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痴漢は学習された行動で、環境要因が大きい 「痴漢本」著者×被害告白女性対談(下)

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男が痴漢になる理由(イースト・プレス)』の著者、斉藤章佳さんと、痴漢被害告白をしたアーヤ藍さんとの対談は、今回で最終回。前回は、日本社会にある「男尊女卑」的な文化まで話題が発展し、それが痴漢を生み出す土壌ということまで語っていただいた。

女性には加害性はあるのか?

斉藤:痴漢は男性が圧倒的に多いですが、女性の痴漢は圧倒的に少ない。どういう基準で女性は痴漢する男性を選んでいるんですかね?男性の場合、対象となる女性は、「騒がない」「従順そうだ」「逮捕されない」というものが多い。女性の痴漢は何を基準にしているんでしょうか?

渋井:女性の痴漢の話を聞いたことがありますが、その女性の場合、「脅せば、お金をもらえるだろう」と。

斉藤:それって金目当てということですか?そのような女性の加害者性は普遍的にありますか?

アーヤ:それは循環みたいなものかもしれませんね。「こっちは体、性欲を満たしてあげている。対価を得られて当然でしょ」と。加害者という言葉がマッチするのかどうかわかりませんが、表裏一体。男性は女性をものにする。女性はものとして男性に対価をもとめる。

斉藤:ケアという名の支配。

アーヤ:ケアと見せかけて支配する。加害者意識というよりは支配欲でしょうか。

斉藤:私は、実家にかえると母親からのケアという名の支配を時々感じます。母親は、こちら側の欲求をすばやく読み取り先回りしてなんでもやろうとします。

こうなると、私の妻と母親の間でマザリングのパワーゲームみたいなことが起こるため、私はそうそうにその場から降りて自分で何でもやります。しかし、母親は看護師なのでケアのプロです。これがまたなかなかしつこい(笑)。母親の息子への愛情という名のケアは往々にして支配的だと思います。

アーヤ:私の母親が家族にすべてをかけてきた。自分のやりたいことを我慢した人。父との別居、離婚...。「これだけ人生を捧げて来たのに、なぜあなたたちは返してくれないのか」。逆の支配のように感じました。

女性はケアで男性を支配すると話す斉藤さん

斉藤:そのパターンは母娘関係によくある。母が重くてたまらないみたいな。息子との関係では少ないです。

アーヤ:母とは、ぶつかって初めてわかりました。支配されているなんて思ったことはなかった。でも、母から拒絶されたら、人生終わり、という感覚も無意識的に抱いていたこともたしか。

斉藤:女性の加害者性はケアという名の支配だと思う。でも、ケアは概念的に加害性とつながりづらい。上野千鶴子さんはこのあたりを「男性は暴力で女性を殺す。女性はケアによって男を殺す」と表現しています。これは非常に的確な描写だと思います。

痴漢の場所は、圧倒的に満員電車なのか?

渋井:痴漢の話に戻していいですか?(笑)。この本では、満員電車内を想定していますね。

斉藤:相談の中で多いですからね。痴漢をした場所を聞くとほとんどは「満員電車」と答えます。それ以外は、バスの中、人気のない暗い路上、映画館、プールなどです。稀に、空いている電車で行動化するタイプもいます。でも、圧倒的に少数です。以上のような理由から、電車という設定にしています。

環境要因は大きいです。外国人も日本に来て痴漢を覚えるといわれています。つまり、痴漢は環境要因と学習された行動ですね。

渋井:お酒が絡むことも多いですかね。

斉藤:お酒が入ると痴漢をするが、飲まないとやらない。酒の勢いを借りて、という人もいます。そういう人の治療は断酒をすることが前提です。当クリニックでも、最終的に電車がないところに引っ越す人もいます。親がそうさせたケースもありました。

アーヤ:本の中では、家族のサポートについても書いてありました。たしかに、家族のサポートがあればいいですが、サポートがない場合はどうなるのでしょうか。そう考えると、不安になります。

斉藤:その人にとって失いたくないものが多いほど、それはストッパーになります。男性の性犯罪のキーワードは「自暴自棄」です。強姦の場合、このパターン多いですね。自死を選ぶかどうするか追い詰められたときに、「どうせ死ぬなら強姦しよう」という人もいます。

渋井:傍聴した裁判の中では、痴漢三回目という人がいました。その人は二回目の痴漢をして拘置所から出たあと、働いていた会社に辞表を届けた。そして、その帰りに電車内で痴漢をやっていました。

アーヤ:男性が弱さとか悩みとか出しにくいというのも背景にあるのでしょうか?

斉藤:不幸な状態におかれているとき、人を傷つけることで心のバランスを取ろうとする心理がありますね。不全感を人を傷つけることで埋める。いじめであれば、相手は自分より立場が弱ければ誰でもいい。同時に支配欲と性的欲求も満たせるのが性犯罪です。

渋井:ところで、アーヤさんが痴漢されたときの服装は?

アーヤ:そのときは大きな企業でパートタイム的に働いていたときなので、しっかりした格好。でも、スカートでした。

渋井:ハフィントンポストで、性犯罪にあったときに来ていた服装の展示会の記事がありましたよね。

手の甲を触られたときの服装を語るアーヤさん

斉藤:あの記事は良記事でした。アメリカならではの興味深い斬新な発想ですよね。

*:「レイプされた時、あなたは何を着ていた?」 性暴力と服装の相関関係を問う、アメリカ大学の展覧会
http://www.huffingtonpost.jp/2017/09/25/what-were-you-wearing_a_23218909/

アーヤ:手をさわられたときは女子っぽい格好。パステルカラーのワンピース。先は紫。白いベレー帽短めのスカート。ちょっと可愛い感じでした。

斉藤:加害者が相手を選ぶ基準は、「逮捕されない」「相手が訴えない」「泣き寝入りする」ということ。被害者像も、世間で共有されているのと大きく違っている。被害当時、着ていた服はどんなものか?という展示会は画期的ですよね。

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