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【書評】仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか 山本ケイイチ

仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか (幻冬舎新書)
仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか (幻冬舎新書)

欧州債務問題は一向に解決する気配を見せず、フランス国債まで徐々に売られて金利が上昇している。また日本政府は21日、消費税増税について、現行の5%の税率を2015年までをめどに2段階引き上げ、10%にする方針を固めた。世界中で政府の適切な対応が求められる中、いずれの国々も迷走し、市場は混乱している。こうした不安や不満が伝染したのかどうかは分からないけれど、SNSサイト大手のグリーとKDDIは21日、DeNAに損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。さらに巨人の球団会長である渡辺恒夫は「オレは裁判で負けたことはない!」と清武英利と内紛を繰り広げている。こんな世の中で生き残るためにビジネスパーソンは一体どうすればいいのだろう。


著者によれば、これからの時代を生き残るのに有益なスキルは、「英語」、「IT」、「金融知識」とよく言われるけれど、彼はそこに「筋肉」を付け加えたいのだそうだ。そして時代を察知する能力の高いビジネスパーソンは、すでにそのことに気づいて、仕事に取り組むのと同じくらい熱心に、筋肉を鍛えることに時間とお金を投資しているようだ。

外資系金融業界で働く外人は、かなりの確率でジムに通って汗を流している。さらに朝7時からミーティングをはじめスケジュールが埋まっているにも関わらず、会社周辺をランニングしたり、ウォーキングしたりと体の節制についてストイックにこなしている。もちろん日本人の多くも筋肉トレーニングを行なっていて、間違いなく日本の企業と比較しても、その割合はずば抜けている。しかも時間的に激務であったり、精神的ストレスが異常にかかる職務を遂行している人ほど筋トレを行なっている。


さらに本書が興味深いのは、著者が筋トレ世界では著名な人なようで、クライアントがプロのアスリートやダンサー、経営者、外資系エグゼクティブが多いことだ。だから彼らがどういった目的で筋トレを行い、どれくらいの精神力を持って取り組んでいるのかが何となく見えてくることだ。

『私のクライアントには、地位もお金も手にした人達が多い。トレーニングを通じて彼らの振る舞いを見ていると、「ああ、成功する人は違うな」と感じさせられることが多い。だかそのような一流の人でも、最初はけっこう俗な目的で私のところへやってくる。典型的なのは、「もてたい」⇒「もてるには痩せるしかない」⇒「ジムに通って痩せよう」というケースだ』

地位やお金を得る事と、恋愛で素敵な異性を手に入れることは、機会費用的なところがあって、どちらかが犠牲になる可能性が高い。だから僕はこうしたエグゼクティブ達の気持ちが痛いほど理解できる。でも最終的にはそんな目的じゃなくて、きっとストレスを浄化できる効果があるから続けていると思うのだ。組織で成功する人の多くは、顧客とのやりとり、企業内政治、利益追求など常にアンテナをはって頭をフル回転させないといけない。そうすると知らず知らずのうちに夢にまでそうした情景がでてくる。だから1日中頭の中は仕事になってしまってリセットできないのだ。

こうした環境を打破するために、筋トレは非常に有益なのではないかと感じる。体を動かしている間は筋トレに集中できるし、何より体に筋肉がついてくることによって結果が目に見えて分かる。僕は成功している人で必ず持っている資質は「継続すること」だと常々感じている。彼らは自分に厳しいので、どんなささいなことでも継続的に行い、多少の理由では絶対にやめない。そういう意味で厳しい環境で働いている人ほど筋トレをするし、脱落者が少ない所も頷ける。

リーマンショック以降、日本の大手企業は求人の数を大幅にしぼり、さらには東日本大震災で打撃を受けている。こうしたことを背景として、連日のように新聞やテレビでは学生の就職状況の厳しさが伝えられ、人々に暗い影を落としている。そうした学生の不安につけこむ「就活ビジネス」も盛んだ。「これをやらなければ一流企業に内定できない」などと謳った書物やアプリツールなども山のようにあるし、ここぞとばかりに自己啓発本やセミナーを開催する人まで出てきている。

近い将来、「筋肉をつければ内定がでる」と謳うセミナーやビジネスが大量にでてくるかもしれない。確かに仕事ができる人で筋トレをしている人は多いけれど、仕事ができるようになるために筋トレをしているわけではない。こうした間違いを起こして世の中にマッチョばかり溢れないことを切に願っている。

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