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識字ができない若者たちはどこにいるのか。

2017年11月2日のクローズアップ現代+で放送された「ひらがなも書けない若者たち ~見過ごされてきた“学びの貧困”~」を観て、まっさきに少年院でかかわる子どもたちが浮かんだ。本日も、大阪府茨木市の浪速少年院においてスタディツアーを開催したが、そこには教育関係者やNPO関係者、障碍を持つ方々を支援される企業担当者などが30名以上参加してくださっている。

若者の就労支援から始まり、現在、定時制やエンカレッジスクールに通う子どもたちや、家庭が経済的に厳しい子どもたちの学習支援と、低年齢層に支援を広げていくなかで、就職先で心身を壊してしまった若者や高校や大学を中退、卒業した後に社会との接点が切れてしまった若者とは少し異なり、もっと低年齢層で顕在化したであろう諸課題が、20代や30代になるまで誰にも気が付かれなかったり、支えてくれる存在に出会ってこなかったのだろうというケースもよく見えてきた。

例えば、いじめや病気などで小学校や中学校に行けなくなったことで基礎学習の機会を逸した子どももいれば、学校にはいるものの、どこかの段階で勉強がわからなくなり授業中はいるだけ。置物のように固まっていたり、寝ることでつらい時間を早く過ぎさせようとする子どもいる。そこなかにはルーツが外国にある子どもで、話すことはともかく、読み書きができずに授業に参加し得ないままとなってしまった子どももいる。

いま、民間や行政が全国で無料の学習塾を開催しているが、識字から丁寧に学び直す子どももいる。ただし、子どもたちの行動範囲は狭いため、”そういう場”に行くことを回避することもあり、周囲が通う塾などに行けるような取り組みも始まっている。最近では、兵庫県尼崎市でのコレクティブフォーチルドレンや、先日、渋谷区とともに複数のNPOや企業が子どもたちの学びを支えるために発表した「スタディ・クーポン」など、学びの場ではなく、子どもたちが希望する場を選択できる仕組みが注目されている。

そのような学習支援の場において、識字から学び直すこともも一定程度は存在するが、私が日本において識字ができないままに成長している子どもたちを見ているのが少年院だ。いま、認定NPO法人育て上げネットでは、毎週火曜日に茨城農芸学園という少年院で基本的なパソコン操作の講座を運営させていただいている。

タッチタイプができる子どもは少なく、まずはタイピングの機会を提供し、最低限のスキルを身に着ける。そこからワードやエクセルなどの基本的な操作を行うが、私が現場に入ったときに目の当たりにしたのが識字の課題だ。確かに、退院後、学校や職業という選択肢を考えるにあたって、基本的なPCスキルの不足はさまざまな機会損失につながり得る。それは子どもたちも感じているようで、特に仕事をするにあたって、以前よりも「スーツを着る仕事を希望する」若者、子どもが増えているようで、そうであればPCくらいは使えないとと考えているのかもしれない。

本来は講師一名で行うところ、サポート役としてもう一名を配置している。私が行くときは3人目のサポート役であった。わからないときは手が上がり、その場で質問に答えるようにしている。そこで感じるのは、彼らはPCスキルが不足しているのではなく、学習ソフトやテキストに記載されている内容の理解に苦しくことが少なくないということだ。

例えば、エクセルで各セルに品物、りんご、みかんとタイプする。隣のセルに個数、その隣に価格を入れる。最後に小計と合計が出るようにすることが課題であった。そしてある男性が手を挙げた。「何かわからないことありますか?」と聞くと、彼は少し恥ずかしそうに「これは何と読むんでしょうか?」と指さした。

そこには「品物」とあり、私はテキストの端っこに「しなもの」と平仮名で書いた。彼は「品物」が「しなもの」という知っている言葉であることを理解し、続けて質問した。「これは英語でどうやってタイプするんですか?」と。

私は、平仮名で書いた「しなもの」の横に、「shinamono」と追記した。それを見て、彼はパチパチと比較的素早くキーボードを叩き、出てきた平仮名を確認して、漢字に変換した。その後、課題が一通り完成し、りんごやみかんの数や、価格を変えては小計と合計が自動で変わることに感動している姿を見た。

これは少年院という特別な環境だけの話ではなく、教育を受ける権利とともに構成された前述の番組にあるよう、日本で顕在化した学びの貧困の実態だろう。ただし、私は識字ができない子どもが、識字ができるようになる学びの場を作ったとき、彼らが足を運ぶかどうかは疑問だ。一定の年齢になると誰もが当たり前のことができない自分をさらけ出すことになる特定課題を解決する場にはどうしても足が向かないひとがいるからだ。

このPC講座のなかで知った識字の問題ではあるが、PC講座だからこそ読めない漢字を聞くことがしやすくなり、一方で、教える側もそれがわかっていれば特別扱いをせずに自然な対応がしやすくなる。識字のみならず、算数なども同じで、基本的なことができないと社会生活そのものが送りづらくなることは間違いないが、だからといってそれを特別に学び直すことには抵抗が生まれる。それはコンプレックスになっていることもあれば、学び直しへのプライドもあるだろう。相手が大人であれ、子どもであれ、そういう精神的な部分を見過ごすと、ふたを開けたとき誰も参加しない場が生まれる可能性がある。

学校や無料塾に限らず、学びの場でも職業訓練的な場でも、基礎的な学びの機会を獲得することができないままとなっていたひとに対して、PC講座でも、受験勉強でも、資格取得でも、誰もが目的にしやすいことのプロセスに学びの支援を重層的に追加することが望ましく、コストも抑えられるのではないか。もっとも回避すべきは、いまの人員体制のなかで丁寧で親身な伴走支援の必要性だけがうたわれ、リソースが拡充されないなかで現場に負荷がかかることである。

現象面としての学びの貧困が明らかになったいま、将来の社会生活が無用に厳しいものにならないためにも、しっかりとした制度設計のもとで子どもたち、そして同様の悩みや課題を持つ大人にも社会的な対応を望む。

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