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稲盛和夫の持論「人生成功の方程式」とは

京セラ、KDDIを創業し、日本航空(JAL)を再建した稲盛和夫氏。そんな稲盛氏は「人生の方程式」という考え方を提唱している。それは、「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」というものだ。そして人生を成功させるためには、このうち「考え方」という要素が特に重要なのだという。なぜ能力や熱意よりも「考え方」なのか。稲盛氏の著書『活きる力』より一部を紹介しよう――(全3回)。

※以下は稲盛和夫『活きる力』(プレジデント社)からの抜粋です。

■人生の方程式について

ここで、私は皆さんに、私が考えた「人生の方程式」を紹介しながら、考え方がいかに大切か、ということについて、さらにお話ししたいと思います。


稲盛和夫・京セラ名誉会長

人生の方程式とは、「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」というもので、私が20歳から30歳までの間に考えたものです。

どうも人生は、この3つのファクターの積で表せるのではないか。3つのファクターは掛け算ではなくて足し算される、と言う人もありますが、私は足し算ではなくて、積でかかると思っています。

能力は、頭の良し悪しのみならず、肉体的な能力や健康状態も含みます。

これは、もともと生まれながらにして自然から与えられたものですから、後天的に変えられるものではありません。この能力というものは、人生にとっても仕事の面においても、非常に大きなファクターになります。

もう一つは熱意です。先ほども言ったように、偉大なこともみんな一歩一歩の積み上げでしかできないのだから、誰にも負けない努力をしよう、一生懸命頑張ろう、そういう考え方、熱意を持つのです。熱意を持つということは、能力と違って後天的に自分の意志でできます。今言った、能力と熱意には、ゼロからプラス100点まであります。

考えてみますと、私は、鹿児島大学という、当時では地方の一新制大学にすぎない学校を出たわけです。学校では若干勉強したつもりではありましたが、やっぱり都会に出てくると、たとえ京都のボロ会社とはいえ、私が受けてすべった大阪大学や京都大学といった優秀な大学を出た人がたくさんいる。その中では、どうしても能力の面でコンプレックスを抱いてしまいます。

その私がそういう優秀な人たちと競っていこうと思えば、どうしたらいいのか。能力がないから、一生勝てないのか。いや、そうではない、一生懸命努力すれば、つまり熱意があればやっていけるはずだ、それが、「能力×熱意」という考え方を思いついたきっかけです。

たとえば、一流大学を優秀な成績で卒業したという人間でも、自分は頭がいいからと思ってなまけてしまう。一流大学を出たわけですから、能力という点では70点、あるいは、80点かもしれない。しかし、努力をしないから、熱意は30点しかありません。すると、80点×30点=2400点となります。一方、地方の新制大学しかでていない人間の場合、能力は60点ぐらいでしょう。

しかし、頭がよくない代わりに一生懸命努力をしようと思って80点の熱意を持てば、60点×80点=4800点になる。つまり、一流大学を出た人間の倍の結果が得られるわけです。

さらにそこに、考え方というファクターがかかってきます。

考え方にはネガティブなマイナスの考え方もありますから、マイナス100点からプラス100点まであります。

たとえば、鹿児島大学を出て就職試験を受けたけれど、どこも採ってくれない。縁故で紹介者がいないと採ってくれないなんて、世の中不公平じゃないか、実力で採ってくれないのか、いくらそう文句を言っても採ってくれない。こんな不公平な世の中、ヤクザにでもなってやろうかと思って、その道へ進もうとさえ考えた。大学時代は空手をやっていたから、いっぱしのヤクザの親分にでもなっていたかもしれない。

まかりまちがえば、社会にとってプラスになるどころか、害悪を及ぼす、つまりマイナスの存在となっていたかもしれないのです。


『活きる力』(稲盛和夫著・プレジデント社刊)

考え方がマイナスであれば、たとえそれが些細なマイナスであっても、積でかかりますから、人生の結果は全部マイナスになってしまいます。

能力も人並み以上、努力も人並み以上でも、世の中を拗ねて盗みをはたらきながら生きていけば、人生はすべてマイナスになってしまう。

考え方というのは、ことほどさように大切であり、心の座標軸にどういう考え方をすえるのかによって、人生はガラッと変わってくるのです。

 

■どんな思想を持とうと結果は自己責任

このような話を私が京セラで話すと、大学を出た優秀な社員などは、ただ働けばいいはずなのに、なぜ考え方まで強制されなければならないのか、いろんな思想があったっていいではないか、と反発をします。

確かに、いろんな思想を持つのは自由です。そのかわり、どんな思想を持とうと、その結末は自分自身で摘み取らなければなりません。だからこそ、人生の先輩として、こういう考え方を持つべきだと私は説くのです。

昔、こんなこともありました。女性用の下着をつくっている、ワコールという会社がありますね。

あのワコールは、すでに亡くなられました塚本幸一さんという方が創業されました。私より12歳、ちょうど一回り年が上でしたが、年の若い私を尊敬していると言ってくださいました。たいへん仲良くしていただき、仕事が終わると、よく祇園に行って酒を飲んだりしたものでした。

あるとき、若い経営者連中と一杯飲みながら、経営について、また哲学について議論していたときに、一人の若い経営者が「稲盛さん、私はそうは思いません。うちの会社ではこういう考え方をしています」と言い出しました。

■哲学は次元の高いものであるべきか

私は、人生というのはたった一回しかないのだから、もっと生真面目に、もっと一生懸命生きていこう、と言ったのですが、彼は、たった一回しかない人生、もっと楽しくいくべきだと言う。

そのときに、塚本さんは「おいこらお前、よけいなことを言うな。だいたいお前と稲盛くんでは比べようがないではないか。お前がそんな考え方だから、お前の会社は今の規模にとどまっているのだ。比較にもならない会社の社長が、稲盛くんに向かって、それは違うと言うのはおかしいではないか」と本気で怒られたのです。

その言葉に「なるほどな。人生どうありたいか、どういう会社経営をしたいか、それに応じた考え方が必要なのだ」と、私も気づかされました。

人生という山に登るとき、その社長が言ったように、たった一回しかない人生、ええかげんでも楽しく生きたいと思うなら、ハイキング気分で行ってもいいだろう。しかし、富士山に登りたいと思うなら、それなりの準備が要るし、体力も要る。ましてや、冬のヒマラヤに登ろうと思えば、それに勝る完璧な装備が必要になります。

どの山に登りたいのか、つまり、どういう人生を送りたいのか、どういう会社経営をしたいのか、それに応じた考え方、フィロソフィが必要なのです。

ですから「稲盛さんはこんな考え方が大事ですよと言うが、それは、京セラという会社をつくるのに必要な考え方であって、自分はそれほどの会社にしようとは思ってはいないから、もっと程度の低い考えでもいいだろう」と思うのは結構です。

哲学はなるべく次元の高いものであるべきだとは思いますが、それは立派な人生を送りたいと思うからこそ必要なのであって、もっとええかげんな人生で終わってもいいと思うなら、あまり次元が高くなくてもいい。

自分が過ごそうと思う人生に応じた考え方を持つことが大切なのです。

(京セラ名誉会長 稲盛 和夫)

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