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「自民党圧勝、結果を受け入れられない野党の焦り」 ―野党の乱立・統合・分裂― - 屋山太郎

 総選挙結果は安倍政権の圧勝だった。これで安倍政権は参院選の2回を入れると国政選挙で5連勝ということになる。このため一強多弱態勢が固定化したから、小選挙区比例代表制を変えろという議論が持ち上がっている。現状が不満だから選挙制度を変えろという議論は近視眼も甚だしい。

 現行制度で現実に民主党が政権をとった事実を見れば、制度が一強多弱を生み出す原因ではないとわかるだろう。野党の側だけが乱立、統合、分裂を繰り返しているから多弱なのだ。

 今回も立憲民主党が台頭する一方、民進党の大半が希望の党に入党したりと、出入りが激しかった。しかし将来の政界を展望すると、大きな意味があったのではないか。

 まず民主党政権が崩れた事情を振り返ってみる。民主党政権の崩壊の最大の原因は日米関係を損なったことだ。現在、北朝鮮の核・ミサイル問題が国際情勢の焦点になっているが、民主党のまま反米路線を走っていたらどうなったか。民進党は国際情勢を無視している一方で麻生太郎副総理兼財務相は衆院選圧勝を「北朝鮮のおかげだ」と評した。立憲民主党の長妻昭代表代行は「問題発言だ」と国会で取り上げる意向を示しているが、麻生発言のどこが間違っているのか。

 民進党には今回、党を飛び出して立憲民主党を結成した枝野幸男代表らのれっきとした左派が存在する。左派は社会・共産共闘時代から伝統的に「共産党と組むのは当然」という意識がある。一方、前代表の前原誠司氏のように「共産党とは一線を画すべき」という考え方がある。民進党支持率が何年にもわたって低迷したのは、同党が右派からも左派からも満足されなかったからだ。

 今回、前原氏は民進党の看板を見切って希望の看板の下になだれ込んだ。そこで小池百合子代表(東京都知事)から「憲法改正と安保法を認めるのか」と踏み絵を踏まされた。これが「排除の論理」だといってマスコミが叩いたが、左翼を排除するのは小池氏や前原氏の常日頃の思想からみて当然だ。希望の中でなお“左翼の論理”を振り回す人がいたら立憲民主党にいってもらった方がいい。立派な左翼政党が誕生したのだから、右派や保守派と混在することはない。

 希望は維新の会と候補者調整をした。維新は暫減傾向にあるから、この際、前原氏と松井氏が合併工作として、橋下徹氏を担ぎ出したらどうか。希望と維新は併せて61議席、立憲民主党、共産党、社民党の3つは合計67議席。どこの西欧民主主義国も共産党は絶滅している。それはお手本だったソ連、東欧、中国を羨む人がいなくなったからだ。

 反自民票を合計すれば、野党が勝ったはずなどという議論は無意味だ。回を重ねれば保守2極の情勢が必ずできる。その中で「モリ・カケ」問題だけで選挙戦を乗り切れると判断したことこそ、茶番だ。

(平成29年11月2日付静岡新聞『論壇』より転載)

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屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生れ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップ、ジュネーブ特派員、解説委員兼編集委員を歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。「教科書改善の会」(改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会)代表世話人。 著書に『安倍外交で日本は強くなる』『安倍晋三興国論』(海竜社)、『私の喧嘩作法』(新潮社)、『官僚亡国論』(新潮社)、『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社)、『立ち直れるか日本の政治』(海竜社)、『JAL再生の嘘』・『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』(PHP研究所)など多数。

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