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若者は本当に自民党を支持しているのか - 島澤 諭 (中部圏社会経済研究所チームリーダー)

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(iStock/sh22)

イデオロギー・ファーストからイデオロギー・フリーへ

 最近、若者の保守化、自民党支持の強さが指摘されている。

 表1からは、冷戦構造の崩壊以降、自らを革新と考える者の割合は趨勢的に減少傾向にあり、相対的に見れば、日本は保守化していることが分かる。

 長期的に見れば、コアな保守層(自らを「保守的」と考える者)は、1990年の19.5%から2016年の9.5%まで10ポイント減少するなど減少傾向にある一方、ライトな保守層(自らを「やや保守的」と考える者)が増加している。それに対して、革新勢力は大きく増加することも減少することもなく、ほぼ横ばいで推移している。こうした中、保守でも革新でもない中道層が長期的には増加している。具体的には、冷戦崩壊直前の1990年には38.4%に過ぎなかった中道層は2014年には7ポイント増の45.5%と、保守、革新が割合を減らしているのとは対照的となっている。

 足元の動きを見ると、第2次安倍政権を誕生させた2012年の第46回衆議院議員総選挙を境として、ライトな保守層を主力に保守層は同年の33%を底に復調する一方、革新勢力は同19.2%をピークに退潮しつつあることが指摘できる。

 そもそも、今の若者世代の多くは、社会主義が実質的に破たんした後に生まれているうえに、経済成長が止まった世の中で成長してきているので、保守や社会主義といったイデオロギーには思い入れはないし、経済を成長させる、あるいは自分たちの実際の生活を少しでもよくしてくれるのであれば、もしくは美辞麗句ではなくあくまでも結果にコミットしてくれる政党であれば、それが白い政党でも黒い政党でもどちらでも無差別(indifferent)であるとみなしているのが実態である。

 このようなイデオロギー・フリーな世代を「保守」「革新(リベラル)」といったイデオロギーもしくはカビの生えた昭和的価値観のもとレッテルを貼って切り分けようとするその姿勢は時代錯誤でありナンセンスなのである。

 結局、長期的にみれば、中道層が増加しており、冷戦期のようなイデオロギー・ファーストからイデオロギー・フリーな世の中へと着実に進展している中で、足元では2012年の第46回総選挙、つまり旧民主党を主力とした革新政権から自公連立内閣への政権再交代をきっかけに、革新が勢力を減らし保守化が進行しているものと考えられる。


(出所)公益財団法人明るい選挙推進協会資料により筆者作成
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きっかけは2012年の政権再交代にある

 足元では、自らを保守と考える層が増加しているのは確かであるが、日本の場合、保守を代表する政党は自由民主党(以下、自民党)であるので、以下では、国政選挙で、自民党に投票した者が各世代に占める割合の推移について、公益財団法人明るい選挙推進協会の資料を用いることで、明らかにする1

 図1は、傾向的に、世代が上がるほど自民党に投票した者の割合が高まっていることを示している。しかし、2012年の第46回総選挙を機に、近年は衆院選でも参院選でも若い世代で自民党に投票した者の割合が高まっているのが分かる。逆に言うと、それまでの国政選挙においては、若年世代のうち自民党へ投票する者の割合は他世代に比べて低かったのだ。

 例えば、2005年に実施された第44回総選挙はいわゆる郵政解散であり、この時は若者の多くが小泉支持に回り自民党勝利の原動力となったと報道されたが、実際には壮年世代と高齢世代の投票割合の方が高かった。

 さらに、2007年に実施された第21回通常選挙は消えた年金問題等で自民党に大きな逆風が吹いており、その後、安倍・福田と相次いで政権を放り出したうえにリーマンショックが重なった2009年の政権選択選挙はもちろんのこと、翌年実施された第22回通常選挙でも若者の自民党への投票割合は低かった。

