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プライバシー提供で有料記事に支払い

日米とも、「紙」の新聞のオマケのような形で始まったオンラインニュースの提供。オマケですから無料が当たり前でしたが、紙の新聞の落ち込みとともに、ニュースを有料の壁=paywall=で囲い込むのが欧米では徐々に優勢になってきました。

paywallの中を覗くには定期購読(subscription)の契約をして月極めなどの料金を払わねばなりません。そこで、記事を読む前に現れる「質問」に答えることで有料の壁を乗り越え、有料記事にアクセス出来るアイディアが登場しました。

ユーザーの属性や意見など、プライバシーにつながるデータを料金支払いに代替えしようというもので、その名もpaywallならぬThe Playwall。オランダ・アムステルダムのスタートアップで、少人数の若者チームが取り組んでいます。


左から二人目がFounderのAnnefleur Schipperさん

若者たちの単なる思いつきではなく、「ジャーナリストやメディア組織が変化する環境に適応するのを支援する」というオランダ・ジャーナリズム基金から昨年、今年と2年に亘って助成金(今年は3.5万ユーロ)を供与されたり、つい先日はMRGNオーディエンス賞なるものを受賞するなどの注目プロジェクトなのです。大化けするかもしれないので記録しておきます。

これを紹介したJournalism UKの記事によると、Playwallは、すでにpaywallを設置しているメディアが付加的に利用できるもので、メディアのCMS(Contents Management System)と連動してユーザーにインタラクティブな質問を投げかけるツールだということです。

まだ、実際に採用したメディアはないので、質問の具体例はありませんが、記事によると、例えば「勤めに出るのにどんな交通手段を利用しているか?」とか「今の政府を10段階でランク付けするとどうなる?」などメディア側が聞いて見たいことを記事毎に自由に設定できるようです。

これをメディア側で解析したり集計することで、例えば「我々の記事はどんな時間帯にどういう状況で読まれているのか」とか、読者の政治的な意見など、多種多様なデータが得られることでしょう。

これらは読者のプライバシーに関わってきますが、メディア側は読者に名前はもちろん、住所や電話番号などを聞くことは出来ません。PlaywallのFAQページ(オランダ語)によると、Playwallの利用者は「性別、年齢、使用機器、住所」などをPlaywallに届けます。そこでIPアドレス上に匿名のプロフィールが作られ、質問への回答が紐付けされるようです。(オランダ語のページなので、理解が足りないかも)

Playwallのサイトは、そのメリットをこう説明します。「パブリッシャーは彼らのターゲットとするオーディエンス向けのコンテンツを整えることが出来る」「広告主に対してもターゲットの関心を知っていれば貢献できる」とし、こうも主張します。

「広告からの収入が上がれば、ジャーナリストに(レイオフせずに)支払いを続けることが出来、コンテンツの質を高められる」

そしてJournalism UKの記事には、「長期的には、Playwallの利用者を有料定期購読者に変えていく助けになりうる」との見方を示しています。メディア側がPlaywallを介して得られたデータで読者の関心を知り、関わりを強められるから、と。

読者はお金を支払わずに関心のある有料記事が読め、メディアは効果的なターゲット広告で収入が増え、そのうち定期購読者増が見込め、記者もレイオフに怯えずに仕事が出来る。採用するメディアが増えれば、Playwall社の収入も増える。

なんだか良いことづくめで、さらにPlaywall社では記事だけではなく、ポッドキャストやビデオなどにも手を広げる作業をしているそう。前途洋々に見えなくもありません。

そういえば、同じオランダ発でいっ時、話題になったBlendleというマイクロペイメントというシステムがありました。関心のある記事を一本15~30セントで読め、読後に面白くなかったと思えば、その理由を選択することで返金も可能ということでした。

世界中の関心を集めて米国に上陸したのが2016年の3月。しかし、最近はとんと関連記事に出会わないと思っていましたら、つい先日のDigiDayの記事でこう断言されていました。「少なくとも米国ではマイクロペイメントは失敗した」 事実、Blendleのサイトを覗くと<We’re in beta>のままです。

なので、Playwallの未来も楽観ばかりは出来ないでしょうが、無料アクセスを阻む有料の壁を逆手にとって、その壁の前で遊んで乗り越えようという斬新な発想の行方を楽しみにしたいのです。もしかしたらプライバシーのパワーでみんながwin winになるかもしれないし。

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