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4年ぶりで三菱重工に艦船を受注させた防衛省の狙い - 葉田邦夫 (経済ジャーナリスト)

防衛省・防衛装備庁は2018年度から複数隻の建造を予定している汎用タイプの新型護衛艦の主事業者として三菱重工業を選定した。三菱重工にとって海上自衛隊向け護衛艦の受注は実に4年ぶり。さらに、今回から採用されることになった下請け発注先として三井造船も選定されており、今後の海自向け護衛艦の建造体制は事実上、これら2社に、ジャパン・マリンユナイテッド(JMU)を加えた3社に集約されることになりそうだ。


海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦かが

 2018年度から海上自衛隊向けに建造する新型護衛艦は、南西海域などでの防衛力強化を狙って計画されたもので、このところ、建造に力を入れてきた対空防衛力の強化を目的としたイージス艦(DDG)や、「ミニ空母」(関係者)並みの装備を施したヘリコプターが複数搭載できる大型護衛艦(DDH)などに比べるとやや小ぶり。

 反面、機雷の掃海能力向上や、主機関に新型ガスタービンを採用するなどして機動力を高めるのが特徴だ。1隻当たりの価格は約500億円と、高騰する防衛装備品に配慮し抑える方針だ。

 防衛装備庁では今後、年2隻づつのペースで毎年建造し、合計8隻建造する計画とみられる。「北朝鮮問題などを考慮してさらに1〜2隻追加発注されるのでは」(造船大手首脳)と期待する向きは多い。

 今回の入札には三菱重工、JMU、三井造船と、このところ護衛艦の建造実績があった造船重機大手3社が応募したが、同庁ではこれまでの選定方式とは異なる新方式を初めて採用した。

 具体的にはこれまでは「1隻ごとに指名競争入札によって発注先を選定」(業界関係者)していたが、今回は応札企業に項目ごとに企画・設計書を提案させ、この評価をもとに発注先を決める方式に切り替え、提案の1番手企業を主事業者、そして2番手企業を下請け事業者とした。

 この結果、主事業者に三菱重工、下請け事業者に三井造船が決まったわけだが、ここに防衛装備庁の“意思”を感じとる業界関係者は多いのだ。実は、海自向け艦艇建造は三菱重工、石川島播磨重工業(現IHI)、三井造船、日立造船、住友重機械工業の大手5社が担い「ほぼ輪番」(業界関係者)で建造してきたという経緯があった。

技術力の維持に支障をきたす恐れ

 だが、90年代以降、装備の近代化、技術力の向上が進む中、建造技術の高度化を図るため海自では建造体制の集約を意図し、業界再編が進んだ。特に最近の艦艇商談をみると、IHI、住重、日立造船の艦艇3社が統合されたJMU(ユニバーサル造船、IHI・マリンユナイテッドが事業統合)が、ヘリコプター搭載型の大型護衛艦4隻を連続受注・建造したほか、新しく計画された新型イージス艦2隻についても連続受注している。

 つまり、このままでは三菱重工、三井造船の2社は「現在、建造中の護衛艦を引き渡すと手持ち工事がなくなり、技術力の維持に支障をきたす恐れがあった」(業界関係者)のだ。

 そこに今回の商談では「価格競争による安値受注に陥りがちな指名競争入札ではなく、新たな入札方式を取り入れることによって、(それぞれ事業がある)三菱、三井の両社が落札しやすいように導いた」(業界関係者)。国の防衛力を考慮するには「兵員や、航空機、艦船などの数量だけでなく防衛産業の保持・育成なども当然、加味される」(防衛省関係者)。防衛装備庁としてはこうした防衛力保持の一貫として「建造能力の基盤維持を考慮したのではないか」(同)という訳だ。

 海自向けの艦船建造では既に潜水艦は三菱重工、川崎重工の2社体制が確立、両社は1年ごとに交互で受注し、建造能力の維持を図っている。艦艇についても今回の下請け受注という新方式の採用によって3社が分担して担う体制が固まりそうだ。

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