 つまり、若者のうち自民党へ投票する者はやはり2012年を転換点として増加に転じたことが分かる。

(出所)公益財団法人明るい選挙推進境界資料、朝日新聞資料により筆者作成4
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進む若者の政党離れ

 政権再交代以降、若者世代で自民党に投票する者の割合が高まっているのならば、同時に若者世代の自民党支持も増えていると言えるのだろうか。

 図2を見ると、各世代のうち自民党を支持する者の割合は、若い世代ほど低く、年齢が上がるほどに高くなっていくことが分かる。つまり、若者世代では、自民党を支持する者の割合は実際に自民党に投票した者の割合より少ない。

 しかし、特に最近になるほど、若者世代の支持が上昇していることを指摘できる。

(出所)公益財団法人明るい選挙推進協会資料により筆者作成
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 ただし、図3からは、自民党、民進党、革新政党(民進党及び共産党及び社民党)の世代別の支持割合を見ると、政党を問わず、若者世代の支持割合は、全世代を平均した支持割合を下回っている。これは先述の通り、若い世代ほど、イデオロギー・フリーとなっている現状を反映した結果であり、若者の政党離れが進んでいることを如実に示す結果である。


(出所)公益財団法人明るい選挙推進協会資料により筆者作成
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1  なお、先般実施された第48回衆議院議員総選挙に関しては資料が未公開のため、昨年実施された第24回参議院議員通常選挙が最新のデータとなるものの、現在の状況と大きな変化は見当たらないものと考えている。

若者世代ほど支持と投票の乖離が大きく、無党派層が多い

 以下では、世代別の自民党の支持割合と投票割合について図4により見てみる。図4からは、概して見れば、各世代で投票割合の方が支持割合より大きく、特により若い世代ほど乖離幅が大きくなることが分かる。参考までに、民進党についても同様の比較を行ってみると、民進党でも各世代とも投票割合が支持割合を上回ってはいるものの、その乖離幅は全世代を通じてほぼパラレル、つまり均等となっていることが分かる。

 このことから、自民党では、特に若い世代において、実力以上に票が集中していることが指摘できる。

(出所)公益財団法人明るい選挙推進協会資料により筆者作成
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 上で見たような政党支持割合と投票割合との差は何に由来するのだろうか。結論を先に言ってしまえば、この差は無党派層が原因である。つまり、無党派層とは、普段は特定の決まった政党を支持している訳ではないものの、選挙に際しては、何らかの理由により、ある政党、現在の文脈で言えば、自民党に投票することになる。しかも、無党派層は若い世代ほど多い。逆に言えば、概して見れば高齢世代ほど特定政党への支持者が多い。やはり、若い世代ほどイデオロギー・フリーなのだ。

(出所)公益財団法人明るい選挙推進協会資料により筆者作成
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 このような無党派層はなにを手がかりにある政党に投票し、別の政党には投票しないのだろうか。小選挙区制とは、誤解を恐れずに言えば、民意を拡大して議席数に変換する選挙制度であり、政権獲得を目指す政党は、マニフェストを掲げ、民意争奪戦を繰り広げることになる。相対的に多数の民意を獲得できた政党が政権の座につき、マニフェストを実行すべく多数決により決定を重ねていく。こうした民意獲得競争において重要となるのはイデオロギーに基づいて支持してくれる忠実な固定層であることはもちろんであるが、イデオロギー・フリーが進行し、有権者の政党離れが進行している現状下では、無党派層の獲得が何よりも重要となっている。

 実際、第24回通常選挙では、全体的には無党派層は自民党支持層の34.6%に次ぐ32.2%と第二党の民主党(11.9%)を大きく上回る規模であり、特に、50歳代以下では第一党の自民党を上回っている。つまり、固定支持層を押さえた上でより多くの無党派層、要すれば若い無党派層を獲得した政党が政権を獲得できるのであり、極論すれば、無党派層が選挙結果を左右することができるのだ。


(出所)公益財団法人明るい選挙推進協会資料により筆者作成
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