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恣意的・感情的な指導、配慮に欠けた指導直後に自殺した子どもたち―シンポジウム「きょうだいらが語る『指導死』」より(下)

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学校の不適切な指導によって児童生徒が自殺することを「指導死」と呼ぶ。社会問題化される傾向が出て来ており、最近でも報道がされている。今年3月、福井県池田町の中学校の2年生男子生徒(当時14)が自殺した。有識者らによる調査委員会が作成した報告書によると、生徒の自殺の要因は、担任や副担任による厳しい指導や叱責が重なったことによりストレスが高まったことと結論づけたという。

そんな中、10月14 日、シンポジウム「きょうだいらが語る指導死」(主催・指導死親の会)が開かれた。(上)に続いて、残りの2人の発表を掲載する。

理不尽な指導が繰り返され、居場所を失った弟。姉が語る道立高校吹奏楽部指導死

前回は、運動部の顧問による体罰が絡んだ生徒の自殺について紹介したが、文化部である吹奏楽部の顧問による指導でも起きている。2013年3月3日、道立高校の1年生の男子生徒(当時16)が自殺した。この事件では、遺族が原告となり、北海道を相手に訴訟となっている。

亡くなった生徒は中学校から吹奏楽部を始めた。高校でも吹奏楽部が活躍しているところを選び、東日本大会を目指していた。先輩も活躍を認めてくれており、秋頃には学年のリーダーを任されるほどだった。しかし、他の部員から嫉妬されたためか、生徒の提案は取り入れないなどの扱いを受けていた。12月になると、生徒は悩み、部活動も休みがちになっていた。

13年1月、この生徒をよく思っていなかった同学年の男子部員、Aくんとメールで、部活の参加態度などを巡って言い合いになった。売り言葉に買い言葉のようなやりとりだったが、Aくんがそのときのやりとりを学校に提出。その中で「殺す」という言葉があったことが問題視され、亡くなった生徒だけが学校の指導の対象となった。反省文を書かされることになるが、Aくんから「消えろ」と言われた気持ちを弁明する機会はなかった。

「部員同士のメールトラブルで指導 なぜ弟だけが....」

部員同士のトラブルで学校組織の指導の対象になったためか、顧問は「お前は吹奏楽部の今までの功績に泥を塗った」とまで言った。そして部員全員に謝罪するように言われ、無期限でメールが禁止とされた。生徒は部活を「居場所」のように思い、続けたいと思っていたために、従わざるを得なかった。

姉は、一連のことを弟から話を聞いていた。「(メールのトラブルで)弟だけが指導を受けた。たくさんの教師が指導に関わっていたのに、なぜ、『殺す』とメールをしたのか、という背景を考える教師はいなかった。私は『部活をやめちゃえば?』と言ったが、弟は『辞めさせられなくてよかった』と言っていた。そこまでして頑張りたいものがあるなんて立派だなと思っていた」

弟が顧問にされた不適切な指導について話す姉

しかし、トラブルはここで終わらない。2月下旬、Aくんが、事実とは異なる噂話を先輩や顧問に伝えた。A君は「潰す方法がわかった」と言い、先輩とコソコソ話をしていた。それを生徒は気にしていた。そして、3月2日、生徒は顧問に音楽準備室に呼び出された。Aくんの言ったことの事実確認もせずに、一方的に責め立てた。「今後部活を続けたいか?」と聞かれ、「続けたいです」と答えた生徒に、顧問は「条件がある。もう誰とも連絡をとるな、喋るな、行事に参加しなくてもいい。与えられた仕事だけしていればいい」と言われた。

「どうしてこの条件を受け入れなければならないのでしょうか。トラブルになりそうな生徒を(吹奏楽部から)辞めさせようとしていたのか。(2月の指導は学校組織での対応だったが)3月の指導は顧問の単独で行われた。少なくとも他の教員が関わっていれば、『犯罪者扱い』や嘘つき呼ばわりはされなかったのではないか。弟は顧問の指導で自尊心を傷つけられた。想像するだけでも苦しい」

「学校での所属の欲求に家族は答えることができない」

こうした問題が起きたときに、「部活をやめてしまえばいい」「学校を辞めてしまえばいい」という意見もあるだろう。しかし、3月2日の指導の話を聞いても、姉は弟に言えなかった。「吹奏楽部は弟にとっては宝物。家族はそれを奪えない。あのとき、学校を辞めさせて、病院に連れて行ったならば、弟は死ななかったのかしれない。しかし、要らない人間として扱われたことを考えなければならない。弟はすでに、3月2日の時点ですでに殺されていたんだと思う。それでも、学校に行かなきゃ解決すると本当に言えるのだろうか」

家族は弟の話を聞いていた。姉はこう続けた。

「母は弟に丁寧に関わっていたと思う。家族は悩みを聞くことはできた。しかし、学校での所属の欲求に家族は答えることができない。家族が優しくしていれは自殺をしないわけではない。部活の保護者は『親がフォローしてあげないから』と言っていたが、家族だけでは救えない。こんなことが繰り返されないように考えて欲しい」

指導死の場合、指導される理由が何かしら存在する。その理由が、教育的な立場から見て、合理的な場合も、理不尽な場合がある。先の道立高校吹奏楽部の指導死では、一回目の指導では、なぜ、トラブルの当事者の一方だけが対象になったのかは理不尽だ。二回目の指導でも、一回目と違って組織対応をせず、顧問の個人的な対応だったことは恣意的な、あるいは感情的な対応だったことを想像させる。

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