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地方復活のカギはやはり産業育成にあり - 森 宏一郎

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ゼミ学生を連れて高知県馬路村と静岡県伊東市でフィールド調査を実施した。これらの2つの地域の性格は異なるが、調査テーマの1つは地方活性化である。馬路村は大都市圏からも都市圏からも離れている地域である一方、伊東市は大都市東京圏の縁辺部に近いエリアに位置している。

馬路村では馬路村への移住者を中心にインタビューをおこない、伊東市では学生たちの力を借りて産業調査をおこなった。今回のコラムでは、それらの結果から見えてきたことを仮説的に議論したい。なお、ゼミ学生が調査し考察した内容も大いに取り込んで議論する。学生たちに感謝したい。

◆コアとなる仕事が得られるかどうか?

馬路村は人口902人、429世帯の小さな村である。林業で栄えた村だが、現在は柚子を中心とした農業とその加工業を主力産業としている。農業、林業、その加工業が主な産業となる。

【馬路村を流れる安田川】


この村で移住者にインタビューすると、おもしろいことが分かった。馬路村で生活したいと先に思って、そこから何か仕事がないかと仕事探しをしたというのがほとんどだったからである。これのどこがおもしろいのか。

都市部で生活する人にはこの種の発想はあまりないからである。公共交通が発達している都市に住む彼らは転職や転勤で仕事場が変わるのであって、居住地を変更するために仕事を探すという発想はそれほど多くない。

もちろん、関東から関西へなどと大移動する場合は話が別である。しかし、そういう場合でも、転勤や転職が理由として先に存在していることが多いのではないだろうか。仕事が変更するのにともなって、自動的に居住地が変更するのである。

地方にはその地域特性という魅力があるということだ。生活拠点として地域が先にあって、それに経済的要因が満たされるかどうかをチェックするというのは大いにあり得る現象なのである。

他方、都市では圧倒的に経済的要因が先行することになるのではないか。だが、地方には経済的要因がうまくついてこないという現実がある。

馬路村での問題は多種多様な仕事が豊富にあるわけではないことである。馬路村に移住しようとすれば、農協(柚子加工業関連)、木材加工会社、森林組合、村役場の四択が基本となる。もちろん、これらの仕事も豊富にあるわけでもなく、人材の需給ミスマッチも大いに起こり得る。

林業が繁栄していたときには、馬路村の人口は3,000人規模だったというから、大きな経済的利得を生み出す産業の存在はやはり重要である。ブランド化に成功しているものの、柚子加工業に翳りが見えており、この産業の方向性や新産業の可能性を本気で議論する時にきているだろう。

◆レクリエーション後背地からの脱却?

伊東市は伊豆高原の温泉保養・別荘観光地をかかえる地域である。人口は70,142人、世帯数35,359の市である。バブル経済時には、東京都市圏のレクリエーション後背地として栄え、高級別荘地の1つとして名を馳せた。

【伊豆高原の大室山から見た伊東市中心部】


しかし、バブル時に年間のべ7,500万人だった伊豆全域の観光客数は約半数の3,700万人規模まで減少し、近年は横ばいで推移している(注1)。他方、バブル崩壊によって企業所有の保養施設は半減、別荘も減少し、地価が下落したことを受けて、居住する人も出現しているという。

ただ、ここが東京都市圏の縁辺部の少し先に位置するとはいえ、東京の都心から普通列車で2時間半、新幹線利用でも1時間半の距離である。通勤可能ではあるが、決して積極的に通勤したい距離ではないだろう。

そうだとすると、東京都市圏からの近接性を生かして、観光地として復活するのが良さそうに見える。保養施設や別荘の跡地を農地化しているところもあるようだが、規模の経済が働くような規模での農業は実現困難である。それらは花や高級果物に特化した小規模生産にならざるを得ない。

一方、バブル崩壊後、比較的うまく経営されている複数の地方遊園地と多数の経営難のマニアックな博物館が残っている。これらはこの地域の重要な資産である。しかし、坂道だらけのエリアであるにも関わらず、観光客数が大幅減少したことが原因なのか、公共交通が全く充実していない。

比較的うまく運営されている遊園地は周辺域の自然の豊かさとマッチしたつくりとなっており、地域一体性の重要性を垣間見させる。公共交通・遊園地・博物館・自然・他を含めた地域全体を観光地として再デザインすることに活路がある可能性を示唆しているのではないだろうか。

しかも、近年は、これまでの文化体験型の観光から自然体験型の観光へシフトしているという。地域全体のジオパークを前提とした自然体験型観光地として、この地域を再定義する必要があるだろう。

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