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トランプ「アジア歴訪」中間決算(中)韓国の「立場」と「弱み」 - 平井久志

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「武器商人」トランプ

 今回の日本・韓国訪問で浮かび上がったのは、「武器商人・トランプ大統領」の姿だ。

 トランプ大統領は安倍晋三首相との共同記者会見でも、「首相は大量の(米国製)軍事装備を購入するようになるだろう。そうすれば、ミサイルを上空で撃ち落とせるようになる。先日、サウジアラビアが即時迎撃したように。米国は世界最高の軍事装備を保持している。F35戦闘機でもミサイルでも、米国で多くの雇用が生まれ、日本はより安全になるだろう」と語り、F35最新鋭戦闘機やミサイルの購入を迫った。

 安倍首相は想定外の武器セールスに少し慌て、「防衛装備品の多くを米国から購入している。安全保障環境が厳しくなる中、日本の防衛力を質的にも量的にも拡充していきたい。米国からさらに購入していくことになるだろう」と歩調を合わせながらも、踏み込んだ発言は控えた。米『ニューヨーク・タイムズ』などは「米兵器が日本守るとトランプ氏」と、皮肉まじりでこれを報じた。

 日本での発言で勢いづいたトランプ大統領は、韓国でも武器セールスに励んだ。ソウルでの共同会見でも「戦闘機でもミサイルでも米国のものが一番優れている」とし、「韓国は数十億ドルの装備を購入するとした」と成果を公表した。

稚拙な「日本カード」

 文在寅大統領が7日の夕食会で、元従軍慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)さんを招待したりメニューに使ったエビを「独島エビ」とわざわざ紹介したことは、稚拙な「日本カード」と言わざるを得ない。

 文在寅政権は、歴史問題では安倍政権と基本的なスタンスを異にしているが、対日関係そのものを悪化させてはならないという立場でもあった。しかし、今回の「日本カード」はいただけないものだ。

 現在の韓国では、対日問題がホットイッシューになっている状況ではない。むしろトランプ大統領の訪韓をめぐり、保守陣営が歓迎、進歩陣営左派が反対の立場で集会やデモをするなど、対立が深まっていた。トランプ訪韓反対を主張する勢力は、反日色が強い。韓国政府が今回、元慰安婦の李容洙さんを招待したり、あえて「独島エビ」などを強調したりした背景には、日本批判を演出することで、トランプ訪韓反対勢力のガス抜きを図った感がある。米韓関係をめぐる国内の対立を、「日本カード」を使って希釈しようとする意図が見えるのだ。こうした動きは、問題を複雑にさせるだけの実に稚拙な対応だ。

 だが、これに抗議した日本政府もどうかと思う。大人の対応をすべきだ。

 日本も韓国も、北朝鮮の核ミサイルに対しては共通の立場にある。両国は北朝鮮の非核化を求め、圧力をかける必要がある一方で、いざ朝鮮半島で戦争が起これば、被害を受けるのも韓国と日本だ。その意味では日韓両国は、日米韓の連携を強めながらも、トランプ大統領に対して「戦争はするな」と強く働きかけるべき立場だ。ところがそこに稚拙な「日本カード」を持ち込んだために、問題を余計に複雑にしてしまった。

中国の「黄砂」に阻止されたDMZ訪問

 トランプ大統領と文在寅大統領は翌8日午前、南北軍事境界線のある板門店の非武装地帯(DMZ)を訪問しようとしたが、濃霧と黄砂という気象条件のために実現しなかった。

 当初は、日程の都合上トランプ大統領のDMZ訪問は計画されていない、ということであった。結局はこれを実行しようとしたわけだが、米韓の説明は食い違う。

韓国側は、当初は予定になかったが、文在寅大統領が前日の首脳会談の席で「自分も同行するからDMZを訪問しましょう」と提案し、トランプ大統領がこれを受け入れたと説明している。一方米国側は、公表しなかったが当初から計画されていた、という説明だ。

 文在寅大統領は青瓦台を、トランプ大統領はソウル市内の龍山基地をヘリコプターで飛び立ってDMZに向かう予定だったが、濃霧と黄砂で視界が悪く、ヘリコプターの着陸が困難となった。

 米国の大統領はこれまで、訪韓した際には板門店を視察しているが、米韓の大統領が共に訪れたことはない。韓国としては、初の米韓首脳の同時DMZ訪問を実現し、米韓同盟を誇示しようとしたのだが、気象条件のために挫折した。

 だが、もしこれが実現していれば、北朝鮮が強く反発するのは必至だった。その意味では「中国発」の「黄砂」がこれを阻止したわけで、中国の環境汚染が北朝鮮を支援する、という結果を作り出した。

 韓国政府は、トランプ大統領がDMZを訪問しようとしたこと自体が北朝鮮へのメッセージだ、とするが、この訪問には、軍事境界線からソウルまでがいかに近いかをトランプ大統領に知ってもらいたいという思惑もあったのではないだろうか。ソウルが北朝鮮の火力攻撃でいつでも「火の海」になり得るということを体感してもらいたいという意図も隠されていたが、それも挫折してしまったようだ。(つづく)

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