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昇給を訴える女性を待つ「落とし穴」

 女性の給料が上がらないのは、女性たち自身がそれを求めないからだ。世間一般ではこう言われることが少なくない。

 しかし、非営利団体リーンインとマッキンゼーが実施した新たな調査は、この「常識」に疑問を投げかけている。男女7万人を対象に行われた同調査によると、現実には女性たちは、管理職レベルで昇給や昇進の交渉を男性と同じぐらい行っており、時に男性をしのぐほどだという。

 話はこれで終わらない。調査結果からは、こうした交渉が女性には特別なリスクをもたらすことも示されている。昇給や昇進を求める女性は、そうでない女性に比べ、態度が「偉そう」や「威嚇的」、「攻撃的」というフィードバックを受ける可能性が高いのだ。昇給や昇進を求める男性と比べても、こうした評価を受けがちだという(男性の場合、自分から求めずとも昇給を得たと報告する割合も女性より高かった)。

 給与の交渉は男女問わず極めて重要だ。調査では、交渉で具体的な金額を求めなかった人は求めた人に比べ、実際に得ている報酬が男女とも平均32%少なかったことも分かった。

 ただ、自分を高く売り込もうとする女性にはリスクが伴う。経済学者リンダ・バブコック氏は2003年、共著「Women Don’t Ask(邦題:そのひとことが言えたら・・・働く女性のための統合的交渉術)」の中で、職場における交渉での男女格差について論じた。

 カーネギー・メロン大学の経済学教授であるバブコック氏は「われわれ依然として、交渉するときに女性にどう反応するかという課題を抱えているのではないか」と語る。

数字や理論で武装しても

 ミッシェル・ファンティーレ氏(50)は、加ブリティッシュコロンビア州ビクトリアにあるホスピスで2013年から最高経営責任者(CEO)を務めている。同ホスピスでの仕事を得るに際し、同氏は取締役会が最初に提示した報酬からの大幅増額を求め、実際にそれを手にした。

 説得力ある交渉を進めるため、なぜ自分がその金額を求めているのか、なぜ自分がそれに見合う価値があるのかの根拠を明確に提示しなければならないことをファンティー氏は分かっていた。そこで同氏は、同等の規模の慈善団体や政府系医療機関での給与水準を調べた。いずれも公開されている情報だ。給与は地域によって差があるため、地元の水準を探るべくビクトリアを拠点とする競合の幹部にも電話をかけた。

 取締役会に自分の主張を伝えるとき、ファンティーレ氏は準備万端だった。同ホスピスが直面していた具体的課題を取り上げ、同様の課題に対処してきた自分の経験に焦点を当てた数時間のプレゼンテーションを行ったのだ。自身の主張を裏付けるべく、前職の雇用主や従業員、外部の同業者からの推薦状も用意していた。

 ファンティーレ氏は、自分が望んだ額を手にできたのは、明確な根拠や具体的な実例を示したからだと語る。「私に出来ることはこれです。それを裏付けるのはこれです。こうした仕事の市場価値はこれです」

 ただ、たとえ数字や理論で武装しても、女性は自己主張がもらたす影響を恐れる。そして、それは多分に正当な理由からだ。

 コロンビア大学の経営大学院で交渉に関する講座を持つマリア・メーソン准教授は、過去3年にわたって学生たちからデータを集めた。学生に対しては自分が採用担当者になったと仮定し、「クリストファー」もしくは「クリスティーン」のいずれかを選ぶよう言った。

 どちらも年収8万ドルを希望しているという設定だ。すると学生たちは自分自身の性別に関わりなく、全般的に「クリスティーン」の方が「クリストファー」よりも自己主張が強いと認識する傾向があったという。

By Michelle Ma

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