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大相撲にみる「ウィンブルドン現象」-「グローバル化」と伝統の「アイデンティティ」 - 土堤内 昭雄

イギリス・ウィンブルドンで開催されるテニスの世界4大大会のひとつ全英オープンは、世界中から強豪選手が集まる一方、地元英国の選手の活躍はあまり芳しくない。グローバル化が進展した結果、外国勢ばかりが活躍する事態は「ウィンブルドン現象」と呼ばれる。経済界においても自由競争の結果、金融の中心地ロンドン・シティでは金融機関が外資に買収されるなど、市場は活性化するものの地元の産業の衰退が起こり、英国の金融市場や米国の自動車産業などでもウィンブルドン化が進んでいる。

日本のスポーツ界では国技といわれる大相撲や柔道などで同じ現象が見られる。大相撲はモンゴル出身力士が上位陣を席巻し、2016年1月場所の琴奨菊の幕内優勝は日本出身力士としては10年ぶりの快挙だった。日本出身力士の横綱誕生は、2017年3月場所の稀勢の里まで19年間途絶えていた。現在の横綱4人のうち3人はモンゴル出身力士で*、その代表格が優勝回数や通算勝利数など歴代1位となる多くの大記録を打ち立てている横綱・白鵬だ。

今年11月、大相撲九州場所が開催されている福岡国際センターで、前代未聞の出来事が起こった。横綱・白鵬が関脇・嘉風戦で土俵を割ったあとに、自ら「物言い」をつけたのだ。大相撲では「物言い」は審判と控え力士以外が申し出ることはできない規則なのだが、白鵬は土俵の外からアピールを続け、土俵に戻ろうとしなかった。NHKテレビのベテランアナウンサーは、『あってはならないことです』と実況中継し、日本相撲協会の八角理事長や審判長は苦言を呈し、白鵬は翌日謝罪に追い込まれた。

大相撲が「相撲道」という精神性を重んじるひとつの神事だとすれば、白鵬の態度は『あってはならないこと』だろう。しかし、ウィンブルドン化する大相撲で、多くの外国人力士が大相撲をひとつの格闘技と思うなら白鵬の行動は理解できなくはない。横綱・日馬富士の暴行事件で揺れる九州場所で、前人未到の40回目の優勝を果たした横綱・白鵬の功績は多大である一方、有力な日本人力士が不在のなかで、日本相撲協会は「相撲道」の伝統をどう守ってゆくのかが問われている。

同じ日本の国技である柔道は1964年にオリンピック競技として開催され、今ではグローバルな人気スポーツになったが、その間にルール変更もあり、伝統の柔道は「JUDO」に変わったように思える。大相撲もグローバルな競技になれば、力士の「まげ」や「まわし」も廃止、土俵に女性があがれないことも男女差別と批判されるかもしれない。「グローバル化」が進展し、伝統の「アイデンティティ」をどう守るのか、『変えるべきものは変え、守るべきものは守る』という難しい選択の時代を迎えている。

* 3人のモンゴル出身横綱のひとり日馬富士は、11月29日、暴行問題の責任を取って日本相撲協会に引退届を提出し受理された。

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