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一人静かにひっそりと、誰にも迷惑をかけない「孤独死」の準備とは?

写真はイメージ、提供:アフロ

 誰にも迷惑をかけず、ひっそりと生き、世間の片隅で静かに心安らかに死ぬ、そんな孤独死。でも今の世の中では、そんな孤独死を遂げるためには、いくつかの準備が必要です。

【連載】不幸ではない「孤独死」から、老いと人生を考える

孤独死の準備として、リヴィング・ウィルの作成

 孤独死への準備として、何より先におすすめしたいのが、不要な延命措置をお断りするリヴィング・ウィルの作成です。

 病気で回復の見込みはなく、意識さえ失い、植物状態になっても、人工呼吸器や経管栄養などの延命措置によって生き長らえる、そんな状況を望む人はほとんどいません。しかし今の日本の病院では、きちんと意思表示しないと、延命治療を延々と続けられるおそれがあります。

 親族がいれば、本人が意識不明になっても、代理で意思表示してくれるという期待もできますが、孤独死予備軍とも言うべき一人暮らしでは、自分で意思表示する文書をあらかじめ用意しておかないといけません。これがリヴィング・ウィルです。

 孤独死というと、自分の部屋で心筋梗塞や脳梗塞で突然死というイメージもあります。この場合はリヴィング・ウィルなど要らないのですが、そんな孤独死ばかりではありません。

 一人暮らしでも体の具合が悪くて病院を受診することはあるし、そこで重大な病気が発見されてすぐに入院ということもあります。外で倒れて救急車で運ばれることもあります。そういう時、きちんと意思表示しないと、自分の意志に反して延命治療を開始されるおそれもあるのです。そして、いったん始めた延命措置を中止するのはとても難しいのです。まずは望まない延命治療を「やらせないこと」これが何より大事ですから、きちんと意志を文書にしておきましょう。

 では、どんな内容の文書を用意しておけばよいのでしょうか?

日本尊厳死協会」に入会すると規定文面による「尊厳死の宣言書」が送られてきます。

日本尊厳死協会のホームページ

 もちろん、できあいの組織に頼らず、自分で作ってもいいのです。その際、次のことを絶対書いておくべきです。

  ・ただ単に死期を引き延ばすためだけの延命措置は断ること

  ・ただし苦痛を和らげるための適切で十分な緩和医療は拒否しないこと

  ・この文書は自分の意志で作成したものであること

  ・この文書を作成した時点で自分の判断力は健全であったこと

万が一に備えての身辺整理の仕方

 さて、リヴィング・ウィルを用意したら、次は万が一に備えて、同じアパートの住人や隣近所、大家さん、友人知人たちに余計な迷惑をかけないよう、身辺整理を進めましょう。自分の死体がゴミ屋敷のように汚く雑然とした部屋に横たわっているのを想像するのは、気分の良いものではありません。後片付けをする人の迷惑も半端じゃありません。死ぬときまでに荷物を減らして、必要最低限のものだけが残された簡素な部屋にしておきましょう。「発つ鳥は跡を濁さず」と言い習わされているではありませんか。

 ある程度の年齢(たとえば60歳)を越えたら、食料のように短期間のうちに消費してしまう物だけ買うようにして、家具や衣服やその他もろもろの身の回りの品は買わないで、今あるものを使い尽くす。壊れたり、すり切れたりして使えなくなったら順次捨てていく。そうして物を減らしていくのです。

最新流行の生き方「ミニマリズム」がいい切実な理由

 必要最小限の物だけで生活するという生き方が「ミニマリズム」として最近話題になっているようですが、きれいに死ぬための準備が結果として最新流行の生き方になるとは、すばらしいことです。これは末期(まつご)の行動の美学、死に際のダンディズムだけではないのです。もっと切実な理由があります。老いを生きるための準備なのです。

 年を取れば身体機能は確実に低下します。若い頃は何でもなかった階段の上り下りが難事になり、あわてると転んでケガをする。ケガで済めばいいけれど、骨折して入院したまま寝たきりにもなりかねません。転ぶのは階段だけとは限りません。床に無造作に置いた物につまずいて転ぶこともあります。さらにこんな悲劇もあります。寝室からトイレまでが遠い広い家に住んでいて、夜中にトイレに行こうとして、若い頃のようにサッサと歩けずもたもたしているうちに失禁する。これは自尊心を非常に傷つけます。

 こうしたことを考えると、年を取ったら、必要最少限の物しかない小さな部屋でシンプル・ライフを心がけるべきです。

かかりつけ医を作る重要性

 そんなシンプル・ライフの果てに死んだら、役所に死亡届が出されます。その際、死亡診断書か死体検案書を添付しないといけません。そして、死亡診断書や死体検案書を書けるのは、医師(例外的な場合には歯科医師も)だけです。

 だから、自分のかかりつけ医を作っておきましょう。孤独死が現実味を帯びるくらいの年頃になれば、年に何回かはちょっとした体の不調は起こるものだし、慢性疾患の1つや2つもあるでしょう。受診した折に自分の健康状態や生活状況をきちんと伝えておく方がいい。そして、大家さんなど、自分の死体の第一発見者となりそうな人に、その医者の連絡先を教えておくこと。そうすれば、死亡診断書あるいは死体検案書を書いてくれるでしょう。そうでないと、警察が呼ばれ、監察医による解剖に回されることもあります。

 ともかく、無事に死亡届を提出したら、役所から火葬許可証(または埋葬許可証)が交付され、火葬から葬式という段取りになります。どんな葬式を望むのか、きちんと遺言を残しておきましょう。もちろん、式の費用についても。

 葬式を望まないという遺言も可能です。わたしはそうするつもりです。遺骨を残さないよう焼ききって灰だけにするゼロ葬です。遺骨がないから,納骨の手間もなく、お墓も要らない。シンプル・ライフの果ての究極のシンプル・デス。これぞ、孤独死にふさわしい遺骸の始末。

 もちろん、わたしの趣味をほかの人に押しつけるつもりはありません。孤独死であっても、生前に多少の交友関係があり、友人、知人たちが葬式をしてあげようと申し出てくれるなら、その時は親切をありがたく受取ればいいでしょう。

(心療内科医・松田ゆたか)

【連載】不幸ではない「孤独死」から、老いと人生を考える

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