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ツイッターの日本語ハッシュタグはなぜ大喜利化するのか(序説)

ツイッターではこれまで、#のあとに半角英数をつけると「ハッシュタグ」として認識され、それをクリックすると同じ話題のツイートが一覧できるようになっていた。たとえばPerfumeの話題なら #prfm というようにある程度決まっている。また、「仮面ライダーOOO」がうっかり#oooを使おうとしたらそれ以前からOpenOffice.orgで使われていたので変更したというような小事件もあった。

2011年7月13日、日本語ハッシュタグが使えるようになった(Twitterブログ: #日本語ハッシュタグ)。ハッシュタグの前後には空白または句読点を入れれば、日本語で書いた「#地震」がハッシュタグとして認識される。

ところが、おそらく誰も想定していなかった事態だろうが、それ以来、日本語ハッシュタグが大喜利ネタになるという現象がみられた。人によってはタイムラインが日本語ハッシュタグ大喜利に埋め尽くされている場合もあるようだ。「#名作のタイトルに団地妻をつけるとロマンポルノになる」など、ついつい大喜利に参加したくなるネタが続出している。

では、なぜ日本語ハッシュタグは大喜利化するのか。それを言語的な観点から考察してみた。ただし、まだ研究のとっかかりであるため、「序説」とした。

アルファベットと日本語の違い


なぜアルファベットハッシュタグ時代には大喜利化しなかったのに、日本語ハッシュタグが可能になった途端、大喜利化したのか。つまり、アルファベットタグと日本語タグの違いがまずあるはずである。

1)日本語を母語とする人には、アルファベット文字列で意味を即座に取ることができない。日本語なら意味がすぐわかる。
たとえば、わたしが#fakenewsと明記してツイートしても本当のニュースと勘違いする人が実際に続出するという現象がある。「アルファベット部分は読んでいない」日本語話者は多そうだ。しかし、それだけではあるまい。

2)アルファベットタグは文章化しづらいが、日本語タグは文章化しやすい。
これは最大の要因といってよいかもしれない。アルファベット文には半角スペースは欠かせないが、そこでハッシュタグは切れる。空白を除いたとしても、#followmejpや#londonriotのように二〜三語の連結ぐらいが限界。あるいはアンダーバーを使って #where_we_come_from というような形にすることも可能は可能だが、冗長であるし字数も費やしてしまう。必然的に、文より単語のハッシュタグが増える。

一方、日本語は(わざわざ分かち書きをしない限り)空白を使わないので、句読点を除けばハッシュタグで文を表現できる。その結果、「#小説のタイトルの一部を残業に変えると悲しくなる」のような自然な日本語がハッシュタグで表現できる。

大喜利がハッシュタグへ移行した理由

実際にはツイッター上での大喜利は以前から行なわれていた。たとえば私も一時期参加していた「ついったー大喜利(@ogiri_tweet)」では「1日1つお題をつぶやきます。非公式RTで回答して下さい」というシステムになっている。しかし、日本語ハッシュタグ大喜利は爆発的な広がりを見せた。従来のツイッター上の大喜利が土壌を培ってきたことは疑えないが、なぜ日本語ハッシュタグなのか。その理由を考えてみる。

3)誰もが自由にお題を出せるのでお題数が多く、好きなときに好きなお題に答えられる。
@ogiri_tweetさんは一日一つお題をつぶやいている。そのお題が苦手だと参加できない。また、その日のお題にはその日のうちに答えなければならない。これは制約である。

一方、日本語ハッシュタグは、ふと目についた大喜利ネタについ答えを考えてしまい、つぶやいてしまうという流れになる。誰でもお題を出せるし、それにいつ答えてもよい。むしろ、タイムライン上で興味深い大喜利ハッシュタグを見かけたときがいつでも答えどきということになる。

4)簡潔である。
@ogiri_tweetさんの出題例でいうと、たとえば
【ついったー大喜利】2011年8月8日のお題です。「偏差値40からの」を頭につけて何かスケールが大きい事を言って下さい。 #ogiri_110808
というのがお題である。これに非公式RTして回答するとずいぶん長くなる。
偏差値40からの大東亜戦争 RT @ogiri_tweet: 【ついったー大喜利】2011年8月8日のお題です。「偏差値40からの」を頭につけて何かスケールが大きい事を言って下さい。 #ogiri_110808
RTの前の半角スペースから含めると92文字消費しており、ネタは50字足らずに制限される。

