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貿易統計に見る我が国の輸出は順調に拡大中!

本日、財務省から10月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+14.0%増の6兆6931億円、輸入額も+18.9%増の6兆4077億円、差引き貿易収支は+2854億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の貿易収支、5カ月連続黒字 2854億円、円安で黒字幅縮小

財務省が20日発表した10月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2854億円の黒字だった。貿易黒字は5カ月連続で、QUICKがまとめた市場予想の中心値(3300億円の黒字)は下回った。自動車など輸出は好調だったものの円安によって原油などの輸入額も押し上げられ、黒字幅は前年同月(4812億円の黒字)に比べ縮小した。

輸出額は前年同月比14.0%増の6兆6931億円と、11カ月連続で増加した。オーストラリア向けの自動車や中国向けの液晶デバイス製造装置、中国向けのプラスチック原料などが増加に寄与した。

地域別に見ると、対米国が7.1%増と9カ月連続で前年実績を上回った。自動車は落ち込んだが、航空機エンジン部品や掘削機などが補った。対欧州連合(EU)は15.8%増だった。対中国(26.0%増)が過去最高を更新するなど対アジアも18.9%増と好調を維持した。

一方、輸入額は18.9%増の6兆4077億円だった。10カ月連続で増加し、伸び率も2014年1月(25.1%増)に次ぐ高い水準だった。原油などの資源が値上がりしたうえ、為替も前年に比べ1割ほど円安方向に進み円建て価格が押し上げられた。米国からは液化プロパンの輸入が増えた。中国からは衣類やスマートフォン(スマホ)が伸び8カ月連続の貿易赤字だった。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

引用した記事にもある通り、季節調整していないベースの貿易収支は今年2017年6月から5か月連続で黒字を記録していますが、トレンドを見るための季節調整済みの系列だと2015年11月から24か月、すなわち、2年間貿易黒字が続いています。この間、我が国の貿易収支をスィングさせてきたのは国際商品市況における石油価格です。

短期では石油需要は価格にそう弾力的であるとも思えず、国際商品市況における価格動向とともに為替水準によっても輸入額が変動することになります。現時点では、石油をはじめとする国際商品市況は、新興国、特に中国の景気回復を受けてジワジワと値を戻しており、為替もその昔からすれば円安水準となっています。ですから、石油価格と為替から輸入額は短期には上振れして、貿易黒字が縮小する可能性が十分ありますが、10月統計が明らかとなった現時点では、それ以上に、世界経済の回復・拡大を受けて我が国からの輸出が好調に推移している、と見るべきです。

ただし、季節調整していない原系列の統計で見ている限り、先月も同じことを書いた記憶がありますが、半年近く連続しての貿易黒字はメディア受けする一方で、昨年2016年の年央から後半にかけて、すなわち、6月の英国国民投票によるBREXITと11月の米国大統領選挙のころには、経済外要因ながら、ポピュリズムの動向に伴って世界経済の先行き不透明感が増していた時期ですから、最近の統計にはその反動が反映されている可能性も否定できません。加えて、北朝鮮情勢次第では地政学的なリスクの顕在化も懸念されます。

輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。

ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。9月統計の輸出は米国のハリケーンという特殊事情がありましたが、10月統計もその反動という要素は否定できません。ただ、さすがに米国の自動車販売がかなり急ピッチで拡大したことから、さらなる自動車輸出の伸びを期待するのは難しそうな気がします。ここも、お話しする人のポジション次第で、自動車輸出は伸び悩む、ともいえますし、伸びは鈍化しているものの、自動車輸出は高水準にある、ともいえます。

ただ、自動車に限らず、先進国・新興国ともに世界経済は順調に回復・拡大しており、我が国の輸出も追い風に乗って緩やかな拡大を続ける方向にあると考えるべきです。

最後に、貿易だけでなく幅広く米国政策について考えると、実は、トランプ政権の通商政策が我が国の貿易のリスクになると私は考えていたんですが、そうではなく、貿易だけでなく幅広い観点からは、米国トランプ政権のエネルギー・環境政策こそが世界の大きなリスクになる可能性があると考えを改めました。私の専門外ながら、少し考えを巡らせたいと思っています。

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