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容疑者の過去よりも知りたいこと 「座間9人遺体事件」を読み比べる 「ネットの闇」とお約束を書くよりも大切なこと - プチ鹿島

 神奈川県座間市で9人の遺体が見つかった事件。

 やはりと言うべきか、容疑者の人物像や過去がたくさん報道されていた。

 私は容疑者の価値観や世界観(主義・主張)を知りたいとは思わない。それよりも読みたいのは被害にあった人の状況だ。

悪意からどう身を守れるか。日刊スポーツの良記事

 今後、同じような立場の人(自殺願望がある人、もしくはそれほど追いつめられて弱っている人)が犯罪に巻き込まれないようにするにはどうすればいいのか。「自殺願望のある人が、悪意ある人に狙われる現実」「弱者を狙う側からどうすれば守れるか」などの記事こそ読みたいと思った。

 そういう意味で日刊スポーツの「自殺願望なぜ誘い出される?/座間事件・専門家の目」(11月3日)はじっくり読んだ。ネットの自殺サイト関連の取材を続けるフリーライター・渋井哲也氏の談話だ。

《ネット上に「自殺したい」と書き込む人と、「#自殺募集」と仲間を探す人では、置かれた立場が違うことが多いという。「『自殺したい』は、現実世界に相談できる相手がいる人も書き込む。『募集』の人は、現実に相談相手がいない人が多い」。》

《弱っている側は共感してくれる相手なら現実に会うことへのハードルが低くなる》

 という2点。

 この前提を知ると、いかに悪意をもった人物が立場の弱い人にやすやすと近づけるかがよくわかる。

 これは他人ごとではない。


事件のあったアパート前 ©時事通信社

「狙う側」より「狙われてしまう側」の記事を読みたい

「自殺したい」というつぶやきは一見特殊にみえるけど、「~したい」という願望は日常でよく見聞きする。例えば「○○になりたい」だとか「就職したい」というように。

 世の中にはそんな願いを持つ人に近づく大人がゴマンといる。夢を理解するふりをして、話を聞くふりをして、言葉巧みに近づいて結果的に相手を自分の欲望に利用する人がいる。

 そう考えると、今回の事件はまったく特殊ではないことが想像できる。世間と地続きでつながっている。「~したい」とつぶやいた結果のことだからだ。

 だから「狙う側」の人生解説なんかより「狙われてしまう側」の今後の記事が必要だ。


10月31日の各紙夕刊は1面トップで報じた

毎日新聞が問いかけた「自殺を考えた時は……」

 毎日新聞が次の記事を載せた。

「自殺を考えた時は……」(毎日新聞 11月4日 東京朝刊)

 という特集である。

《ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)には善意と悪意が入り交じる。自殺を考えたとき、どうすればいいだろう。》

《孤独を感じたことがない人はいない。誰にも相談できずに自殺を考えている人は、死にたい気持ちにどう向き合えばいいのか。》

 そのあと専門家の言葉が紹介されている。

《「若い女の子は死にたい気持ちを身近な人には言えません。心配されて否定されるから。だからSNSで『死にたい、消えたい』と気持ちを吐露しているのです」。》

《ところが、SNSで発信すると、弱さにつけ込まれてしまう。「死ぬのを手伝う、と近づいてくる個人には下心しかありません。絶対に接触してはいけません」。冷静に立ち止まってその人のことを調べるよう、普段から注意すべきだ。》(「BONDプロジェクト」橘ジュン代表)

 自殺は個人の心の弱さが原因でなく、困難に追い詰められた結果だというコメントもあった。

お約束の「ネットの闇」と書くよりも大切なことは

 読売新聞には次の記事が。

「SNS 自殺対策を強化 厚労省など相談サイトに誘導」(11月4日 夕刊)

《今回の事件を受け、厚生労働省や自殺防止に取り組む民間団体は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上での自殺志願者に対する支援を強化する方針だ。》

 さらに民間の活動も。

《自殺志願者の相談を受けている民間団体も、SNSを使った自殺防止策の強化に乗り出している。》

《「今回の事件では、『死にたい』と投稿した人に悪意が届いてしまった。悪意に支援の力が負けないよう、ネット上に相談相手を求める人たちの受け皿を増やすことが急務だ」》

《「学校にも家庭にも居場所がなく、お金もない10代が逃げ込むのはネットしかない。私たちのサイトに逃げ込んでもらえるように認知度を高めたい」》

 という民間団体の関係者のコメントを紹介している。


事件のあったアパート前 ©時事通信社

 今回各記事で、ネットで「死にたい」とつぶやく利点もあることを知った。知らない誰かと会話することで救われることもあるのだ。なら、悪意が向かってきたときどうするか。

 容疑者の過去よりも、「ネットの闇」とかお約束を書くよりも、追いつめられて弱っている人が今後「救われる」記事をたくさん発信してほしい。

(プチ鹿島)

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