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EU諸国も巻き込んだカタルーニャ「異常事態」 - 大野ゆり子 | ヨーロピアン・ラプソディ

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テレビに映る8月17日のテロ直後に協力しあったラホイ・スペイン首相(右)と、プチデモン・カタルーニャ州前首相。反目した今となっては幻のようだ (筆者提供、以下同)

 カルレス・プチデモン・カタルーニャ前州首相のベルギーでの逮捕、保釈の報は、ふたたび欧州メディアの第1面を飾り、「カタルーニャ危機」がヨーロッパに投じた余波は当分収まりそうにない。元来、どういう行動に出るか側近にも予測不能といわれるプチデモン氏は、独立を支持した有権者を置いて卑怯にも逃げ出したのか。それとも何か狙いを持っているのか。いろいろな憶測が飛び交う中、1つだけ確実に成功したことは、「カタルーニャ問題はスペインの内政問題」という態度を続けてきたEU(欧州連合)諸国を、EUの中心ベルギー・ブリュッセルから無理やりに「傍聴席」に引きずり込んだことである。

 この2カ月、カタルーニャというスペイン北東部で起きた独立問題は、同じように国内で独立を目指している地方を持つEU諸国にとっては、喉にささった小骨のような面倒なもので、傷が大きくならないうちに、はやくスペインに取り除いて欲しいと願っていただろう。フランスはコルシカを抱え、イタリアはロンバルディア、ベネト地方の問題があり、そしてベルギーは何より、フランダース地方(オランダ語圏)の独立問題を抱えている。これについては後日改めてお伝えする。

 新聞記者であったプチデモン氏は、このあたりのヨーロッパ事情を熟知し、ベルギーでも自在にフランス語、オランダ語、英語を操って、逮捕ぎりぎりまで発信し続けた。目指しているのは、12月21日の州議会選挙を意識し、「民主主義を守っていないのはスペインである」とヨーロッパにアピールすることだ。

 彼の「執念」とも思えるメディア戦略と狙いの背景は、どこから来ているのだろうか。

独立の「原体験」

 10月27日午後3時27分、カタルーニャ州議会はスペインからの一方的独立宣言を可決、「カタルーニャ共和国」を世に誕生させた。しかし同じ日の午後8時26分、スペインのマリアノ・ラホイ・ブレイ首相は、(最後まで使うべきではないという意味で)「核兵器オプション」と呼ばれていた憲法155条を、上院の支持を得て発動した。それに基づいてプチデモン首相を罷免し、州議会を解散、カタルーニャ州の自治権を一部停止した。産声を上げたばかりのカタルーニャ共和国は、わずか4時間59分で消滅したのである。

 プチデモン氏の「独立」原体験は、26年前に遡る。1991年6月25日、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国からスロベニア共和国、クロアチア共和国が独立宣言をした時、スロベニア共和国首都リュブリャナにいたのが、プチデモン氏だった。筆者はちょうど同じ日を、クロアチアの首都ザグレブで迎えた。あっという間に泥沼の戦争へと突入していったクロアチアに対し、スロベニアはユーゴ軍との戦闘をたった10日間で決着させて、独立の道を歩んでいった。クロアチア、スロベニアとも「ユーゴスラビアの先進国」であったが、独立をめぐるプロセスとその後の戦争からの復興の進み方にはあまりにも大きな違いがあり、スロベニアは、2004年にEU加盟国となる。


独立の可否を問う「国民投票」を呼びかけたポスター。バルセロナでもいたるところに掲げられていた

 地方紙の記者であったプチデモン氏はこの様子に熱狂し、つぶさに取材したという。

 そこから「スロベニア型独立モデル」が、常に彼の念頭に置かれた。共産主義が終焉を迎えていたユーゴスラビアの時代の流れ、ユーゴスラビアも当初のスロベニアもEU加盟国ではなかったこと、スロベニア民族が、歴史的にもむしろオーストリアとのつながりが強く、ストイックで西欧的な価値観があったことなど、このモデルはすぐにカタルーニャに当てはまるわけではない。

 しかし、プチデモン氏が注目したのが、国際世論を味方につけたスロベニアのメディア戦略だったという。「悪役ユーゴスラビアに対して、凛と立ち向かう新生国家スロベニア」というイメージを世界に発信し、鮮やかに独立を遂げたスロベニアは、彼の目指すカタルーニャ独立モデルの「原体験」となったという。

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