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妊婦の海外旅行「マタ旅」の危険と「地毛証明書」の悲哀~日本の学校は「教えるべきこと」を再確認しましょうよ~ - 山本 一郎

 以前から、キレイ目だが確実に頭のおかしい雑誌やネットメディアが、妊娠した女性をターゲットにした国内・海外旅行を煽る記事を書き、旅行業界とのタイアップに問題があったんじゃないかという指摘も大量に飛び出しております。

身の回りでも身重の奥さん連れて旅行にいったという友人が無邪気にFacebookやInstagramで写真アップしてて、見る者の血圧がぐんぐん上昇するケースも見られるぐらいに、この妊娠中の旅行「マタ旅」の危険性が衆知されないという状況にあるようです。

「何が起きてもおかしくない」からこそ大事にされるべき

 というか、私も家内が妊娠期間中は大きいお腹で辛そうにしていたので、少しでも快適に安心して乗り越えるために何ができるか考えたりもします。でも、そもそも妊娠期間中というのはお母さんも胎内の赤ちゃんも「何が起きてもおかしくない」からこそ大事にされるべきだと思うんですよね。医療設備のない僻地の温泉や意思疎通がむつかしいかもしれない海外に妊婦連れて行って、万が一があったとき大変なことになることぐらいは気づいてほしいものです。

 妊娠があたかも安全であるかのような神話があるのは事実で、うっかり「安定期」とか名前がついていると妊婦でも旅行にいっても大丈夫って誤解するところはあるかもしれません。日本の産婦人科は相当頑張ってその安全を築き上げ、日本の新生児死亡率を引き下げてきた歴史があるわけですよ。そりゃ医師だって家族同様目の前の妊婦さんやお腹の中にいる赤ちゃんを死なせたくないと努力してこんにちのような低い死亡率があるわけです。

でも、それが当たり前の世の中になり、お産は安全で当たり前なのだ、妊娠はだいたいちゃんと子供が生まれてくるものだという思い込みが、妊婦やその家族に油断をさせてしまい、病院設備が整っていない温泉街などに繰り出した結果が重篤な事故に繋がるのだろうと思います。


©iStock.com

妊婦受け入れについての制度整備、規制論もあってしかるべき

 かくいう山本家も、三男出生のときは切迫流産気味になって、家内は妊娠中期から仕事も育児も休んでほぼ安静状態を強いられたりしました。医学的な知識のある家内であっても、いざ自分の妊娠や出産となると精神的にしんどいことになるわけでして、仕事返上で長男次男を幼稚園に行楽に一人で連れ回したあの頃の記憶が私も鮮明に蘇るわけであります。我が事ながら、あれは完全に主夫でした。いまでも主夫な時間帯はありますが。

 報道では、最近そういう事故に見舞われて妊娠した奥さんも胎内の赤ちゃんも助からず亡くなってしまった悲惨な事例が報じられたり、妊娠中に海外旅行を強行しハワイなどで陣痛に見舞われて何千万円も医療費を取られるというケースもあったりします。いや、ほんとシャレにならないって。そういう全然笑えない事例も、ちゃんとした知識がないからこそだと思うんですよね。

しかも、そういう場合、リスクを取って治療をした産科医が訴えられたりするわけで、せっかく医療業界全体で取り組んで成果の出ているはずの新生児死亡率がまた上がり始めたりすると日本人全体がもっと不幸になってしまうでしょう。

 こういうのを見ると、むしろ旅行会社や旅館などで、妊婦の受け入れについての連絡体制を敷いたり、場合によっては航空会社が妊婦の受け入れを断ったりするような規制さえも考えないといけないんじゃないかとすら思います。だって、マジで危ねえっすよ。ストレス解消で風呂入りたいのは分かるけど、この妊婦胎児死亡例でも分かる通り本人は亡くなってしまうことがあるし、残された家族も人生真っ白になるだろうし、受け入れて最善を尽くした医師もやりきれないし、リスクに見合うメリット全然ないじゃないですか。