一方、日本語ハッシュタグなら同じお題でも「#「偏差値40からの」を頭につけると情けなくなる」となり、そこだけコピペすれば済むというお手軽さがあり、ネタ自体も長く書ける。ネタに加えて感想なども追加可能だ。短くて済むという利点は大きい。

5)お題のセンスがあり、参加しやすい
こう言うと申し訳ないが、ついったー大喜利さんの出題センスはどうもわたしには合わない。「○○の名前とは?」「○○の特徴とは?」「○○に入る文章とは?」という出題パターンはさほど面白い回答を誘発するようには思えない。わたしがついったー大喜利に答えるのをやめたのもそのあたりに理由がある。

テレビのケータイ大喜利だと、単にボケるだけでなく背景ストーリーまで想像させるような回答、絵が目に浮かぶ回答を誘う高度な出題だといつも感じている。

先ほどの「お題数が多い」こととも関連するが、その中で特に答えやすいセンスあるお題が淘汰されて拡散する、という点で、少数の人が考えて「お題」として提示するものよりもレベルが高くなっているという点は見逃せないだろう(逆に言えば、お題として広まりきらなかったものが多数背後にあるということである)。

日本語ハッシュタグ大喜利の多くは言葉をもじる系だが(特に、特定の言葉をつけて変なものにしてしまうもの)、これは簡単で参加しやすく、しかもうまくはまると大笑いできるネタとなる。また、大喜利ではないが「#○○あるある」系のハッシュタグも容易に大喜利に転ずる内容といえる。

なぜハッシュタグのお題に答えてしまうのか


ハッシュタグ大喜利が流行るには、やりやすいというだけでなく、そこに参加したくなるパワーが必要である。

6)お笑い小ネタ投稿の型に合っている
新聞の投稿欄の短いお笑い欄(朝日新聞「かたえくぼ」、読売新聞「USO放送」など)のスタイル、つまり本文の次に改行してダッシュで背景説明して笑いを取るスタイルに日本語ハッシュタグが合っている。
......説明がややこしいので、「2011年版 ご教訓カレンダー」からいくつか実例を引用しよう。
よくきが付く人
――森村桂

クラスのらんしたちが騒いでいる
――女子校

グンゼの一致
――男子小学生
要するに、先にネタがあって後にお題に相当する部分を添えることで笑いを誘うパターンである(雑誌などの投稿ネタではペンネーム欄がその添えネタになっている場合もよく見受けられる)。日本語ハッシュタグ大喜利では、お題を後ろに付けるパターンが多いのもこの型に合っているといえる。わたしのつぶやいたもので例示するとこんな語順。
レイトン教授と魔法の釜玉 #ゲームタイトルの一部をうどんにすると香川になる


日本語ハッシュタグを先に書く例はあまりない。漫才のツッコミのように笑いどころを後から教えてくれるというパターンになじみやすかったということが言えるだろう。

逆にいえば、本来このスタイルでハッシュタグをつけてつぶやいたら、そのお題で別のことを書いてみたい人たちに拡散していったという流れも考えられる。上記の三つ目のネタをツイッターでもし「グンゼの一致 #男子小学生あるある」とつぶやいたら、それに追随する人たちのあいだであっという間に大喜利化するだろう。

もちろん、書いた人は特に大喜利を募集したわけでなく、単に「――」の代わりに#を使っただけかもしれない。しかし、この添えネタ部分をお題ととらえるならば、まさに大喜利を誘発することになる。

7)大喜利に一つ答えると複数答えてしまう
通常の大喜利ならネタを厳選して一つ二つ投稿するところだが、ハッシュタグ大喜利は一人でいくつも連続して投稿してしまう傾向が見られる。上記のような手軽さや、お題の秀逸さにより、ネタをいくつも思いついてしまうのが原因だろう。

その結果、タイムラインを大喜利で埋め尽くす勢いを生み出している。

8)大喜利関連ユーザーをフォローしていなくても目に入る
ついったー大喜利ならば@ogiri_tweetさんをフォローしているか、あるいはその大喜利に参加している人をフォローしているかでないと、タイムライン上に表示されない。それは、大喜利ファン限定の世界でもある。

一方で、日本語ハッシュタグ大喜利はどこから飛んでくるかわからない。通常の話題に紛れ込んでくるので、大喜利に特に興味のないユーザーでも目にする可能性が高い。しかも、一人のユーザーが連続していくつも大喜利ツイートをしてしまう。結果として、切込隊長が愚痴っていたようにタイムラインが大喜利で埋め尽くされる勢いとなる場合もある。
現時点で思いつく原因は以上のとおりであるが、これ以外の理由もご教示いただけたら採用して練り上げていきたい。

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