記事

低レベルな新聞ほど「力士の品格」を問う

1/2

大相撲の横綱日馬富士が、同じモンゴル出身力士貴ノ岩への暴行を認めて引退届を出した。新聞各紙は社説で「暴力根絶」を訴える。だが、寛容さを失った相撲に魅力はあるのだろうか。ジャーナリストの沙鴎一歩氏は「一般社会の常識が通じない場所だから、相撲は愛されてきた。新聞はそうした観客の本音に向き合っていない」と指摘する――。


毎日新聞の社説(11月30日付)。見出しは「横綱・日馬富士が引退 これで落着にはできない」。

■大相撲の世界に一般社会の常識は通じない

大上段にかぶって建前やきれい事ばかりを論じている。大相撲の横綱日馬富士が貴ノ岩への暴行を認めて引退届を出した事件を書いた新聞各紙の社説のことである。

そもそも相撲とは何なのだろうか。江戸時代、相撲は単なる興業だった。八百長があって当然だし、博徒の資金源にもなっていた。力士同士のけんかもあった。

それがどうだろうか。明治になって国技に祭り上げられ、力士には厳しい相撲道が求められるようになった。暴力などもっての外になった。そして寛容さを失った。

国技になったからといって力自慢同士がぶつかり合う相撲で毎回、真剣勝負を繰り返していたら大ケガが絶えない。だからいまも適当な駆け引きが必要なのである。これが大相撲の世界に一般社会の常識が通じないゆえんである。

不謹慎だと思われるかもしれないが、酒の席での多少の不祥事もよしとする寛容さがなくてはならない。相撲の歴史について知識のある人なら分かるはずだ。

社説でも「興業にすぎないからお堅いことは言わないで」と主張してもいいのではないか。

■「引退は当然の流れ」と毎日

まずは11月30日付の毎日新聞の社説。見出しは「これで落着にはできない」だ。

「大相撲の横綱・日馬富士関が現役引退した。貴ノ岩関への暴行で『横綱の名に傷をつけた』と決断した」と書き出し、「横綱審議委員会は『厳しい処分が必要』との見解を示しており、日本相撲協会でも解雇が想定される状況になっていた。全力士に範を示すべき横綱の暴行であり、引退は当然の流れだろう」と暴力を真っ向から否定し、横綱日馬富士の引退を当たり前だと主張する。

次に「ただ、きのうの引退届提出にはそれぞれの思惑が透けて見える」と書き、さらに追及する姿勢を示す。

毎日社説はどう追及するつもりなのか。そう考えながら読み進むと、こんな厳しい指摘が顔を出す。

■「引退だけでこの問題を決着させてはならない」

「(日本相撲)協会にとっては、現役横綱の解雇となれば、前代未聞で大相撲史に大きな汚点を残す。番付編成会議に引退届を出せば不祥事を起こした横綱の名を次の初場所の番付表に出さずに済む。横綱にとっても、解雇では支払われない退職金も引退なら受け取れる」

なるほど、こうした見方もあるのか。思わず納得してしまうから恐ろしい。

この次がさらに手厳しい。

「しかし、引退だけでこの問題を決着させてはならない」

初めに指摘した見出しはここから取ったのだ。

「日馬富士関は引退の記者会見で『礼儀がなっていないことを教えるのは先輩の義務』と弁解した。暴力に至ったのもやむなし、とも受け取れる言葉だ」

国技に祭り上げられ、力士に厳しい相撲道が求められる以上、弁解も許されないというのだ。

毎日社説は徹底して日馬富士を攻めまくる。

さらに日本相撲協会に対しても「『力士のいざこざは部屋同士で』と考えるなら暴力に対する認識が甘い」と批判する。

■日経も「引退で幕引きするな」

日経新聞も毎日社説と同じ30日付紙面で社説のテーマに取り上げ、前半でこう書く。

「これ以上、横綱として事件の渦中にあることは、最高位の名を汚すばかりでなく、相撲そのものへの信頼も失われかねない。自ら身を引いた決断は妥当であろう」
「しかし、これで事態の幕引きをすることは許されない」

引退を「妥当」と書き、「引退で終わらせるな」と主張するところは、毎日と全く同じである。

これだから社説は建前やきれい事を並び立てると批判したくなるのだ。もっと独自の主張や訴え、書きぶりはできないのか。

■「最後のチャンス」「肝に銘じ」「暴力根絶」……

日経社説はこれまでの相撲界の暴力事件を挙げ、「大相撲では、2007年に親方らが弟子を暴行して死なせたとして有罪判決を受け、10年には横綱、朝青龍が酔って男性を殴るなど事件が続いた」と書き、「協会は研修会などを開催し、力による手荒い指導を改めるよう親方らを啓発するとともに、力士らの意識も変えようと努めてきたはずだった」と言及する。

そのうえで「ただ、今回、他の力士の模範となるべき横綱の起こした不祥事をみれば、再発防止策の効果はなかったと言わざるをえない」と指摘する。

毎日社説同様、手厳しい書き方である。寛容さなど微塵もない。

最後に日経社説はこう主張する。

「今年、大相撲は年6場所、計90日間の開催が、すべて満員となった。1996年以来という」
「ベテラン勢の奮闘や若手の台頭で、連日充実した取組が続き、女性や少年らファンの層も厚くなった。伝統ある競技のすそ野を広げ、発展させるために、相撲協会は最後のチャンスと肝に銘じ、暴力根絶へ立ち向かってほしい」

「最後のチャンス」「肝に銘じ」「暴力根絶」と使い古された言い回しである。これだから「社説はつまらない」と批判されるのだ。

あわせて読みたい

「大相撲」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    小室哲哉を叩く東国原氏に苦言

    中村ゆきつぐ

  2. 2

    よしのり氏「文春を糾弾すべき」

    小林よしのり

  3. 3

    文春の小室報道は醜い「リンチ」

    片岡 英彦

  4. 4

    反基地は特定勢力? 政府の見解は

    和田政宗

  5. 5

    小室引退 実に後味の悪い文春砲

    渡邉裕二

  6. 6

    グラドルが語る放送事故の瞬間

    NEWSポストセブン

  7. 7

    小室引退に坂上忍が辛口コメント

    NEWSポストセブン

  8. 8

    ラーメン二郎に影響? もやし危機

    中田宏

  9. 9

    千畝読めない? 疑惑の首相を擁護

    文春オンライン

  10. 10

    寝落ち必至 睡眠ビジネスが拡大

    AbemaTIMES

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。