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稲村公望 郵政民営化は世界中で失敗した

小泉総理(当時)は2005年、郵政民営化法案が参議院で否決されたことを不服として衆議院を解散。亀井静香氏にホリエモン、小林興起氏に小池百合子、自見庄三郎氏に西川京子、等と刺客を立てた劇場選挙で圧勝した。

 筆者は、衆議院で民営化法案が再可決された日に、郵政公社を退任してニューヨークのジャパンソサエティーのシンポジウムに出席していた。

 民営化反対論をぶった直後、現地の証券会社アナリストが近寄ってきて、「貴方がミスター稲村か、貴方が反対するから儲からない。十年と言わず早く株を売れ。とっとと消え失せろ」と悪態をついてきた。私はホテルに帰ってドアの施錠を確かめた。

 2007年10月に日本郵政公社、国営公社が分割民営化され、日本郵政など五社の株式会社が発足した。郵政民営化は、郵便貯金や簡易保険という世界最大規模の国民資産を、「官から民へ」有効に使うというお題目だったが、実際は資産を外国に投機的に持ち出し、利益を海外移転させる目論見だったと思う。

 政権交代という神風が吹いて、公明党の主導する三党合意で売却路線に歯止めがかかったのは僥倖であった。小泉政権の竹中平蔵郵政民営化担当大臣(当時)の主張に従って、早々と株を売却して国民資産を海外に持ち出していれば、直後に発生したリーマンショックを回避することができず、日本破壊の国損を出していた筈だ。

 竹中元担当大臣は、「郵便事業の低迷はスマホやインターネットの普及で市場縮小があった」と弁明するが、目先の利益を追いかけただけの経営が行われ、時代を進取する設備投資を行わなかったこと等が原因ではないのか。

 一昨年、豪州の物流会社を買収して、2年も経たない今年3月に4000億という国損を計上した。筆者は菊池英博氏と連名で経営者の責任を追及するために、辞任勧告書を提出したがなしのつぶてだった。

 日本郵政公社の時代には、高利益を出していた優良国営事業を、なんと損益赤字の劣悪事業にしてしまった。郵政民営化路線が破綻した証左だ。日本郵政の経営形態の見直しを急ぐべきだ。

 「郵便貯金は民営化してから民間銀行から送金できるようになった」と、竹中元大臣は発言しているが、国営郵政時代のゆうちょカードの方が世界中で通用する国際規格で、民間銀行よりも利便性は高かった。

 産経新聞は9月30日、竹中平蔵慶応大名誉教授が「郵便事業は海外にものすごい成長分野を持っている。企業買収を自由にできるよう(政府)は早く株を売却しないといけない」と発言した記事を掲載している。巨額損失にふれず、全くの不見識である。

 郵政民営化という構造「改悪」の首謀者、一人のグローバリストの意見だけを麗々しく掲載するのは、保守を自任する新聞社の記事とは思えない。

 「完全な民間企業になることだ。暗黙の政府保証があると民業圧迫になるので自由な経営ができない」などと的外れだ。財産を海外に持ち逃げする民営化をされては叶わない。

 さて、世界で民営化に成功した郵政事業はない。

 ドイツはいったん民営化したが、外国勢力と通じた総裁を逮捕して失脚させ、激減した郵便局の数に歯止をかける法的介入が続いている。

 米国は国営で民営化の声は全くない。民営化権化のオランダでは混乱が続いてさまよっているだけだ。

 ニュージーランドは郵政民営化によって貯金が外資に売られ不便になり、キィウィバンクという官業の貯蓄機関を創設している。

 スイスは基本的に民営化に反対で、民営化反対論者の筆者を招待してくれたことがある。

 欧州では郵政民営化の弊害が次々と表面化しているが、日本の郵政民営化は世界的にも大失政となった。

 竹中平蔵氏の見解を掲載した新聞は、同氏のプロフィールから、なぜか人材派遣業の「パソナ会長」の肩書きを抜いている。非正規労働という西欧で忌み嫌われる労働制度で甘い汁を吸う会社の肩書きをなぜ紹介しないのか。

 ロッキード事件の闇は40年が経ってようやくその真実の輪郭が明らかになった。郵政民営化の闇に光が当たる日もきっと来る。

 オバマ政権の米中経済同盟ともいえた蜜月関係の中で、ウェスチングハウスの新型原子炉導入促進の資金源にするために、日本郵政民営化が画策されたのではないか等と筆者は妄想する時がある。

(『月刊日本』2017年11月号)

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