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"利益の半分は税金"ビットコインの注意点

今春から「ビットコイン」など仮想通貨の相場が急騰している。ビットコインはこの1年で9倍に値上がりした。「億単位の利益を得た」といった事例も報じられているが、そうなると考えなくてはならないのが「税金」である。ビットコインで利益を得た場合、税金はどうなるのか。今年9月、国税庁が公表した見解とは――。

■国税庁の判断は税制上最も不利な「雑所得」

国税庁のホームページでは、よくある税の質問に対する一般的な回答を「タックスアンサー」として公開している。このタックスアンサーにおいて、国税庁は2017年9月、「ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係」として以下の内容を掲示した。

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No.1524 ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係

[平成29年4月1日現在法令等]

ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。
このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。(所法27、35、36)

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タックスアンサーによれば、この損益が、「ビットコインを使用することにより生じる損益」であれば、「雑所得」として取り扱われる。ここでいう「使用」が何を指すのかは具体的に明らかにされていないが、円に換算したときだけでなく、ビットコインを直接使用して物品等を購入したり、新たに仮想通貨を買い直したりした場合にも、その時点で雑所得と認識されるものと考えられる。


ビットコインは仮想通貨であり、固定された価値があるものではない。このため円や外貨に換算したときの価値は日々変動している。例えば、ビットコインが1単位あたり100円だったものが、1カ月後に200円に価値が上がっていれば、その差額だけ「損益」が生じているということになる。

つまり、2017年中にビットコインを換金したり、ビットコインを用いて何かを購入したりした場合には、2017年(平成29年)分の所得税として、2018年3月15日までに確定申告を済ませ、納税しなくてはならない。

ビットコインのほかにも、仮想通貨として取引可能な商品はあるが、おそらくこの取り扱いに準じることになるだろう。

■「雑所得」が不利だと考える3つの理由

ここで認識しておきたいのが、「所得の種類によって所得税の計算方法が異なる」という点だ。例えば、給料として得た金額と、個人事業で得たものは、同じ金額であっても経費として認められる範囲などが異なり、結果として税金の額が変わってくる。

今回ビットコインに関して国税庁が出した「雑所得」という結論は、おそらく投資家にとっては、もっとも厳しい判断になったと考えられる。

所得の種類には、事業所得、給与所得など、全部で10種類ある。雑所得はそのほかの9種類のいずれにも当たらない所得をいう。たとえば公的年金や、作家以外の人が受ける印税、サラリーマンがインターネットオークションで得た副業収入などが該当する。

この雑所得を私が「もっとも厳しい判断」と考える理由は、以下の3点にある。

(1)他の所得と損益通算できない
(2)損失を繰越控除できない
(3)累進税率が適用される

それぞれ説明しよう。まず(1)について。損益通算とは、ある所得で発生した損失を、他の所得から差し引くことである。例えば、個人事業主の「事業所得」は損益通算が認められているため、事業所得で赤字が出た場合、ほかに給与所得があれば、給与所得から事業所得の赤字を差し引いて、所得税を計算することができるのだ。

ところが雑所得の場合は、損益通算が認められない。いくらビットコインの取引で赤字が出たとしても、他の所得区分から差し引くことはできない。ただし年金や副業の所得など、他に雑所得となるものがあれば合算することができる。

次に(2)の繰越控除について。現在、繰越控除が認められているものとして、上場株式等を売却したときの譲渡損失がある。その年に出た譲渡損失を翌年以降3年間繰り越して、利益が出たタイミングで合算することができるのだ。


一方、繰越控除が認められないビットコイン取引では、例えば、2017年分で100万円の赤字、18年分に200万円が出た場合、100万円の損失は何ら考慮されず、200万円の利益に対して所得税が課せられることになる。

(3)で挙げた税率についても、ビットコインと株式の取引では取り扱いが全く異なる。例えば、上場株式等を譲渡した場合、雑所得ではなく、分離譲渡所得という区分になり、利益に対して一律20%(所得税15%、住民税5%)が課せられる。この税率は株取引でいくら儲かったとしても変わらない。

ところがビットコインの取引は雑所得であり、「総合課税」という方式で税率が決まる。総合課税方式になると、雑所得以外の所得もすべて合計したうえで、所得税の税率5~45%(その他に住民税もかかる)が適用される。所得が増えるにつれ税率が上昇していくことになり、住民税を合わせると、利益の半分以上が税金で取られるということになる。


総合課税の税率の下限が5%であるため、一見すると、有利な税率になると思われるかもしれないが、給料など、すべての収入を合算した合計所得金額が330万円を超えると、税率は20%となり、あとは増え続けていく。上場株式等の取引と比較すると、不利な税率になるケースが大半だろう。

■ビットコインの税制は今後変わる可能性も

このように、所得税の扱いとしては不利な面が否めないビットコイン。しかし、今後扱いが変わる可能性もないわけではない。過去にも、税制改正により取り扱いが大きく変わる事例はあった。

例えば、FX取引は、2011年(平成23年)分の所得税までは、一部の商品を除いて雑所得として、総合課税方式により課税されていた。ところが平成24年分以降は、分離課税方式が適用されることとなり、一律20%の税率が適用されるようになったのだ。もともと給料がなく税率が低い専業主婦などは別として、多くの人にとっては、FX取引に伴う税率は下がったことになる。しかも、損失が発生した場合は3年間の繰越控除も認められることになり、所得税の扱いとしては、かなり有利となった。

また、時には裁判の結果を受けて税制の扱いが整理されるということもある。過去には、競馬の馬券の払戻金について、雑所得とするか一時所得とするかという訴訟が納税者と国の間で起きたことがある。

この訴訟は最高裁まで進んだ結果、「一時所得ではなく、雑所得にあたる場合がある」と判示され、その結果を受けて国税庁では課税上の取り扱いを定めた通達を改正することとなった。

ビットコインについても、ひとまず国税庁からタックスアンサーによる見解が示されたものの、取り扱いが定まったとは言い難い。今後、法律や通達により取り扱いが明らかにされると考えられ、さらに、仮想通貨を取り巻く状況や、裁判の結果などを受けて、取り扱いが変わる可能性は十分にある。

2017年も終わりが見え始め、年が明けると所得税の申告期限が近づいてくる。ビットコインの取引をしている人は、今のうちに所得税や住民税を見積もっておいたほうがいいだろう。

(小林 義崇)

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