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焦点は、北朝鮮がこの冬を越せるかどうかじゃないか

9月以降、なりを潜めていたミサイル発射実験を再び強行した北朝鮮ですが、北朝鮮から漂着する小型木造船が急増し、11月だけで28件もが確認される事態となっています。

「冬季漁獲戦闘」の号令のもとに、近海しか行けそうにない小型木造船まで繰り出した結果でしょうが、命をかけた食料確保の様相です。板門店で脱北した兵士の胃にはとうもろこしの皮と巨大な寄生虫しかなかったことも合わせると、制裁の結果、北朝鮮は食糧不足に陥っているのかと感じさせます。
焦点:体内から巨大寄生虫、脱北兵士が伝える北朝鮮の食糧事情 :

問題はこの冬でしょう。北朝鮮は国民の生活を犠牲にしても核ミサイル開発を進めていますが、中国の経済制裁も加わり、包囲網が敷かれたなかで、果たして北朝鮮は餓死者をださずに、また極寒を凌ぐ燃料を切らさずに、この厳しい冬が越せるのか、政権の末期が近づいているという見方がでてきてもおかしくはありません。

しかし、その一方で、ミサイル発射実験が韓国からの人道支援物資を受けることが難しくなることがわかっていながら強行したのです。つまりまだまだゆとりがあるということでしょうか。

また、北朝鮮からの木造船の漂着が、11月に突出して増えたために私たちを驚かせたのですが、これが食糧不足による困窮から、相当無理な漁を強行した結果なのかどうかです。その点について、日経記事によると、年間を通してみると、13年に80件、14〜16年は45〜66件で推移、また本年は12月4日時点で64件と、決して今年だけが異常に多いという感じではなさそうです。
北朝鮮船の漂着・漂流、11月28件 荒天で無理な操業  :日本経済新聞 :

この12月に、どれだけ漂着船が増えるのかにもよるのでしょうが、今のところ増加しておらず、たんに10月末の時化で遭難した漁船が1カ月後日本まで流れてきただけのことで、なにか北朝鮮国内で、特別な事態が起こったわけでもないのかもしれません。無人島とはいえ、漁業組合の施設から窃盗を行った容疑のある船は軍籍だということですが、軍部が繰り出す「冬季漁獲戦闘」の大作戦の結果なのでしょう。

北朝鮮の沿岸の漁業権を中国に売った結果、以前は、近海では漁をしていた小さな船が、沖合離れた日本海で漁をするようになったことも影響したとも考えられます。しかし、それもあわせて、北朝鮮が核開発、ミサイル開発を誇示し、米国とチキンゲームを繰り返す姿と、軍人をみすぼらしい木造船で荒波の日本海に向かわせ漁をさせるギャップの大きさが、北朝鮮の現実を物語っているのでしょう。

制裁の包囲網が敷かれ、圧力が強まるなかで、資金も苦しいはずで、いったい北朝鮮がいつまで持つのかが焦点になってきています。この冬を持ちこたえることができるのかという疑問すら浮き上がってきます。しかし、北朝鮮はこれまでも制裁を受ける中でも、なんとかやりくりする方法を培ってきたとすれば、一筋縄ではいかず、安倍総理のおっしゃる、圧力によって相手から対話をひきだすことのハードルも高いということです。

韓国のハンギョレ新聞日本語版に、5月に北朝鮮を訪問した金景一 北京大学教授の特別寄稿記事が載っていましたが、どうも制裁が効いているという感じがしないというものでした。

 平壌は、天気が初冬とは思えないほど寒かったこと以外は、5月末とあまり変わっていなかった。金正恩政権が発足してから5年間、制裁により原油供給が半分に減った。ガソリン価格は2倍も値上がりし、1リッター当たり人民元10ウォンほどになった。しかし、ガソリンで走るバスとタクシー料金は全く値上がりしていなかった。コメ価格も安定を維持していた。まだ経済が動揺する現象は見当たらなかった。北朝鮮の学者でさえ不思議だと言うほどだった。

[寄稿]北朝鮮はどこまで持ち堪えるだろうか : 社説・コラム : ハンギョレ :

米国と韓国は4日から過去最大規模の空軍の合同訓練を実施しており、今日にも、戦略爆撃機B1Bの編隊が朝鮮半島上空で訓練を展開するなど、軍事的圧力も強めてきています。さらに情報戦かもしれませんが、米国内で軍事攻撃の声が高まってきています。

そしてようやく、国連のジェフリー・フェルトマン事務次長が北朝鮮入りし、李外相などと会談を行う予定ですが、どんな成果が得られるのでしょうか。経済包囲網の強化、半島での軍事的圧力強化で、これといった成果もないままに終われば、事実上米国の北朝鮮政策は失敗ということになり、北朝鮮の核保有を認めざるをえなくなります。そして、その影響がアジア全体に広がっていくことだけは避けたいところです。
国連事務次長が北朝鮮を訪問 外相らと協議予定 - BBCニュース

私たちはどうしても願望も加わり、北朝鮮の核ミサイル開発についても、食料やエネルギー事情についても過小評価し、圧力にやがて屈すだろうという楽観主義に立ちたくなりますが、核ミサイルの開発速度を考えれば、ほんとうにそうかを見極めることが重要になってきます。

すでに北朝鮮が日本に向けているミサイルの数は1100基以上もあるとも言われていますが、そういった現実もあり、はたして北朝鮮への強硬姿勢で北朝鮮が屈服し、問題解決ができるかどうかは、おそらくこの冬を北朝鮮が乗り切れるかどうかで判断できるようになってくるのではないでしょうか。

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