【横綱にどんな処分が下されるのか(写真:共同通信社)】
もはや事件は、「不良横綱の狼藉」では済まない。日馬富士の刑事処分や“強制引退”で幕引きするには、事件の波紋が大きくなりすぎた。
「当人同士ではなく“親”同士の恨みが籠もっている。あの屈辱を晴らすためなら、貴乃花はどんなことでもする……」
相撲協会幹部は、青ざめた顔で呟いた。過去にも、双羽黒や朝青龍が起こした「横綱の暴行問題」は相撲協会の屋台骨を揺るがした。しかし今回の“揺れ”はその比ではない。角界の暗部をあぶり出した騒動は、これから本格化する──。
◆記者は「質問禁止」
たしかに、“情報統制”は九州場所初日の1週間前から始まっていた──福岡県田川市の石炭記念公園で11月5日に開かれた祭りに、貴乃花部屋の面々が集まっていた。
地元イベント「田川チビッコ相撲大会」には、貴乃花親方や21歳の部屋頭・貴景勝(前頭1)をはじめ、部屋の関係者がこぞって参加。ただ、そこには前頭8枚目・貴ノ岩の姿だけがなかった。
現地では記者に対し、部屋の力士たちへの個別取材禁止が伝えられた。場所前の親睦イベントであるにもかかわらずだ。
まさしくこの日から、貴ノ岩は福岡市内の病院に極秘入院していた。下された診断は〈脳震盪、左前頭部裂傷、右外耳道炎、右中頭蓋底骨折、髄液漏の疑いで全治2週間〉。貴乃花部屋では箝口令が敷かれ、その事実はひたすらに伏せられた。
「今回の事件は、『現役横綱による暴行』という一大事にもかからず、発生から発覚までの経緯は策謀が巡らされた形跡だらけで、改めて角界の闇の深さが浮き彫りになった」(協会関係者)
モンゴル出身の横綱・日馬富士が同郷の後輩力士・貴ノ岩を殴打する事件が、巡業先の鳥取で起きたのは10月25日の夜。事件が表沙汰になったのは、九州場所3日目の11月14日朝だ。同日のスポニチが一面で暴行事件を“スクープ”。〈ビール瓶で思い切り殴打した〉という衝撃的な内容の記事で、日馬富士は謝罪、休場に追い込まれた。
事件から発覚までの「空白の20日間」──実は、その間に、水面下の激しい暗闘が繰り広げられていた。