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カプセルホテルはなぜ流行る? 3つの進化形態をまとめてみた - 瀧澤 信秋

 終電に乗り遅れたサラリーマン御用達というイメージのカプセルホテル。宿泊施設としては緊急避難的なスポットという存在。しかしそんなカプセルホテルがいま、格段の進化を遂げている。


オシャレなパブに漫画ライブラリーを併設(グランパーク・イン横浜)

ますます進化するカプセルホテル

 旅館業法では宿泊施設の営業を4つ(旅館・ホテル・簡易宿所・下宿)に区分しているが、基本的にカプセルホテルは簡易宿所にあたる。詳述は避けるが、設備をはじめとした諸条件など営業許可のハードルは一般のホテルと比較して低く、参入・撤退も容易なので、昨今の急激な宿泊需要に呼応するかのように多くの企業が参入、活況を呈する業態である。

 法律上、ホテル営業ではないのにカプセル“ホテル”という呼称がどうなのかということはさておき、近年一般のホテルを凌駕するような個性的サービスで、人気を博する施設が増えている。筆者は都内すべての施設へ宿泊したが(2014年現在/女性専用施設は除く)、秀逸なコンセプトを打ち出す、進化著しい施設を目の当たりにし“進化系カプセルホテル”と名付け、各種媒体から情報発信してきた。もちろん昔ながらの旧態型施設で常連客が多いところも存在感があるが、進化系の勢いは見逃せない。


旧態型施設も根強い人気

 進化系カプセルホテルが発展した要因としては、女性専用エリア需要の高まり、LCCや格安高速バスといった低廉な移動手段の発展、インバウンド需要の高まりなどと密接な関連がある。女性需要という点では、従前の男性専用施設をリニューアルし女性専用エリアを設ける施設が目立つ中、女性しか利用できないカプセルホテルも誕生している(「NADESHIKO HOTEL SHIBUYA」「秋葉原BAY HOTEL」など)。いずれにしても進化系は、スタイリッシュでデザイン性が高く、清潔感ある空間が特徴だ。

進化系カプセルホテルの3形態とは?

 もはやブームともいえる進化系カプセルホテルは3つの形態に区分できる。

(1)サウナなどの充実した温浴施設や付帯施設、グルメといった付加価値を追求する“ハイクラスタイプ”。

(2)豪華な温浴施設など持たずシャワーなどにとどめ(法令上の要請で浴槽を有するケースもある)、スタイリッシュにしてシンプルな利用を想定した“シンプルタイプ”。

(3)キャビンタイプを代表とするプライベート空間を充実させた“ホテルタイプ”。

(1)と(3)を併設する“ハイブリッドタイプ”も増えている(グランパーク・イン横浜など)。

最先端サービスにトライする「ハイクラスタイプ」

(1)“ハイクラスタイプ”の代表格は「豪華カプセルホテル 安心お宿」。多彩な無料サービスを提供するバリューなカプセルホテルチェーンだ。VR(バーチャルリアリティ)シアターの導入や、仮想通貨(ビットコイン)での決済サービスなど最先端サービスへのトライがみられる。従来男性専用施設のチェーンであったが、来春には京都に女性も利用できる施設を開業する。


大浴場も充実の「豪華カプセルホテル 安心お宿」

ローコストが売りの「シンプルタイプ」

(2)“シンプルタイプ”の代表格は「ナインアワーズ」。カプセルユニットが宇宙船のようなイメージで話題に。シャワーのみの利用や1時間からの仮眠利用など、シンプル・ローコストならではのフレキシブルな利用プランを前面に打ち出す。東京をはじめ仙台、京都へも出店、7月には女性専用の「ナインアワーズ ウーマン 神田」も開業した。


スタイリッシュな空間も話題の「ナインアワーズ」

余裕ある空間で人気の「ホテルタイプ」

(3)“ホテルタイプ”の代表格は「ファーストキャビン」。東京を中心に西日本各地へ展開する有名チェーンだ。キャビンならではの余裕あるプライベート空間をはじめ、充実の付帯施設も人気。カプセルホテルではなく“コンパクトホテル”というブランドイメージを打ち出している。ゆえにもはやカプセルホテルとして紹介しにくいのがジャーナリストとしてジレンマでもある。


プライベート空間が広い「ファーストキャビン」

 キャビンタイプでいえば、ビジネスホテルチェーンの「ドーミーイン」は「ドーミーイングローバルキャビン」を展開し人気を博している。人気ビジネスホテルならではのゲスト目線が秀逸なキャビンタイプのカプセルホテルだ。このように一般のホテルブランドがカプセルホテルへ参入するケースもみられるようになった。

観光地や空港にもカプセルホテルが

 カプセルホテルの立地はほとんどが大都市部。都市に根づいた宿泊施設という印象だ。一方、地方都市や観光地にも秀逸なコンセプトで展開する施設が増えている。進化系カプセルホテルを立地で分類した場合、「都市型」「観光地型」「エアポート型」にカテゴライズできる。京都など観光地にも増加している一方、成田空港の「ナインアワーズ」、羽田空港・関西国際空港の「ファーストキャビン」、中部国際空港の「TUBE Sq」など、空港とカプセルホテルとの親和性の高さもうかがえる。また駅直結といった施設も注目されており、アクセス至便も特色のひとつといえよう。


空港とカプセルホテルは意外にマッチ?

 立地も多様化しつつあるカプセルホテルであるが、その発祥は大阪といわれている。一方、最も発展したのは東京。隣接業態であるビジネスホテルの料金が、東京とくらべ大阪は低料金帯だったこと、ホームタウンへの距離感も東京と比べ帰宅しやすいロケーションだったことなどが、大阪でカプセルホテルの発展が見られなかった要因とされる。とはいえ、近年の需要の高まりもあって、いまや大阪は秀逸なカプセルホテルが多い注目エリアでもある。

ビジネスホテルvs.進化系カプセルホテル

 進化系カプセルホテルの料金帯は、立地等により一概に区分できないが、ビジネスホテルよりも安いことは当然と思いきや、旧態型のビジネスホテルよりも高い進化系カプセルもみられる。ハイクラス5000円~/シンプル3000円~/キャビン4000円~といったイメージだろうか。一方、旧態型の施設では1000円台といった設定もみられ、進化系の進出で旧態型のレートが低くなった印象がある。かような進化系カプセルホテル、特にハイクラスタイプやキャビンタイプの料金体系は一般のホテル業界の活況と無縁ではない。

 インバウンド需要の高まりを要因とするビジネスホテル稼働率の上昇は、これまで5000円程度で利用できたビジネスホテルが1万円、中には2万円オーバーといった現象もみられた。他方、まだまだ高レートとはいえ、一時と比較してビジネスホテルの料金変動も落ち着いてきた感がある。仮にビジネスホテルで5000円以下という料金が一般的となった場合、進化系カプセルホテルとの競合も気になるところだ。

 個室が当然の一般ホテルと比較して、限定的なプライバシー空間が特徴のカプセルホテル。進化系とはいえ完全な個室ではないだけに音の問題もある。一方、パブリックスペースの滞在時間も長い業態ならではの「観光体験型宿泊施設」としての魅力を打ち出すカプセルホテルの登場も予想される。この点では、同じく簡易宿所にカテゴライズされるホステル・ゲストハウスが先行しているが、カプセルホテルならではの新たなアプローチにも可能性が期待されるところだ。

(瀧澤 信秋)

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