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「ひきこもり」になることはそんなに悪い葛藤ではない~『不登校新聞』編集長・石井志昂氏インタビュー

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不登校は「情報」で救える

―やはりひきこもりや自殺防止には情報が発信され、当事者に届くということが大事なのでしょうか?

不登校になった子が、どのようにフリースクールの情報を得るかというと、基本的には自分で調べています。養護の先生や、学校の先生がフリースクールを紹介する事例はこれまでほとんどなく、極々一部です。

しかし、不登校に関しては情報で救えます。不登校になったときに最初に悩むのが、「この先どうなるんだろう」ということなのですが、不登校になった子の85%はその後高校に行くことができるのです。高校の進学率は全国平均が98%なので、全員ではないもののほとんどの人が高校に進学しているんですね。だから、自分も大方そうなるということは知っておいてほしい。

不登校者は中学生を中心に12万人いるといわれていますが、毎年新規が6万人います。その内3割がなんとか学校に復帰し、2割が中学3年生ということで卒業・進学によって解決してしまう。毎年、半数が入れ替わるかたちなんです。

また、不登校になると、先生が当てにできないということも親御さんは知っておいた方がいいですね。学校の先生が不登校の学生を持つ機会は意外と少なく、ノウハウがないんです。なので、不登校の問題を専門的にやっているところに相談に行くべきなのです。

この2つの情報を知っているだけでも、だいぶ誤解が解かれると思っています。「自分はこの先だいたい大丈夫。高校にもいける。」と思えるだけで、全然違うんですよね。だから、この情報が届けば状況はだいぶ変わると思います。

BLOGOS編集部

―不登校になった子は日々どのような生活をしているのでしょうか?

ひきこもりも高じると、外に出たくなるんですよね。マニアックな話ですが、「ひきこもり休日がほしい」というような話があります。一週間まるまるひきこもっているのはさすがにキツいので、週に1日は外に出たいという。

また、家にいても両親のプレッシャーがあるなかで、様々なテクニックを駆使して料理をする人もいます。ひきこもり生活で昼夜逆転し、夜中に何かを作って食べることを「ひきこもりメシ」と呼んでいるのですが、最初の頃は家族の目を気にして、レンジが鳴る2秒前に取り出したり、食パンをかじり極力音を立てないことを心がけます。しかし、次第に親の目より、チャーハン作りで火力が気になる、鍋を振るうという風に、逆に料理が楽しくなってくるようなのです。そうなってくると、ひきこもっている理由がわからなくなり、ひきこもりが終わるといわれています。

―『不登校新聞』は、復帰を促すという観点よりも、「そのままでいい」ということに重きを置いているように感じます。

不登校というのは基本的に、本人にとっては人生の危機が訪れているんです。自分なんかが生きていていいのだろうか。なんで自分は生きているんだろう。存在していていいのだろうかという。ただ、それって私自身はそんなに悪い問い、悪い葛藤じゃないと思います。

不登校になって、そういった葛藤を経ていくと、「なんのために生きているのか」ということがある程度見えてきて、それに沿って生きていく人がたくさんいるんですよ。なので、学校に通うにしても、学校に縛られず、自分が自由になるきっかけを掴んでるんです。そういう意味では自分を得る機会ですし、親との関係を再構築する機会といえるのではないかと思います。

―取材を通して印象に残ってるエピソードや事例はありますか?

不登校になり「死にたい」と思ってしまう問題を取り上げた際、よく話してくれたなと思ったのが、不登校になった後に学校復帰してからから死にたくなったということです。要するに、学校に行きたくなくて「死にたい」という思いを抱くように捉えられがちですが、不登校になり周囲から「将来どうするの」「学校は行ったほうがいいよ」といわれ、学校に戻ったときに「もう自分には逃げ場が無いな」と思い死にたくなるというのです。

まさに、当事者目線で考えるというのが、『不登校新聞』の信念であり価値なので、客観的には「学校にいったほうが楽なんじゃないの」ということよりは、当事者目線で考えるということを大事にしています。

不登校になりながらも学校に通う辛さ

―今後、取り組んでいきたい課題などはありますか?

不登校というとずっと家にいるイメージがあるかと思いますが、実際は週に2、3日は学校へ行っている人が多いんです。不登校は、年間30日以上学校を休むとその定義に当てはまるので、月に換算すると2、3日休むと該当してしまいます。

不登校になりながらも、多くの人は「このままではダメだ」という思いから週何日か学校に行っているのです。この状況は、不登校になっている人からするととても辛い状況です。

なので、不登校状態になりながらも学校に通う苦しい人へのメッセージをどうやって出せるのかというのがいま、個人的には大きな課題だと思っています。

また、不登校の人にとって対案があまりにも少ないという厳しさがあると思います。会社だったらそれでも辞められる、やめたら失業保険がある。大学だって出る出ないで選べる。しかし、なぜか子どもだけが学校以外の道はないという。転校だってむずかしいし、座席すら決められている、柔軟性の無さが生き難さ、厳しさに繋がっていると思うんですよね。

プロフィール

BLOGOS編集部
石井志昂(いしい しこう) 1982年生まれ。『不登校新聞』の創刊からスタッフとして関わり、2006年に編集長就任。
Twitter:@shikouishii

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