記事

世耕経産大臣は、日本の製造業の‟破壊者”か

1/2

10月8日の、神戸製鋼所の記者会見での公表以降、日本を代表するメーカーで次々と明らかになっている「データ改ざん問題」は、殆どが、安全性や実質的な品質には影響のない「形式上の不正」であり、納入先の顧客に説明し、安全性等が確認されれば、本来、公表する必要がない事柄である。

それらの多くは、顧客との契約で、製品の品質・安全上必要な水準を上回って設定されている規格・仕様について、メーカーの製造過程で、その余裕を持たせた規格・仕様から若干下回る「不適合品」が発生した場合に、データを書き替えて「適合品」であるように表示して出荷納品したという問題だと考えられる。

このような「データ改ざん」は、日本の素材メーカー、部品メーカーの多くに潜在化している「カビ型不正」の問題であり、それらの殆どは、実質的な品質の問題や安全性とは無関係の「形式上の不正」に過ぎず、顧客に対して「データ書き替え」の事実と、真実のデータについて十分な情報を提供し、書き替えに至った理由や経過を正しく説明して品質への影響や安全性の確認を行うことができれば、もともと大きな問題にはなり得ない。

そのことを、私は【日産、神戸製鋼…大企業の不祥事を読み解く(前編)】【日産、神戸製鋼…大企業の不祥事を読み解く(後編)】などで指摘したほか、メディアの取材等でも繰り返し強調してきた。

ところが、神戸製鋼所がこの問題を3連休の中日に記者会見で公表し、「品質不正で信頼失墜」などと大きく報道されて以降、三菱マテリアル、東レなど日本を代表するメーカーが社長記者会見を開いて子会社の「データ改ざん」の問題を公表し、その都度大々的に報道され、「日本の製造業の品質が危ない」などと騒がれる事態になっている。

もちろん、製品の納入先の顧客の了解を得ることなく、真実のデータが書き替えられた事実があったことは間違いないのであり、その中に、真実のデータを前提にすると品質上・安全上問題があるという事例が全く存在しないと断言することはできない。しかし、問題の大部分は、上記のような背景・原因で発生した「形式上の不正」に過ぎないと考えられることからすると、現在起きている騒ぎは明らかに異常である。

なぜ、このような馬鹿げた状況に至ってしまったのか。その原因が、世耕弘成大臣をトップとする経済産業省側の対応にあったことが次第に明らかになりつつある。

日経新聞の「迫真」に連載されている「神鋼 地に堕ちた信頼 1」(11月28日朝刊)では、神戸製鋼所が改ざん問題の公表に至った経過について以下のように書かれている。

現場からの不正問題の報告を受けて、神鋼は9月中旬から顧客への説明を始めた。「これから気をつけてください」梅原に集まってくる顧客の反応は悪くなかった。アルミ・銅事業の売上高のうち不正の対象は約4%(年約120億円)。業績への影響もほとんどないように思えた。

だが、顧客を通じて監督官庁の経済産業省など霞が関に情報があがり始めると状況は一変する。あくまでも民間同士の契約であり、この時点で法令違反は未確認。「国に関与されることはない」と高をくくっていた。

ところが「味方」と思っていた経産省はつれなかった。日産の不正検査問題もあり、問題を早期に解決しないと「日本の製造業の信頼が揺らぐ」との思いがあった。「できるだけ早い段階で会見で公表すべきだ」。9月28日に問題を把握すると神鋼に終始圧力をかけ続けた。10月に入ると顧客を通じて不正の事実が取引先に広がった。追い込まれた神鋼はついに発表を決断する。

つまり、神戸製鋼側が、8月末にアルミ・銅製品についてデータ改ざんがあったことを把握し、顧客への説明を行っている最中に、顧客側からその情報を得た経産省が、「できるだけ早く会見で公表すべき」と神戸製鋼に圧力をかけ続けた結果、同社が記者会見で公表するに至ったという経過だったようだ。この公表の時点で、神戸製鋼は、まだ顧客への説明の途中だった。

3連休の中日である日曜日の午後に、突如記者会見を開いたことは、マスコミ側に、“ただちに対応が必要な緊急事態”との認識を与えるもので、公表のタイミングとしては最悪だった。しかも、その場で自動車や新幹線、旅客機など、日常生活になじみのある製品の多くに使用されていることを明らかにし、その安全性については明言できなかったために、社会的関心が一気に高まり、マスコミの取り上げ方も大きくなった。それによって、神戸製鋼という企業の信頼は大きく傷つき、製品の安全性が確認されても、事態を収束させることが困難な状況になっていった。

その後、データ改ざん問題が、三菱マテリアル、東レと、他のメーカーに波及するに至った後、世耕氏は、大臣会見で、以下のような発言を行っている。

産業界においては、自らの会社でこういった類似の事案がないかどうかを確認する動きがあると承知していますが、これはもう当然のことだと思います。そして、そういう中で、万一類似の事案が確認をされた場合には、顧客対応などとは別に速やかに社会に対して公表をして、社会からの信頼回復に全力を注ぐことを期待したいと思います。

「顧客対応などとは別に速やかに社会に対して公表」を求めるという発言からは、「データ改ざん」の基本的構図も、問題の性格も、全く理解していないとしか思えない。経産大臣がこのような発言を行うことで、この問題をめぐる混乱を助長し、日本の製造業に対する国際的信頼を失墜させかねないことには気づいていないようだ。

あわせて読みたい

「企業不祥事」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    宮司殺害 犯行時の異様な言葉

    NEWSポストセブン

  2. 2

    大統領夫人を嫌がるトランプ氏妻

    PRESIDENT Online

  3. 3

    年齢で正社員募集する日本は異常

    城繁幸

  4. 4

    漫画で分かるイスラム女性の心情

    紙屋高雪

  5. 5

    NHK訴訟 見直せなかった公共放送

    企業法務戦士(id:FJneo1994)

  6. 6

    超高額イージス導入で国防は弱化

    清谷信一

  7. 7

    中東 トランプ氏の賭けは勝利か

    野口雅昭

  8. 8

    ツリー炎上 嘘を重ねるネット民

    赤木智弘

  9. 9

    M-1ルール変更も残る一番手問題

    いいんちょ

  10. 10

    食べログは禁煙店の加熱式可外せ

    NATROM

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。