記事

「野党ねじれ」が深刻化する前に - 南部義典

1/2

 野党ねじれとは、衆議院、参議院における野党第一党(会派)が異なることをいいます。いま、衆議院では立憲民主党・市民クラブが54名、参議院では民進党・新緑風会が47名で、それぞれ野党第一党(会派)であり、野党ねじれが起きています。今月1日に行われた内閣総理大臣指名選挙でも両党(会派)が相争うこととなり、次点の得票は、衆議院では立憲民主党の枝野代表が60票、参議院では民進党の大塚代表が48票という結果となりました。

 野党ねじれは、近年まったく例を見ませんでしたが、今後の国会運営では、与党は衆議院、参議院のいずれにおいても安定している一方で、野党は衆議院側と参議院側との不連携、ぎこちなさが露呈するおそれがあります。政治的には何が問題になるのか、問題が深刻化しないようにはどうすればいいのか、一考を加えておきます。

野党第一党(会派)が持つ強い権限

 まず確認しておきたいのは、衆議院、参議院のいずれにおいても、野党第一党(会派)は委員会運営をめぐって、強い権限を持っているという点です。強い権限とは、どれほどの巨大与党を相手にしても、対等に協議ができるという意味です。また、会派に所属する議員数がどんなに多くても、小さくても、権限の強さは変わりません。現在、立憲民主党・市民クラブは衆議院の議席占有率でみると11.6%にしか及ばず、事実「史上最小の野党第一党」ですが、衆議院の運営の上ではあくまで、野党第一党としての立ち回りが求められるのです。

 現在、衆議院には17の常任委員会と9の特別委員会、参議院には17の常任委員会と7の特別委員会があります。これらの委員会には与党、野党からそれぞれ理事が複数名選任され、委員会の運営などに関する協議、決定を行います。中でも、与党第一党、野党第一党からそれぞれ「筆頭理事」が選ばれ、与党筆頭理事と野党筆頭理事が日常的に交渉を重ねながら、委員会の運営を実質的に主導していきます(筆頭間協議。この手法は、村山内閣の頃に確立しています)。

この特別国会から、衆議院では「自由民主党」と「立憲民主党・市民クラブ」との間で、参議院では「自由民主党・こころ」と「民進党・新緑風会」との間で、野党ねじれ下での筆頭間協議が始まっています。もっとも、この特別国会では、審議される予定の法案が極端に少ないですが、来年の通常国会以後は、その数が格段に増え、委員会がフル稼働していきます。野党ねじれの問題は、野党第一党が持つ強い権限を背景に、顕在化していくのです。

懸念される、三つの問題

 第一の問題は、参議院側に、法案審議の計画性、ないしその余裕を失わせるおそれがあることです。通常国会において、安倍内閣は多くの法案を国会に提出するわけですが、通例に従い、9割以上は衆議院側から審議が始まり、その残りが参議院側から始まることになります。

参議院は主に、衆議院から送られてくる法案を受け取る立場に置かれてしまうわけですが、参議院の野党筆頭理事は、①衆議院では、法案がいつ審議入りするのか、②衆議院の委員会では、法案の採決がいつ行われるのか、③②の後、衆議院の本会議では、法案の採決がいつ行われ、参議院に送る見立てとなっているのかといった情報が、衆議院の野党筆頭理事からリアルタイムに、正確に伝えられなくなってしまいます。その結果、情報不足となり、参議院における法案審議を計画的に行うことができなくなってしまうのです。まして、衆議院側の法案審議をめぐる情報が、参議院の与党筆頭理事から教示してもらう立場になれば、その分、与党の支配、統制を安易に許し、「野党の言い分」が通らなくなってしまいます。

 第二の問題は、参議院における法案修正を停滞化させるおそれがあることです。これまでも、衆議院の委員会では、内閣が提出した法案に対して野党が修正案を提出することは普通に行われています。最終的に、その修正案が採決されなかったり、否決されることはありますが、法案審議の舞台が参議院に移った後も、同じ内容の修正案が提出されることは珍しくありません。しかし、野党第一党が別々になってしまっては、そのような修正案の提出も、当たり前のように行われることはなくなるでしょう。衆議院で立憲民主党・市民クラブが提出した修正案を、参議院で民進党・新緑風会がそのまま採用し、提出するということが想定しづらいのです。

 第三の問題は、両院合同で行う委員会の日程設定、運営に影響が生じうることです。具体的には、党首討論(国家基本政策委員会の合同審査会)の開催に影響が出てきます。ちなみに2017年は、党首討論が一度も行われていません。野党は、党首討論の実現を衆議院側だけで訴えても、参議院側と連携が取れた上でなければ、意味をなしません。

 要するに、野党がバラバラでは、政府・与党を利するだけなのです。

あわせて読みたい

「民進党」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    よしのり氏 枝野氏の発言は問題

    小林よしのり

  2. 2

    大阪市より慰安婦像を選んだサ市

    長尾敬

  3. 3

    橋下氏「政府許してはならない」

    橋下徹

  4. 4

    山口組の自虐的川柳が傑作ぞろい

    NEWSポストセブン

  5. 5

    小池氏辞任に若者は「やっぱり」

    AbemaTIMES

  6. 6

    麻原彰晃・娘 妹の虐待訴えは嘘

    松本麗華

  7. 7

    籠池氏の嘘 拡散した朝日は無視?

    和田政宗

  8. 8

    希望落選の馬淵氏「私は無所属」

    馬淵 澄夫

  9. 9

    日本のバラエティに外国人が爆笑

    NewSphere

  10. 10

    都政は放置? 小池氏が希望顧問に

    やまもといちろう

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。