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習氏に10億回の拍手、スマホタップは愛国の証?

【北京】中国共産党の習近平総書記(国家主席)をたたえよう!

 その方法は簡単だ。スマートフォンの画面を勢いよくタップし、習氏に「拍手」を送ればいいだけだ。

 中国では今、このようにして最高指導者に支持を表明するのがはやっている。親しみを込めて「習おじさん」と呼ばれる同氏は、ここ数十年で最も傑出した中国最高指導者としての姿を強めている。習氏の下、政府は経済や国民にかつてないほど強大な支配力をふるっている。そして主要IT(情報技術)企業はビジネス上の代償として、その動きに同調することをよしとしているようだ。

 第19回中国共産党大会(党大会)が18日に開幕したのに合わせ、騰訊控股(テンセントホールディングス)は、習氏に心のこもった仮想の喝采を送り、その回数を競い合う無料アプリを配信した。その名も「習近平に拍手しよう:素晴らしい演説」だ。

 同ゲームサイトの集計によると、19日午後までに10億回を超える拍手が送られた。人々はソーシャルメディアでこのゲームを話題にし、自分の点数を自慢し合っている。

国民に慕われる習氏

 調査会社、中国市場研究集団(CMR)のマネージングディレクター、雷小山氏は「ほとんどの国民は、楽しく支持を表明する方法としてゲームをプレーしている」とし、「人々は習氏が18日に話した内容を気に入っており、党や中国の復興をとても支持している」と述べた。

 拍手ゲームは、国民が習氏を称賛している証しだ。習氏は政権就任後の政治的弾圧や景気減速にもかかわらず、庶民的な面を強調することで国民の多くに慕われている。その人気はスター並みで、英国のパブや米アイオワ州の農場など同氏が海外で訪れた場所には、その足跡をたどろうと中国人観光客が押し寄せている。

 ゲームのプレーヤーは、党大会開幕で習氏が行った3時間半におよぶ演説の一部を視聴する。ある映像では「貧しい人々や貧しい地域が、他の人々や地域と共に適度に繁栄した社会の一部を成すことを固く約束する」と語っていた。

 映像が終わると、プレーヤーには拍手をする時間が19秒与えられる。その間にスマホの画面を素早くタップしてできる限り多く拍手を送る。プレーヤーはその回数に応じて得点が獲得し、メッセージアプリ「微信(ウィーチャット)」で結果を友人と共有できる。

拍手は中国流の「いいね!」

 米ノースウエスタン大学で博士課程に通うエリック・ユーさん(25)は、1本の指でだけタップしても習氏にあまり喝采は送れないことに気付いた。「もっとたくさんの指を使えばいいのでは」と考えたユーさんは、3度目の勝負では片手の5本の指を全て使い、ピアノでアルペジオを弾くようにタップした。

 結果は19秒で1489回。ユーさんは「ゲーム自体はとてもくだらない」と話す。

 一方で、ゲームに想像力をかき立てられた人もいる。ある熱心な支持者はネットに「この拍手ゲームは、この慣用句を思い起こさせる」と哲学的な口調で書き込み、ある中国のことわざを引用した。それは次のような意味を持つ。「上に立つ者が趣味や特性を持っていれば、従者はその特性をより極端に示すようになる」

 共産党体制の中国では、党総書記に仮想の拍手を送るのは、ソーシャルメディアで自己表現やごますりのために他人のコメントに「いいね!」を押すのと同じ感覚だ。称賛を示す好ましい手段として拍手が使用される例は、このゲームが初めてではない。記事投稿サイト「ミディアム」は8月、「拍手」システムの導入を発表。読者が評価に応じて記事にさまざまなレベルの拍手を与えられるようにした。

 第19回党大会への熱意を示そうとしている企業はテンセントだけではない。配車アプリ大手の滴滴出行では、アプリ上で近くの車を小さな赤い国旗で表示するようにしている。また北京外国語大学内のコーヒーショップでは、共産党のシンボルである鎌と槌(つち)のラテアートを提供している。

テンセントの「戦略的あいまいさ」

 拍手ゲームはテンセントによる愛国的な動きを示す最新の例だ。中国のIT企業に対する政府からの圧力はこのところ一段と高まっている。党大会開幕の前日、テンセントはメッセージアプリのウィーチャットとQQのユーザーに対し、今月末までプロフィールの写真や情報を更新できないと通知した。

 同社は「システムのメンテナンス」が理由だと説明したが、ユーザーはそのタイミングが党大会の開催期間(18~24日)とほぼ一致している点を指摘した。

 テンセントにコメントを求めたが、回答は得られていない。同社は最近、偽ニュースやわいせつ情報など禁止コンテンツを掲載したとして、政府から取り締まりを受けている。中国サイバー管理局(CAC)は、ウィーチャットアプリが違法コンテンツ投稿の「管理義務を怠った」と述べた。

 習氏をゲームに利用することにはリスクもある。今年に入って習氏と「くまのプーさん」を比較する画像などがネットで拡散した際には、当局がプーさんをネット上の検閲対象とした。

 中国の検索大手、百度(バイドゥ)の元国際コミュニケーション担当ディレクターで起業家の郭怡広氏は、ゲームはテンセントの「戦略的あいまいさ」を表していると指摘。「彼らはそれ(ゲーム)が大げさすぎて、ばかばかしいことを分かっていたに違いない」と話す。

 今のところ、ひっきりなしに拍手を送るこのゲームが怒りを買っている様子はない。「それどころか」とCMRの雷氏は話す。「習氏のイメージを和らげるのに役立っている」

By Alyssa Abkowitz

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