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弾道ミサイルと原発:(2)北朝鮮の弾道ミサイルは原発を破壊できる?

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弾道ミサイルと原発:(1)北朝鮮の弾道ミサイルは原発を狙い撃ちできる?』の続きです。

◇ ◇ ◇

我が国では、「弾道ミサイルによる原子炉への攻撃」は想定されていません*1。日本以外の原発保有国でも同じです。これは、弾道ミサイル(通常弾頭)の命中精度(CEP)を考慮すれば当然なことで、攻撃の発生及びその被害の発生確率があまりに低いからです。弾道ミサイル攻撃よりもはるかに蓋然性が高いであろう航空機(固定翼機および回転翼機)の原子力施設への落下でさえ年間100万分の1以下の確率なのです。

前稿で、ノドンが高浜原発1号炉建屋に直撃する確率は約0.6%と算出しました。加えて、北朝鮮が弾道ミサイルで原発を攻撃する意欲が旺盛でないことにも触れました。とはいえ、「もしも」「仮に」「万が一」北朝鮮がノドンを我が国の原子力施設に向かって発射し、不幸にも命中したらどうなるのでしょうか?

ノドンの速度や運動エネルギーは?

準中距離弾道ミサイル(MRBM)「ノドン」は、全長16m、直径1.35m、1段式液体燃料ロケットです。

Nodong by JamesMartinCNS on Sketchfab

上図で(1)の部分が「弾頭」で、そこに高性能爆薬や化学兵器や核兵器が搭載され、標的に撃ち込まれます。そこから下はブースターで、推進剤を使い切った後は分離されます。ですから、こちらに飛来してくるのはこの弾頭部。重量は約700〜1,000kgと推定されています。

trajectory_met
(北朝鮮から東京までの弾道ミサイルの軌道イメージ)

まず、MRBMであるノドンは大気圏へ再突入する際(高度約70km)に秒速約3,300m(マッハ9.7)に達しますが、その後、大気の抵抗を受けて減速を始めます。

ノドン速度
(ミサイル入門教室『2 Nodong Missile弾道 北朝鮮の弾道ミサイルに備えて 弾道の特性』より)

弾着1.5秒前の弾頭の速度は、
  • ブースターを分離してない場合、秒速約420m(マッハ1.2)
  • ブースターを分離している場合、秒速約1,900m(マッハ5.5)
と算出されています*2。揚力の問題で、ブースターを分離した方が速度は速くなります。ブースターの有無で[弾頭 a] と[弾頭 b]とすると、 運動エネルギーはそれぞれTNT換算で、
  • [弾頭 a] 0.02トン
  • [弾頭 b] 0.43トン
となります。

原子炉を囲む“壁”

次に、標的となる原発建屋は、一般的に厚さ約20㎝の原子炉圧力容器(鋼鉄製)、約3㎝の原子炉格納容器(鋼鉄製)、約1mの原子炉建屋外部遮へい壁(鉄筋コンクリート製) でできています。

PWR_model
(関西電力HPより)

ノドンが原子炉へ致命的な損傷を与えるには、一番外の厚さ約1mの鉄筋コンクリートをまずは破壊しなければなりません。

MRBM級の速度を持つ通常弾頭による鉄筋コンクリート壁への攻撃シミュレーションなどは無い*3ので、航空機のコンクリートへの衝突実験などからノドン弾頭の破壊力と原発建屋の防御力の手がかりを得てみたいと思います。

航空機による衝突シミュレーション


  F-4vsコンクリート壁
*4
航空機や小規模の飛翔体をコンクリートへ衝突させる研究はいくつか見つけられます。たとえば有名なのは、F-4Dファントム戦闘機を鉄筋コンクリートにぶつける実験です。

飛翔体総重量:19トン
衝突速度:秒速215m
衝突時の運動エネルギー:0.11トン(TNT換算)

結果は、コンクリート壁がF-4をこっぱみじんにしています。壁には最大で60mmのへこみができただけなので、コンクリートの圧勝です。しかし、当該実験での壁厚は3.66m(鉄筋比0.2%)ですので、原発建屋の壁厚1mとは単純に比べられません。

  B747vsコンクリート壁 その1*5
飛翔体総重量:340トン
衝突速度:秒速約28m、42m、56m、83m(時速100km、150km、200km、300km)
標的:壁厚3mのコンクリート壁(鉄筋比0.8%)へ水平衝突
衝突時の運動エネルギー:0.03、0.07、0.12、0.28トン(TNT換算)

当該実験では4種類の異なる速度が試され、いずれの速度においてもコンクリート壁を貫通したものはありません。

この実験も壁厚が3mであることから原発建屋との比較は難しいのですが、F-4に比べて圧倒的に大きな質量の割にボーイング747がもたらす運動エネルギーが小さい点は興味深いですね。“飛翔体の衝突による柱衝突面の損傷量は、飛翔体の運動量が強く影響する”*6という知見のとおりの結果になっています。衝突時の速度が速ければ速いほど、衝撃は大きくなるというわけです。音速を超える弾道ミサイルの運動エネルギーが大きいのもうなづけます。

  B747vsコンクリート壁 その2*7
飛翔体総重量:340トン(燃料100トン、エンジン16トンを含む)
衝突速度:秒速約83m(時速300km)
衝突時の運動エネルギー:0.28トン(TNT換算)

当該実験は、厚さと鉄筋の有無によって異なる5種類のコンクリート壁及び剛壁からなる合計6種類が標的となっています。

原発建屋と同じ厚さ1m(鉄筋比0.8%)の標的も用意されています。その結果、B747がコンクリート壁を貫通しています。

wm03
(伊藤忠テクノソリューションズ、ジャンボ旅客機のコンクリート壁への衝突解析より)

飛翔体の速度や質量がノドンとは異なるので単純比較はできませんが、運動エネルギーを基準に考えると、少なくとも「厚さ1mのコンクリート壁を[弾頭 b]は貫通する」と推定できそうです。

なお、当該実験からは、“局所的破壊現象では、鉄筋の効果はあまり顕著ではなく、コンクリートの厚さの効果が卓越している”との結果が得られています。確かに、同じ運動エネルギーのB747は、3mのコンクリート壁を貫けませんでした*8

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