い、日本国内の野党や左派メディアが懸念するような軍国主義の復活などはありえないと主張する。ただし、より現実的な見地から、安全保障上のアメリカへの「病的な依存」は、北東アジア情勢が緊迫度を増す中で早急に改善されるべきだと考えているようだ。

 そのための第一歩は、憲法改正を経て自衛隊という中途半端な存在をワールド・スタンダードな「軍隊」に再構成することだ。ポンフレ氏は特に、自衛隊の陸海空の共同作戦遂行能力の欠如を問題視する。同氏は自衛隊の現状を「今現在の陸海空軍は、ほとんど足並みを揃えて行動することができない。反対にいがみ合う領主のようにふるまっている。彼らは互いに話す無線機すら持っていない」と表現。実際、東日本大震災の際には海上自衛隊と陸上自衛隊の連携が取れなかったために、沿岸に取り残された人々の救助は米軍に任せきりだったとしている。行動に制約の少ない“軍隊”に格上げしなければ、戦時下はおろか災害救助においても能力を発揮できないという見方だ。

◆牙を抜かれた世界第4位の軍隊

 想定される北朝鮮有事の際の自衛隊の役割を分析したUSAトゥデイ紙の記事は、日本の純粋な軍事力は、アメリカ、中国、ロシアに次ぐ世界第4位(クレディ・スイス研究所調べ)だと紹介する。軍事予算規模では第7位で、数字上は立派な軍事大国というわけだ。しかし、ポンフレ氏は、自衛隊は「牙の抜かれた軍隊」だと表現する。世界有数の装備や人員を持ちながら、その曖昧な立ち位置のせいで宝の持ち腐れになっているというわけだ。

 同氏は、日本国民自身の自衛隊への信頼も低いと、次にように書く。「1960年代のゴジラ映画では、自衛隊は常に暴れるゴジラから逃げ回る無能な田舎者のように描かれた。自衛隊は完全志願制だが、そこに志願して参加した者はいまだに見下され、賃金は低い」。日本特有のこうした軍隊観は、日本が平和な地域に位置しているのなら大きな問題にはならないが、「北東アジアは地球上で最も危険な地域の一つだ」と同氏は警告する。

 とはいえ、自衛隊を名実共に世界有数の強力な軍隊に仕立て上げ、完全な自主防衛を目指すのは現実的とは言えないだろう。元レーガン大統領特別補佐官のドン・バンドウ氏は、ナショナル・インタレスト誌のコラムで、政策研究大学院大学・道下徳成教授の「防衛とはリスクヘッジだ。もし、完璧な防衛を目指すということなら、コストは莫大なものとなる」という見解を紹介している。

◆今の日米同盟はアメリカによる“福祉事業”?

 ポンフレ元WP北京支局長は、「アジアの緊張が高まる中、日本は自身のため、そしてアメリカの友人のためにもっとできることをしなければならない」と、日本が密接な日米同盟を維持しながら軍事的役割を拡大することを求める。

 一方、バンドウ氏はさらに強く日本に自主防衛を促している。「日本は、自国の防衛を(アメリカから)引き継ぐべきだ。アメリカも、その核の傘を見直す必要がある。ワシントンは既に東京を守るためにロサンゼルスをリスクにさらしている」と、日本の核武装の可能性にも言及。さらに同氏は、アメリカに責任が偏重している今の日米同盟は本来の「防衛」という目的を見失い、「福祉」になってしまっていると書く。安保条約は「他の国ではなくアメリカを守るためのものでなくてはならない」とし、「アメリカはもう、他の国が自分でできることをしてあげるべきではない」と主張する。

 日本が自主防衛に舵を切れば、「アメリカは日本政府に何をすべきか教える必要がなくなる」と同時に、日本は「アメリカを満足させるためではなく、自国の利益のために防衛と外交の決定を下すことができる」と同氏は書く。そして、北朝鮮と中国の脅威が迫る今こそが“アメリカ離れ”のタイミングだという。こうした主張を、当の我々日本人はどのように受け止めるべきだろうか?

Text by 内村浩介

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