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黒髪強制の頑迷な感じに、なんぞと思うわけですよ

 で、これと併せて先日髪を黒く染めるよう学校から強く求められた大阪府立高校の女子生徒が登校拒否になって大阪府を提訴するという事件も発生していました。校則違反なんだそうです。生まれつき髪の毛が茶色かったり、場合によっては海外からの学生ではそれ以外の髪の色の場合もあるわけなんですが、そういうのも全部黒く染めさせないと登校を認めないとかいう頑迷な感じでありまして、なんぞと思うわけですよ。私なんて高校時代から若白髪で爺フェイスでしたから悲しかったです。

ええ、自分から白髪ぼかし買ってきて自分で染めてましたよ、泣きながら。途中で面倒くさくなってやめて開き直って白髪のまま登校しましたさ。お前らに老け顔や白髪のコンプレックスが分かってたまるか。高校時代放課後に散髪行ったら床屋の親父に「大将、今日会社休みですか」とか声かけられるんだぞ。ちくしょう。ちくしょうめ。

 私のことはどうでもいいんだよ。で、ネットでも騒ぎになっているんですけど、書き込みを見ていると校則がびっしり書き込まれた手帳の画像を示しながら「うちの高校はもっと酷かった」「いやいや、私の母校はもっととんでもなかった」といった酷い校則自慢が始まっておりました。


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 実際問題として、大学に入ってみるとそういう頭髪や服装は自由となるわけですけど、せいぜいいても金髪かモヒカンぐらいが少数いるのみで、大多数が自由な環境を謳歌するというよりは、大学生諸君はだいたい地味メンライフを送っておるわけですね。人間、自由を与えられると自由の限界を試そうというよりは拘束されていないということに満足感を得て普通に地味に暮らす人たちが圧倒的多数であることを知るわけであります。

「社会で通用しない経験」を学校で強いているのではないか

 こういうのを見るにつけ、学生の行動を縛ったり、厳しい規則を守らせることに血道を上げる教育を施した結果、実際にはもっと多様で人それぞれな人生模様について対応できない人間が量産されてしまっているのではないか、という懸念を持つわけであります。社会に出てもあんまり使われないようながんじがらめの規則を守らせるよりは、妊娠期間中はデリケートなのだから、なるだけしっかり休んで健康な赤ちゃんを産んであげるべきだってことのほうが大事です。

きちんと保健衛生についてや、セックス、妊娠についての教育が行われてさえいればこういう悲劇は減るのでしょうが、そういうことは教えずに、変な校則で生徒を縛ることのほうにエネルギーが使われているのが残念です。

「地毛証明書」があれば赤毛や天パも許す、っていう謎のしきたりを更に超えて「生まれつきの金髪も白髪も黒く染めないと出席を認めない」とか信じがたいわけですよ。私なんか大阪で府立高校に通ってたら白髪で天パの教頭に「髪染めてこいよ(笑)」とか言われてしまうわけですよね。そりゃ不登校待ったなしですわ。


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 しかもそういう校則への支持者もネットにはいて「茶髪は犯罪への第一歩」とか言い出す変なのがゾロゾロいるんです。頭痛がします。学生にはそういう微妙にくだらない規制をしておいて、テレビの報道番組で出てきた教頭が白髪の天然パーマであったという。

お前がまず黒く染めてストレートパーマでもかけろと日本国民が30万人ぐらいテレビの画面にツッコミを入れていたんじゃないかと思います。黒髪強制は多様性云々という以前に「社会で通用しない経験」を学校で強いることの是非が問われるんじゃないかって感じるんですけどね。

だからイマイチ救いのない世界観が広がっている

 つまりは、学校で教えるべきことを教えず、生活を便利にしたり、健康を保ったり、身を守るための知識の伝授をおざなりにした結果、黒髪だったけど妊婦で旅行に行っちゃう若い女性と、それを見て止めない周囲というイマイチ救いのない世界観が広がっているのでしょう。

 もっとこう、バランスの良い決め事とか規制ってのは無いもんなんでしょうか。

(山本 一郎)

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