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不妊治療について男性が最低限知っておくべきこと

若いころはみんな、妊娠をしないようにと考えるものです。避妊をしなければ「できる」ものだと思っている人が多いと思いますが、「そろそろ子供を」を思っているのにしばらくしても「できない」と焦ります。

WHOの定義では、自然に性交渉をもって1年間妊娠の兆しがない場合に「不妊」とされています。WHOによれば、1年以上妊娠できず、医療的なサポートが必要なカップルはおよそ15%、医療的なサポートを受けても妊娠できないカップルが5%います。

射精ができれば「自分には問題ない」と考える男性は多いようですが、生理がある間は妊娠できると思っている女性と同様に、これは大きな間違いです。妊娠できるかどうかは、精液の中にどれだけ健康で活発な精子が含まれているかにかかっているのです。

不妊の原因は、男性側にある場合と女性側にある場合とどちらが多いと思いますか?

実は不妊の原因は、男性にも女性にも同じ割合で存在するといわれています。

「不妊かな?」と感じると、まず女性が病院で検査を受けることが多いと思いますが、実は男性の検査のほうが負担が少なく、すぐに結果が分かりますから、まずは男性が病院に行くほうが合理的です。

「自分の側に原因があったらどうしよう?」と不安になって病院に行くことをためらう男性も多いようですが、その気持ちは女性だって同じです。仮に精液の中に健康な精子がほとんどないということが分かっても、子供を授かるチャンスはあります。精巣の中に健康な精子が見つかれば、顕微授精という選択肢も開けるのです。

女性だけが病院にいってあれこれ検査をしても原因が分からず、数年後、ようやく男性が病院に行ったら、男性の側に原因があったことがわかったケースというのも実際にあります。

その男性は、「妻に申し訳ないことをした。自分がもっと早く病院に行っていれば、時間を無駄にしなくてすんだのに」と悔やみます。

年齢とともに、女性の身体が妊娠しにくい身体になることはだいぶ知られてきていますが、男性も同じです。加齢によって精子の質が下がっていくことが知られています。

いますぐに子供をほしいと思っていなくても、将来的に子供をほしいと思っている男性は若いうちに一度自分の精子を調べておくことをおすすめすると、専門医は言います。

最近はスマホを使って簡易にできる精液検査キットもあります。まずはそれを試してみて、不安があるようなら病院に行ってみるという方法もあります。

自分に不妊の原因があるとわかったときのショックは大きいでしょう。でもどちらの側に原因があるにしても、それをどちらか一方の「責任」だととらえるのではなく、2人に共通する課題だととらえて、2人で支え合い、乗り越えていこうとすることが大事です。

力を合わせていても、カップルの間で感じ方に濃淡が生まれ、すれ違いが生じてしまうこともあります。それを俗に「妊活クライシス」などといいます。

不妊治療中のカップルが心身ともに大変な負担の中にあることを、実は私も取材を通して知りました。そのつらさは、私の想像を絶するとしか表現のしようがありません。

特に女性の場合、身体への負担が大きい。検査のために身体を傷つければ、その日は寝込むほどにつらい。仕事との両立も大変です。治療の成果が上がらない中で、街中で子供を見ることもつらい。SNSで子育ての話題を見ることもつらい。でもなかなか人に相談できない。相談してもその切実さを分かってもらえない。殻に閉じこもってしまうケースも少なくありません。

ましてや当事者以外の人が、なかなかそのつらさに思いをはせることは少ないでしょう。でも身近にも当事者はいるかもしれません。「子供を育ててみないとわからないことがある」とはよく言われますが、逆もまた真なり。「子供がいるからこそ見えなくなっていることがある」。

人はみな、それぞれの立場で、多かれ少なかれ、悲しみや苦悩や不安を抱えて生きている。そんな当たり前のことをときどき思い出すだけで、見慣れた風景がちょっと違って見えてくることがある。不妊のことに限らず、あらゆることについて、立場の違う人たちが、お互いがほんの少しずつ想像力を持ち寄れば、夫婦同士はもちろん、世の中全体がほんのり優しさを増すのではないでしょうか。

※全国のFMラジオネットワークJFNの「OH! HAPPY MORNING」2017年10月26日に放送した内容を掲載しています。

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