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【書評】『自分のアタマで考えよう』(ちきりん・著)

 どうしても最近出張が多く、今週もイベントの後は東京を離れなければならないので読書量が増えてしまうのであるが、例によってちきりん女史が本を出したと言うので読みました。

 一部の方はご存知かと思いますが、私自身はちきりん女史の書いておられるブログ(というか、はてな)があまり好きではありませんでした。というのも、私の仕事で詳しい事象について、かなりミスリードを強いるような記事をアップしておられるのを読んだ経緯があり、なんでそんなことを書くのかのうと思ったからです。まあ、私も誤読の類はたくさんやらかして迷惑かけますので同類と言われればそれまでなんですけれども。

Chikirinの日記

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/

 などとしっかり予防線を張ったところで、なぜ最近ちきりん女史の本やブログ(のようなはてな)を読んで腹が立たなくなったのかというと、しばらく読み込み続けるなかで、ようやくちきりん女史の一貫した物事に対するスタンスや考え方というものが腹に落ちるようになったからであります。納得いったというか。BBAもっと早く言えみたいな。

 本書はそういうちきりん女史の考え方が余すところなく書き綴られているのですが、思考のルールが極めてゼロベースで、物事をまずフラットに捉え先入観なく考え方を詰めていくという思想が出ております。時折、ちきりん女史のブログ(な感じのはてな)が釣堀になっていてアクセス乞食に見える場合があるのも、比較的定説の固まった事案でも裏側から見たり、一から考察を積み上げるといったような思考の結果を作る過程を読者に披露しているからなんでしょう。

 有識者の話を先に聴いて「解答」を見ず、まず自分の頭で考えて一通りの要素を詰めていった後で、あらためて他の人の議論を読むというのは、相当な覚悟の要る部分であります。私ならやらない。でも、そういう思考の進め方を習慣付けている筆者だからこそ、取り上げる事案がいちいち釣り臭く見える、その代わりプロが敢えて見落とす本質を見抜く力が出てくるという炙り出しが彼女独特の芸なんですね。ある意味で「最高に疑り深い素人」であり、そうであるが故に当たり外れがあるけれど、その分かえってノイズが少ないという珍しい書き手でもあります。

 本書では、11個のテーマ(と言いつつ、テーマの中にサブテーマがあるので、思考すべきポイントは結構たくさん書かれている)と彼女が向かい合った経過と結論が、数学の試験のように続いています。その経過や結論に同意できるのか、同意できないとするとどういう思考ルートが自分と違うのか、考えながら読むととても楽しい本に仕上がっていると思います。綺麗な図版も多いので、簡単にするすると読めそうだけれども、私自身はかなり往って返って時間をかけて読むことになりました。

 なお、思考実験の元ネタとも言える、あわせて読んでみたい書籍はこちら。『ぼくたちの洗脳社会』は、まだデブで冴えていたころの岡田斗司夫さん渾身の良書なんですが、岡田さんが考え方のフレームワークを提供したのに対し、ちきりん女史は実践した経過や結論を本にするという形であって、凄く楽しいわけですね。思わず、ちきりん女史の本を二度読み終わった後、岡田さんのこの本を買い直して読んでしまいました。

 最後になりますが、自分で買って読み終わったあとで献本が送られてくると、三重の意味で悲しい気分になりますので、そのあたりをどうかご留意いただければ幸いです。

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