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杉並の里子死亡事件を契機に知っておきたい里親制度

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数日前に、杉並で里子として養育していた女児に暴行を加えて死なせた、という事件が報じられたが、これに絡んで里親養育制度について少しまとめておきたい。東京都の場合、里親には大きく分けて二種類ある。養育家庭(ほっとふぁみりー)と養子縁組里親である。いずれも東京都児童相談所が担当しており、趣旨は共通している。

今回の事件の場合は養育家庭だったようだが、養育家庭ならいつでも撤回することができる。里親をしていた女性は、自分ではこの子を育てられないと思った時点ですぐに児童相談所に相談すべきだった。問題は「なぜ相談しなかったのか」であって、里親・里子制度そのものを疑問視すべきではない。

なお、わたしは「子供の養育は実親(実母)だけに負担させるのではなく、社会全体がバックアップして育てるべきだ」と強く信じている。特に少子化対策というのであればなおさらである。

養育家庭



里子を委託 東京都が経緯説明 NHKニュース
東京都によりますと、鈴池容疑者は平成19年11月に、「社会的貢献がしたい」という理由で里親の登録を申請し、翌年の1月に養育家庭に登録されました。そして、おととし3月から実の親の事情で民間の施設に預けられていた当時2歳のみゆきちゃんとの交流が始まり、9月に里子として預かったということです。鈴木所長は鈴池容疑者について、「里親制度に理解があり、養育に熱心な方という印象だった。里子は小さいお子さんを希望していた。実子の養育経験があったことなどから、委託が適切と判断した」と述べました。また委託後の支援については、当日と翌月に家庭訪問を行ったほか、里子との2回の面接や、里親によるクリスマス会などで様子を確認したということです。さらに、電話による養育状況の確認を合わせて20回行ったということですが、「虐待の兆候は特に見られなかった」としています。
この報道によれば、鈴池容疑者は「養育家庭」であったことがわかる。NHKの朝の連続テレビ小説「瞳」で西田敏行が演じていたのはこの養育家庭の里親である。

東京都の場合、養育家庭には四種類ある。上記の「養育家庭」のほか、「専門養育家庭」(障害を有するなど専門的なケアが必要な里子を養育する)、「親族里親」(三親等内の親族が養育する)、そして「養子縁組里親」である。

親族里親は血縁ということでちょっと事情が違う。また、専門養育家庭は養育家庭の中の特別な例と考えることができる。したがって、大きく分けると「養育家庭(ほっとファミリー)」と「養子縁組里親」の二種類ということになり、里親登録を希望する時点で、養育家庭としての登録なのか、養子縁組里親としての登録なのかで完全に分けられている(両方同時の登録はできない)。

何が違うのかといえば、期間限定なのか、将来にわたってずっとなのか、というところだ。ほっとファミリーのページ 東京都福祉保健局のページにも冒頭に書いてあるとおり、「養育家庭とは、家庭で暮らすことができない子供を、養子縁組を目的とせずに、一定期間養育していただく家庭のことです」とある。NHK「瞳」でも、以前里子だった子が訪ねてきたり、里子の期間が終わって家を去る里子が描かれていた。

もちろん、そのまま養子縁組に至る例も少数ながら存在しているが、基本的に一定期間である。一方、養子縁組里親では戸籍に入ることになる。養子縁組にも2タイプあって、「普通養子」の場合は生みの親との関係が残り、戸籍には養子・養女と書かれる。一方、「特別養子」の場合は生みの親との縁は法的に切れ、戸籍にも長男・長女等と書かれて実子扱いとなる。児童相談所で扱うものの多くは特別養子縁組ということになる。

今回の事件の場合、里子の名前が「渡辺みゆき」ちゃんと報じられており、これも養子縁組ではなかったことを裏付けている。

里親・里子のマッチングは慎重に行なわれている



NHKの報道をタイムラインとしてまとめ直してみよう。すると、非常に典型的な養育家庭のプロセスをたどっているといえる。


  • 平成19年(2007)11月:里親登録申請。

  • 平成20年(2008)1月:養育家庭に登録。

  • 平成21年(2009)3月:当時2歳の渡辺みゆきちゃんとの交流開始。

  • 同年9月:里子として預かる。児童相談所による家庭訪問。

  • 同年10月:児童相談所による家庭訪問。


  • 同年12月:里親によるクリスマス会で様子を確認。

  • 平成22年(2010)8月:渡辺みゆきちゃん死亡。



里親登録のためにはNPOが受託している「里親認定前講習」を受けることが義務づけられている。その後、家庭訪問などを経て養育家庭登録に至る。登録は3か月に1回くらいのペースで行なわれており、現在は1月・4月・7月・10月ごろのようだ。

里親に登録してもすぐに里子が来るわけではない。里親を志願する人が少ないと世間的には言われているが、東京都内で現在、親の手を離れて養育を受ける必要のある子供が4000人くらい、その多くが施設にて育てられており、意外と「里親」になる機会がめぐってくるチャンスは少ないのが実情である。

マッチング自体は児童相談所が行なう。里親担当の職員と里子担当の職員が組み合わせを考え、そこで交流が始まるわけである。杉並児童相談所長が「里親制度に理解があり、養育に熱心な方という印象だった」「実子の養育経験があったことなどから、委託が適切と判断した」と述べているのは、杉並児童相談所の里親担当職員がそのように判断したということである(なお、児童相談所は都の機関であり、杉並児童相談所も杉並区の機関というわけではない)。

今回の事例でも、3月に交流開始してから半年後の9月に里子として預かったという。6か月間の交流期間を設けているわけである。この交流期間に、里親側も里子側もお互いに「この親・この子と一緒に暮らしていけるかどうか」を慎重に判断することになる。子供側がなつかない場合もあれば、里親側がどうも受け入れられないと感じる場合もある。そういう場合は無理せず破談にすることが推奨されている。実際、一度の交流でいきなり決まる率は決して高くない。むしろ、何度も「合わない」子たちと会っていくのが普通である。

特に、こういう施設で育てられている場合、先天的・後天的な障害を持っている事例が多く見られるという事実も児童相談所から里親に伝えられている。だから、無理しないことも強調されているのである。

みゆきちゃんとの交流が始まったのは、登録後1年以上経ってからだった。それ以前に何人かの子供と交流をしていたかもしれない。いずれにせよ、里親登録してから一年半以上かけて、みゆきちゃんが家に来たわけである。

この間の経緯については非常に一般的な経緯を経ており、他の大多数の問題ない事例と合わせて考えても、特に問題があったとは思えない。

なお、特別養子縁組里親の場合、6か月間程度の交流期間を経て里子とするところまでは養育家庭と同じだが、その後さらに6か月の試験養育期間を経て家庭裁判所の審判を受けた上で「実子」となる。さらに慎重に扱われ、しかも司法の判断が加わることになる。

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